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第四章幕間01~デジ子の大冒険~


 これは、最終日皆が行動に移した後のデジ子のお話。


 ぎりぎりだったけど、早速役に立つでじ。


 御影から依頼された魔道具の指輪の能力は二つ。


 一つは変身能力だ。


「変身デジ」


 デジ子の体が輝き、収まった頃には、小さな子猫に変身していた。


 本来なら、院長先生やギーレンが使っていた『変身魔法』を組み込みたかったが、今のデジ子には子猫に変身する魔法を組み込むのが限界だった。


 四足歩行になったデジ子は走り出した。


 体は物凄く軽いが、子猫なので、一回一回走れる距離は短く、途中誰かに撫でられたり、連れてかれそうになったり、なれてないせいか、猫の本能に引っ張られて、鼠を追っかけたり、いろいろあったが、学園側の、舞先生が事前に開けた小さな穴、都市壁の穴から入り込み、ぐるっと回って、都市の正門を、人混みの中をかいくぐり、こっそりと抜ける。


 ニナがこっちを見たのはびっくりしたが、何事もなく通過する。


 そしてやってきた、ギルド本部。


 どうやってはいるでじか。


 目的はギルド長室。


 しかし、中はなにやら揉めていて、喧嘩の真っ最中。


 いや、喧嘩というより、刃物を持っていて、殺伐としていた。


 デジ子が中に入ったらひとたまりもない。


 かといって解除しても、戦闘力はないので同じだ。


「おぃ、どうしたってんだ、この有り様は」


 デジ子は考えていると見るからに強そうな男がギルドに入ってきた。


「頭っ、底辺冒険者が騒ぎ出して、例の泳がせていた職員達を殺そうとしたんださぁ」


 一人の職員がやってきてそう説明する。


 頭と呼ばれた男は、その人物に拳骨を落とす。


「いつも言ってるだろぉが、ギルド長と呼べギルド長と」


 その人物は、デジ子の目的の人だった。


 デジ子は変身を解き。その男に駆け寄る。


「申請書の受理と助けてほしいでじ」








 申請自体は話が通っていたらしく直ぐに受理され、ギルド長室で、デジ子は知っている事を全て話す。


 ディーノは、黙って聞いた後、立ち上がる。


「よくここまで来てくれたなぁ。エンド・ワールドっーパーティーがクーデターを起こした。ギルド内部は鎮圧したが、本命を捕まえにいくぞぉ」


 そう言って、デジ子を担ぎ窓から出て行った。


「うぎゃー、離すでじ」


 まるでジェットコースターに乗りながらロデオに乗っているような感覚。


 デジ子は吐き気を必死に耐える。


「はぁはぁはぁ、遠慮するなぁ」


 でじ子が遠慮していると思っているのか、豪快に笑いながら、屋根をつたい、最初の目的地、スラムにつく。


 待っていたのは、ギーレンと速道。


 エンド・ワールドの速道がいるのに危機感を感じない。


 ギーレンと速道、まるで上司と部下のような立ち位置だった。


「おう、久しぶりだなぁ兄弟、早速だが今の状況を教えてほしい」


 ギーレンとディーノは本当の兄弟でわない。挨拶みたいなものだ。


「久しいなぁ兄弟、それは部下が話す」


 そう、十年前学園に潜入したギーレンの部下で、そのまま冒険者となり、パーティー『エンド・ワールド』のメンバーとして、月に一回程度、様々な情報を持ち帰っている。


ちなみに今日子は速道の存在を知らない。


「隼人は今、ダンジョンにいます。清音さんも御影救出作戦に参加し、同じダンジョン内にいると思われます。癒杉さんは学園と繋ぐ橋にて相手がしかけた罠により、違うダンジョンにいったかと思われます。

 翼は人格者ですし、後輩をけしかけたところですので、ニナが橋の所に来たところで、対処できるかと思われます。スラム内の冒険者達は既に対処済みです。学園に行くならスラムから行った方がいいかと思われます」


