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第四章幕間02~二階堂三姉妹のその後~

 ~雫の部屋~


 あれから一日が経過した。あの事件で疲れている事も考慮してクラブは休みとなり、二階堂三姉妹は雫の部屋に泊まった。


 着いたら泥の様に眠り、話は明日聞くことになった。



「でも驚きです。まさか清音姉さんギルド長のことが好きだったなんて」


「あらあら風ちゃん、人の趣味にけちをつけるのはだめですよ。清音お姉さんは昔からおじさま好きですから」


 きゃっきゃっと妹達が楽しく話し、清音は顔を赤くする。


 昨日もさんざんいじられた。ディーノが生きている事は本当に嬉しいが、このノリは勘弁してもらいたい。


「こらこら、あんまり姉を苛めるなさ。そういう風花こそ翼と良い雰囲気になっていたさ」


 こういう時は、話題を変えるのが良いと清音は経験から知っていた。


 ぼんっという音とともに、風花の顔が真っ赤になり、雫の目が鋭くなる。


「あらあら、私の目の黒い内は風ちゃんはどこへも行かせません。風ちゃんにはまだ早すぎます」


「しっ雫お姉ちゃん、翼さんとはまだそんな関係じゃないです。それに、翼さんは私みたいな子供じゃなくて、もっと大人な人が好きだと思います」


 風花はもじもじとしていて少し自信がなさげだった。


 そんないじらしい姿を見た雫は感極まって、風花を抱きしめる。


「あらあら、風ちゃんったらなんて可愛らしいの、お姉ちゃん感動しちゃったわ」


「ちょっとやめて雫お姉ちゃん。お姉ちゃんこそそんな人いないの」


 雫の迫ってきた顔を風花は手で押しのけ、そう聞いた。


「そうねえ、ピンチの時に助けてくれる白馬の王子様がいいかしらね、多少顔がごつくて、体もがっしりしていてもいいですわ」


 それって・・・・・・。


 風花が思いつくのは一人しかいない。


 結局、三姉妹そろって好みが似ていた。

 

 閑話休題


「そう言えば、清音お姉ちゃん。ギルド長ってこれからどうなるのかな」


 今回の件、隼人のクーデターは失敗したが都市や冒険者達に甚大な被害がでた。


 ディーノは義理堅い男だ。弱体化したギルドの回復や都市の復興に尽力するだろう。


 問題はその後だ。


「ディーノが言っていたさ。三年で頑張って前以上に良いギルドにする・・・・・・と。例え責任をとってギルド長を辞めたとしても、一兵卒になって頑張ると言っていたさ。その後は山奥の小さな村で畑仕事でもすると言っていたよ」


「あらあら、そこで清音お姉様はなんて言ったのかしら」


「私も気になります。清音お姉ちゃん教えて」


 気になると言った表情で、二人は目を輝かせ清音に近づく。


「そんな昔のこと忘れたさ、そろそろ出ようか、久しぶりにお前達と模擬戦がしたい。どれだけ実力がついたか楽しみだ」


 清音の目は笑ってなかった。


「「お手柔らかにお願いします(わ)」」


 深く踏み込みすぎた代償は高そうだった。






 昨日のダンジョン内部、隼人を拘束した後、清音とディーのは向かい合っていた。


「あーそのぉ、なんだぁ。すまなかったなぁ」


 言葉に詰まり、しどろもどろの返答しかできないディーノ。


 清音は黙ってそれを聞き。


「この後どうするの」


 簡潔に質問する。


「ああ、おそらく、責任とってギルド長はやめねぇといけないだろうな。こんなにさわがしちまったんだ、誰かが責任をとらなければいけねぇ、それが上の責務ってもんだ。それでも俺はぁ、完全にギルドが立ち直るまで見届けるつもりだ。三年ってとこか、後は田舎の村に引っ越して、田圃でも耕して余生でも過ごすつもりだぁ」


 ディーノの言葉に嘘をない。もう清音に対し、嘘をつく必要はないし、つきたくなかった。


 本当に不器用な人だ・・・・・・と清音は思う。


 変に頑固で真面目でいつも他人に対し一生懸命で、自分が傷つくことも厭わない。


 昔から変わってなかった。


 だから清音の言うことは決まっていた。


「私の心を改竄した罰を言うさ」


「ああ、覚悟してる」


 ディーノは真剣な顔つきで清音を見つめる。


 七年という時間は長い。ディーノは何を言われても仕方ないと思っていた。


「私も・・・・・・一緒に連れて行ってほしいさ・・・・・・好きです『タイガー先生』、今までも、これからも」


 ディーノと清音は見つめ合ったまま動かない。


 二人っきりの世界


 しかしここにいるのは二人だけでわなかった。


「あーようやっとか遅いわ、このばかたれ」


「あっついね~灼けてしまいそうだ」


「清音おめでとう。ディーノは百回死ね」


「幸せになってよいかな」


「返答は、男なんだからびしっとしなさい」


「恋愛ヘタレ男だからなディーは」


 清音のパーティーメンバーと輝義は口々におめでとうとちゃかし言葉で、新しく生まれたカップルをはやしたて祝福する。


 清音のパーティーーメンバーはディーノの元パーティーメンバーで、ディーノは土下座して、清音の加入を頼み込んだ。

 その時に白状したのだ。『惚れた女を守ってやってほしいと』。



「・・・・・・待たせてちまったなぁ。幸せにする。今度こそ必ず」


「はい」


 ディーノは少し屈み、清音は爪先立ちする。


 それは聖夜の告白シーンみたいだった。











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