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海にて05~宿泊者エリア01~


 海の家を出た後。御影は宿泊者エリアに来た。


 宿泊者エリアは一番人が多い。


 一般人のカップルや家族連れが多く、屋台や一般的な海の家が軒をつらねている。


 貸し出しものも多数あり、浮き輪やボート、スノーケリング等々。


「にゃ~、おいしいものいっぱいだにゃー」


「どうしてついてきたんだ」


 一時間ほど話し、別れたはずだった。


「にゃーつれない事いうにゃー、にゃーとにゃ影と仲だにゃー」


 ニャルコは御影にすり寄ろうとするが。


「ほう、どんな仲だ」


 御影がニャルコの頭をぐりぐりさせる。


「にゃっー痛いにゃー、にゃ影の仲間に興味を持っただけにゃー。あと、やっぱり一人だとつまらないにゃー」


 一旦、御影の言ったように、海の家の前で別れようと思ったニャルコだったが、いつもは感じない寂しさが先行してしまい、御影の後を追った。


 御影の仲間の事も気になったが、大半はそういうことだ。


「全く」


 御影はニャルコを解放する。こうなってしまっては仕方ないか。


 気配からこのエリアに仲間は二グループいた。


 このまま放っておいても無理矢理ついて行くだろう。


「紹介するから、行くぞ」


 なら最初から連れて行った方が後々の制御が効く。


「にゃ~~~、ありがとにゃ~~」


 ニャルコは尻尾をぶんぶんと振っている。


 御影は、『トラブルメイカー』ニャルコを仲間にした。





 その一角は人だかりができていた。


 ここにいるみたいだな。


 御影は、謝りながらも、人をかきわけ、どんどんと進んでいく。ニャルコも興味津々で、御影の後ろからついて行く。


 中心にいるのは四人。


 プゥ、シンリィ、水流、でじ子の四人。


 なにやら、砂浜でそれぞれ城を造っていた。


 プゥは、可愛らしい、ウサギマークのメルヘンチックなお城、水流はシンプルなお城で、シンリィは、まぁ、何とも言えないお城とも家とも、形容がしがたいもので、でじ子の造った城は圧巻といってもいい出来だった。


 おそらくこれを見に人だかりができたのだろうと、用意に予測できた。


 砂で造ったとは思えないほど精巧だ。


 細部にまで細かく造られており、柱の一個一個、窓の一つ一つ、庭や門まで、まるでミニチュア版の模型の様に、本物と遜色がないように見える。


 しかも、おそらく二時間もかかっていない。


 さすがは物作りの本職だと御影は感心する。


「み、お(御影さん遅いよぉ~)」


「大遅刻」


「遅いでじ」


「遅いのじゃ、でもこの傑作を造ったから良しとするのじゃ」


「みんなすまんな。シンリィのは聞かなかったことにするとして、紹介するぜ、キューブ事件の時、一緒にいたニャルコだ」


「にゃー、にゃ影の彼女のニャルコだにゃー。よろしくする、ふぎゃーー」


 最後までいう前に御影はニャルコにアイアンクローをかます。


「と、お調子者だが、気のいい奴だ、普段は獣森国の学園にいて、夏休みで家族と一緒にきたらしい。できれば仲良くしてくれると助かる」


「わ、ぷ、よ(私の名前はプゥだよ、よろしくね~)」


「名は水流、歓迎」


「ワッチはシンリィじゃ。なにやらおもしろい奴じゃな」


「でじ子の名前はデジュでじ、気軽にでじ子と呼んでほしいでじ」

「改めて、にゃーはニャルコだにゃー。仲良くしてくれると嬉しいにゃー」


 五人で囲んできゃっきゃっとしていた。


「そう言えば、何でこのエリアにいるんだ」


 待ち合わせ場所は、最高級エリアだったはず、一通り自己紹介やお話が終わった後、御影は疑問に思ったことを口にする。


「最高級エリアで、四人で砂遊びをしようと思ったのじゃが、監視員にやんわり注意されてのう、だから気兼ねのないここに来たのじゃ。それよりも御影が来たら、造った城の順位をつけてもらうよう皆で話し合ったのじゃ、当然再会はムフフな罰ゲームなのじゃ。遠慮なく採点するのじゃ」


 なるほどと、御影は思う。最高級エリアだと、位の高い人が多く、優雅に過ごしたいから、そう言ったことが禁止されているのか。


 エリアごとに役割があり、元気よく遊びたいなら大衆エリアに行った方が余計なトラブルを抱えずにすむ。おそらく監視員は親切心で言ったのだろうと御影は思う。


 それにしても。


 どこにそんな自信があるのか、ふんぞり返るように、シンリィは胸を張る。


 振りじゃないよな。


 残りの三人を見るが、どうやら本当らしい。三人がリラックスしているところを見ると、御影の美的感覚は正常らしい。


「それはいいが、本当にいいのか」


「にー、今からでもやめた方がいいとおもうにゃー」


 ニャルコも、シンリィが造った城がどれか分かったらしく、珍しく否定的な言葉を口にする。


 なぜならシンリィ以外は、結果は分かりきっているからだ。


 分からないからワクワクするのであって、結果が分かりきっている程面白くない。


「ワッチに二言はないのじゃ、いいから言うのじゃ」


 シンリィは自信満々に催促する。


 出来レース感はあるが、当の本人がそう言うなら仕方がない。


「まず分かっていると思うが、一位はでじ子だ。一人だけレベルが違う」


 それについては、シンリィ初め全員が納得していた。


「そして、同率二位でプゥと水流、最下位はお前だシンリィ」


「何故じゃーー。わっちの最高傑作『シンリィ城』のどこが悪いんじゃぁぁぁぁ」


 シンリィの悲鳴のような叫びが木霊する。


「当然」


「な、ご(なんかごめんね~)」


「でじ子は止めようと言ったでじよ」


 三人は、シンリィを捕まえる。


 罰ゲームの開始だ。


「お手柔らかに頼むのじゃ~~」


 そしてシンリィは三十分間、顔だけ出して、砂浜に埋まった。


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