海にて07~高級エリア02~
相手は一人だ、サーブで決める。
リーダーの男は、本気を出す。
ジャンピングサーブ。
これをとれたものはいない。主にカップルで来た男と対戦するときに使う。
決まった。
コースも速度も完璧。
リーダーは勝利を確信した。
遅いな。
リーダー渾身のサーブを見た御影の感想だ。
御影はこともなげに返す。
「レシーブだよぉ!」
返されると思っておらず、びっくりしたリーダーだっだが、幸い山なりのボールだ、アタックでいないところに打てば勝てる。
そんな淡い期待は打ち崩される。
「ギャー、いてっ~」
レシーブした男はのたうち回る。
皮膚が焼けたように赤かった。
御影はスピンをかけた。ドリルのように高速回転されたボールをレシーブしこうなった。
得点は御影。十一対六だ。そしてサーブは御影。
御影はボールを高々とあげ、ジャンプする。
家の二階ほどの高さまで上昇し、振り下ろす。
弾丸の様なスピードで放たれたサーブは、あっという間に相手のコートに到達し、砂煙を上げ、めり込む。
この時、リーダーは自分の勘が正しいと知った。
これは勝てないYO。
試合は御影が勝った。
「カティナはすぐに熱くなり過ぎだ。もう少しで大事なことになる所だった。自分一人なら自己責任だが、玲奈もいたことを忘れるなよ」
「うっ、ごめん師匠、玲奈もごめん、反省してるよ」
「いつもの事ですから、期待はしていませんよ。ありがとうございます御影さん。おかげで大事にならなくてすみました」
カティナはしゅんとしていたが、二人とも安堵の表情をしていた。御影が来た時、肩も少し震えており、恐怖もあったのだろう。
小言はそれぐらいにしておいて、件の相手をみる。
悪態をつきそうな顔つきだった。
御影は男達の方に歩く。
「納得いかない顔だな」
肩で息をしながら、男達は御影を睨みつける。
「魔法や気を使ったんDARO」
「違反の罰が執行されてないから、それはないことは分かってるだろ」
「くそっ、せっかくの極上の女を、このチート野郎」
「残念だったな。集団でかかってきても俺が返り討ちにする。そうそう、こちらが勝ったら言うことを一つ聞くんだったな。そのドレッドヘアー、邪魔じゃないか」
御影はあくどい表情で、二人をがっしりと捕まえる。取り巻きは既に逃げていた。
「動くなよ、怪我するぞ」
風魔法を使い、男達の髪を刈っていく
「「ちくしょー、覚えてろYO」」
丸坊主になった男達は、泣きながら走っていった。
さて、どうするかな。一仕事終え、次の目的地を考える。
人数は十人まで増えた。うち一人はまだ気絶したままだが。
高級エリアには、まだ三人いるが、果たして行っていいものかどうか迷う。
そこで御影はみんなに聞くことにした。答えは分かっていながら。
何時だって女子は、友人の恋路は見たいものなのだ。
翼はこの年になって、恥ずかしいのやら、むず痒いのやら、ある意味遅咲きの青春を謳歌していた。
隣に女子が二人いる。一人は大和撫子系の美女。のほほんとしながら、楽しそうにしている。もう一人は、温和しい可愛い系の女子。遠慮がちに翼の手を握り、幸せそうに、控えめな笑みを浮かべている。
両手に花状態。そう、雫と風花だ。
雫の後押しで、風花が翼を誘い、おみやげ買いに行くことぐらいしか予定がなかった翼は、了承した。
最高級エリアは遊ぶところがあまりないため、三人高級エリアに行くことにした。
雫はカティナから誘われたが断った。
愛する妹の風チャンを応援しないわけにはいけませんわ。
二人っきりの方が良いと思うのだが、恋愛経験がない雫は、そんな風に思っていた。
風花も姉の雫がきてくれて良かったと思っている。
同じく恋愛初心者の風花は二人っきりにされても、どうしたらいいか分からない。
ぶっきらぼうだが、何かと気にかけてくれる翼と、ぎくしゃくしないよう、緩和材になっている雫のおかげで、三人で楽しく遊んでいた。
玲奈達とはすれ違っており、三人も体験型のアトラクションをしたり泳げない風花を、翼が指導したり。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
時間もそこそこ来たので、翼のおすすめの海の家に行き、ばったりと会った。