御影救出作戦:最終決戦04
全員殺す。
元々、頭で考えるタイプではない。
考えたところで結論がでない。
珍しく色々考えたがやっぱり同じだ。
綺麗さっぱり消す。
これまでと同じように。
十一は短刀を逆手に持つ。
そして仮面を投げ捨てた。
十一の目がコバルトブルーに光る。
舞先生の脳内に警報が鳴る。
久しくなかった感覚だ。
「死にたくなかったら、一秒以内にこっちに寄れ」
舞先生はすでに詠唱を始めていた。
「セイグリット・ラ・フィール」
一帯を聖なる光が包み込む。
第二級聖魔法で、舞先生が使える二番目に強い防御魔法。
ニナの最強魔法をも防ぐ、最高難易度の魔法。カテゴリー四の第一級はそれこそ神話クラスだ。
カテゴリー四の魔法が第一級に認定されたのは今から五年ほど前。八十番台までは移り変わりが激しく大事典の魔法の中で、カテゴリー四だけが毎年更新される大事典の中で変わっていない。
なので聖魔法の第二級は、事実上最高峰に位置する。
不気味なほど真っ暗闇に変わる。
舞先生は聞いたことがある。
『破滅の十二人』の幹部は特殊な技能を持っていると。
そのメカニズムが分かった。そして断言できる。
幹部は全員『到達者』なのだと。
「ここから動くなよ、動いたら死ぬぞ」
一人なら広いが、八人も入ればきつきつだ。
「あの、御影さんや捕虜の方は大丈夫でしょうか」
風花は不安そうに言う。
魔法で守られている場所はよく見えるが、範囲外は街灯がない深夜のように、何も見えない。
照明はついていたが、消えたのかついているのかさえわからない。
「捕虜は諦めた方がいいぞ、もったいないが仕方ない。御影は大丈夫だ。そんなことよりも自分の心配をした方がいいぞ。これから何が起こるかわからないからな」
歯噛みする翼と心配そうにしている風花を見る。
言わなかったが、まず前提として、御影が殺されれば、全員が死ぬ。他の幹部を呼ばれても、こちらをねらっても、防御魔法が壊されても、誰がが必ず死ぬ。
舞先生は強度から、後三十分はもつだろうと予測する。最もⅪがこっちに攻撃してこなかった場合の話。
舞先生は『見えて』いた。
これは凄いぞ。
まず両者とも攻撃を出しているが、当たっていない。
暗闇の中、精確に急所を狙っていた。
高速戦闘。一秒間に十回以上攻撃している。そこまでしか舞先生は見えてなかった。
Ⅺは完全にキリングモードだ。奥の手をさらけ出し、殺しにきている。
おそらく、この黒の世界は、Ⅺのスピードをアップする技能なのだろう。
徐々にスピードが上がり、おそらく、限界はあるのだろうが今は天井知らずにあがっている。
それに対応している御影。
何日もダンジョンに閉じこめられ、疲労もあるはずだが、まだ余裕はありそうだ。
次に捕虜の方を見る。
言わなかったことその二。すでに捕虜は死んでいた。黒の世界に入って、ものの数秒で。
ニナは足をばたつかせ、第八席はただ静かに横たわった。
本当に、紙一重だった。もし数秒でも遅れていたら捕虜と同じになっていた可能性がある。
敵には毒を、味方には補助を。本当に厄介な技能だ。
それでも舞先生は御影が勝つと確信していた。
驚いたな、と御影は思う。
達人には固有の世界が存在する。
あっちの世界にも使える人間は存在した。
SSSクラスの人間。トップクラスの人間だ。
それを『有利世界』と呼ぶ。
スポーツ選手のゾーンを可視化したようなもの。
この世界は猛毒と暗闇が存在する世界。捕虜が死んでいる姿を見て確信する。
その世界は使用した相手の有利な世界。
パワーアップしている。スピード、キレ、重さ、何もかもが。
しかも未だにあがり続けている。
どこまであがるか。御影は楽しみだった。
一方Ⅺは焦っていた。奥の手を出したからには殺さなければならない。
一つの目標は達成した。第八席は確実に死んでいる。この世界にいて何もしない状態で、死なないものはいない。
『破滅の十二人』の幹部になる条件の一つが『有利世界』を持っているかどうかだ。
正確には幹部試験で獲得できるかどうかだ。すでに持っていたものもいるが、大抵は幹部試験で獲得しⅪも後者だ。
これはかなり体に負担がかかり、世界の持続できる時間は十分。
すでに五分が経過している。
なぜ動ける。
通常は舞先生のように守るか、捕虜のように死ぬか、同じ『有利世界』で返すかだ。
だからありえない、自分の世界に入って、まともに動ける人物がいるなんて。
どうする。
このままやっていたとしても、御影を殺せるイメージがわかない。まだとれる手段や、技もあるが、どれもだめな気がする。
どうするべきか。
そんなとき御影が口を開き・・・・・・二分後勝負は決まった。