「そうかよぉ、今までありがとなぁ」


 ディーノの顔はどこか達観していた。まるでいつかこうなることを予測していたかのように。


 その顔に、デジ子は見覚えがある。


 死にに行くような顔だ。


 ディーノとギーレンは言葉少なに拳をつきあわせる。


 多くは語らない。長年の友で、親兄弟よりも互いの事をよく知っている。


 もっともギーレンには家族はいないが。


 ディーノはずっと悩んでいた。清音の事で。


 もう少し良い結末があったのではないかとか。『タイガー先生』としての自分とディーノとしての自分。同じ人間なのに、違う風に見られる。好意と嫌悪。同じ人に対するものとは思えない。こうなったのも、自分が決めたからだ。心が葛藤していた。打ち明けたいのに打ち明けられない。それが清音の記憶を改竄したディーノなりの贖罪。


 言えば清音の記憶の封印が説かれる可能性がある。何度マスクを脱ごうと思ったことか。清音がタイガー先生としての自分に、ディーノに対する恨みと、健二に対する心配。それを何度も語ってくれた。


 自分がやったこととはいえ、あのとき健二をぶっ殺してやればよかったと後悔している。


 一人の生徒を気にかけるのは、良くないことかもしれないが、清音が卒業すると同時に、ギルド長に就任し先生は辞めた。


 ギルド長をやりながら、先生をやるという選択しはあったが、やめておいた。


 教師失格だとディーノは思ったからだ。


 それから、ギルド長として、清音を見守ってる。いつか、自分が殺されるのを覚悟しながら。


 ギーレンは、とうとうきたかと思っている。


 そして友人として、快く送り出そうと。たとえ死ぬこととなったとしても。ディーノは十分苦しんだ。そろそろ楽になってもいい頃合いだ。


 それに清音自身も。


 ほんと、あいつ等二人がいる所を見てるといらいらするぜぇ。


 内情を知っているものから見れば歯がゆい。ディーの時はどこか険悪な二人。タイガー先生の時は恋人同士に見える二人。


 ディーノは昔のタイガーマスクを被り、時々清音に会いに行っている。


 ディーノは変に生真面目だった。清音はもう大人だ。十分整理がつく年齢。


 なのにディーノは墓場まで持って行く覚悟だ。



 人の色恋沙汰に口出ししたくはないが、馬に蹴られて死ねと思ったことはギーレンは何度かある。


 清音のパーティーメンバーもそれは同じだった。


 砂糖より甘く、カカオ八十%のビターチョコより苦い。


 両者とも良い結末になることを願うぜぇ。


 去っていくディーノとデジ子を、ギーゼル達は見守った。




 学園に着き、デジ子の通信に岬から連絡があり、いつの間にか合流した輝義とともに、保健室に向かった。


 保健室に着くと既に、クーデター側の事務科の内通者がベットに縛られて、寝かされていた。


 ディーノは平手打ちで起こす。


「時間がねぇから容赦しねぇぞ、隼人や清音はどこのダンジョンにいった。言えぇぇぇ!!!」


 あまりのディーノの剣幕に事務の女はぶるぶると震える。


「はいはい、そこまでぇ、女の子には優しくしないと喋ってくれないよ。行き先は既に把握しているよ。既に岬さんが保健室にある転移魔法陣に設定している頃合いだね。そうだよねデジ子ちゃん」


「そうでしね確認するでじ」


 繋がっていたままなので確認すると、既に手配は完了していた。


 その事をディーノに話すと、頭を押さえ、幾分か冷静になった後、謝罪し、後のことは輝義に任せ、ダンジョンにむかった。


「あのさ、かわい子ちゃんにはできるだけ乱暴な事はしたくないのさ、協力してくれるかな」


 事務の女の髪を触り、視線を合わす。


 デジ子は何をしているのか分からなかったが、魅了魔法を輝義は使った。


 それから程なく、女は知っている事を全てな話し。


「ありがとな、これからちょっといくところがあるからかわい子ちゃんはここで大人しく待っててね。できるかな」


 女は顔を赤くして頷く。目は完全にハートマークだ。


 そして、輝義は女を眠らせ。


「後は俺に任せて、デジ子ちゃんはここで待機しててね」


 そう言って、輝義は何処かに連絡した後、ディーノの後を追うようにダンジョンに向かう。


 役目は終わったでじ、今日は疲れたでじ。


 初めての数十分の変身に、ディーノに担がれ、心も体も疲れていた。


 空いているベットに眠る。



 起きたとき、皆が幸せな結末になっているのを祈りながら。


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