部屋割りハプニング
「四人部屋四つと二人部屋を取ったぞ、まず一つ目の部屋は、種次、三下、ボル、守だ」
代表者として種次に鍵を渡す。
ここは順当だ。四人とも特に不満は無い。少し三下は残念そうだったが。
「二つ目は、シンリィ、水流、プゥ、今日子だ」
ここも問題はない、代表して今日子に渡す。
「三つ目の部屋は岬、玲奈、デジ子、カティナだ」
代表者として岬に鍵を渡す。
残りは、翼、風花、雫、舞先生、御影、美夜の六人
誰もが、翼と御影が二人部屋で、後は四人部屋になると思っただろう。
二人部屋を言わない時点で、何ともいえない空気になっていたが。
「四つ目は、美夜、風花、雫、翼だ」
大人勢はそれほどでもなかったが、思春期勢、全員が騒然となる。
問題点が二つ。男女混合の部屋が二つできたことだ。御影は舞先生と同じ部屋でも構わなかった。
むしろそっちの方が好都合だ。
舞先生とはいろいろ話したいことがある。ちょうどいい機会だった。皆からどう思われるか、度外視すればの話だが。
そしてもう一つの問題点。美夜は少し落胆した感じで、『師匠と一緒がよかった』と小声でぼそっといい、雫はあらあらとのほほんと面白そうな感じで風花を見て、風花は、両手で口元に手を当て、顔が真っ赤っかになっていた。
「先生そりゃずるいっすよ、おれっちも女の子と一緒の部屋がいいっすよ」
「ほう、三下の異論を認めるぞ、誰か変わってくれる人がいれば、変わってもいいぞ」
何か悪巧みをしているような表情で舞先生は言う。
「へっへっへっ、翼さん、おれっちと変わってくださいよぉ~」
「駄目です。そんな事言う人は最低です」
「あらあら、変わったらぐるぐる巻きにして、海に沈めますわよ」
「不潔で最低。翼さんの方百倍がまし。師匠ならなお良かったけど」
「って事だ。すまねぇーな」
少しばつが悪そうに翼は頬を掻く。
旗色が悪いと見るや、他の部屋の人達の方を見る。
「来たらころころろす」
「変態不良根なし草チャラ男、そんな人物は本の中だけで十分、ゴートゥーホーム」
「私の部屋に来てもいいぞ。死ぬより酷い目にあうのを覚悟できたらの話だがな」
轟沈する三下。話が終わったと見て、今度は玲奈が質問する。
「やっぱり先生と生徒が同じ部屋で泊まるのは問題があると思います。翼さんと御影さんで同じ部屋で泊まるのが妥当だと思います」
「言ったはずだぞ、異論は認めないと、それとも」
舞先生は玲奈に近づいて、小声で話す。ぴくりと体が跳ねるような感じで驚いた表情で視線をさまよわせ沈黙する。
三十分後ここに集合と、舞先生が反場強制的に終わらせる。
みんなが思い思いに部屋に行くのか、三下だけが地に伏し、涙にくれていたまま、放置されていた。
二人部屋だが中は広々としており、寝室にオープンキッチン、三十畳ほどのリンビングに広々とした円形の風呂、五十型の巨大なテレビ。風呂にまで小型のものが備え付けられていて、さすが五つ星ホテルだと御影は感心しながら荷物を置き、必要なものだけを取り出す。
「私と同じ部屋でどう思った」
試すような、楽しげな表情で舞先生がそう聞いてきた。
「今更でしょう。俺も舞先生とは話がしたかったですし、舞先生から言ってくれて良かったです」
自分から言えば、仲間達は不満に思うかもしれないし、さわりができる。舞先生から言ってくれて良かったと御影は思っている。
「ほう、それだけか、これでもプロポーションには自信があるのだぞ」
悪戯な笑みで、舞先生はしなをつくる。御影は冗談で言っているのは分かっていた。それほど鈍感でもないし、それが分かるぶんだけ恋愛はしてきたつもりだ。小説や本みたいに先生と生徒が、みたいな事を考えるほど中二病でもなく、アオハルは既に過ぎ去っている。
「それこそまさかでしょう。舞先生は綺麗ですしいろんな意味で頼りにしています。それにこの世界にきて舞先生とといるのが一番落ち着きますけど、『野次馬』が大勢いる中でそんなことできないですよ」
御影は気配を消し、扉を開く。
どたどたっと、人が倒れる。
そこには、聞き耳を立てていた、プゥ、シンリィ、水流、今日子の二つ目の部屋組の姿があった。
「全く貴様等は、よほどお仕置きが必要なのだな」
「しつつつれいしまししたぁ~」
「失礼」
「し、つ(失礼しましたぁ~~)」
「失礼なのじゃ~」
猛ダッシュで逃げていく四人。
やれやれといった感じの舞先生だが、御影が言った言葉に、顔は少しにやけていた。