御影救出作戦:最終決戦03
さて・・・・・・と御影は思う。
そろそろ仕掛けるべきか、まだ様子を見るべきか。
槍で捌きながら、御影は考える。
顔は分からない、間近で見ても服装も体型が分からない様になっているため男か女か分からない。
今度はへまをしない。今日子の時、上手く逃げられてしまった。後日その人物と手を取り合うこととなったが、そんなことはいつもない。
相手は『極悪な犯罪組織』。しかも幹部だ。ここで逃げられれば、いつ会えるか分からない。
御影は仕掛ける事にした。
「八景」
緩急をつけた八連突き。
全部違った速度での突きで、相手のリズムを乱す。
Ⅺは冷静に対処する。
なら、
「八双」
今度は高速の八連突き。八景はそれ単体の技ではなく、連続した技。緩急をつけた後なので、通常よりも早く見える。
相手は合わせに来たかのように寸分違わず、切っ先に、短刀を当てる。
さすがだな、そうこなくちゃな。
聞いていた通りの実力。
まだまだ御影のターンは続く。
「朧突」
前から攻撃したかに見える背後からの攻撃術。前を防御すれば、背後から突かれる。
Ⅺは最小限の動きで避ける。
Ⅺはまだ様子を見ている。
御影がまだ本気でないのは、戦闘していて、Ⅺも感じていた。
第八席は運が悪かったかのように思う。ここに来たのは一部始終を『見て』いたからだ。
転移して早々、御影の魔法で拘束されたことも。
直属部隊が拘束された場合、そのトップが責任をもって処置するのがルールだ。
だからⅪは姿を現した。内心思うことはあるが、とりあえず、八席を確保して、この場から消える。
障害は二つ。戦闘している御影と、八席と仲間達を守っている舞先生。
二人とも殺害対象だが、それは置いといて、プランを考える。
欲を言うなら短期決戦。
ディーノや清音が来たら、難しくなる。
只でさせ、まれにみる失態だ。大人数を生かしたまま逃げる。Ⅺや第八席の姿を見せた状態で。仮面があるか分からないとかではなく。暗黙の了解で決まっており、大規模作戦の時ならまだしも、こんな小規模の作戦で失敗したとなればいい恥だ。
あまり手の内は明かしたくないけど。
Ⅺは初めて、自分から行動を起こした。
「偽似喰」
Ⅺは短刀をクロスさせる。
御影の技の後、カウンター気味に攻撃を放つ。
持ってる短刀はフェイク。本命は靴に仕込んだ釘、御影の影に当たれば動きを止められる。
御影の動きを止めた後、舞先生のところにいく。
うまくいけばの話だが。
やっぱり駄目か。
あった影はない、御影が意図に気づき回避した。
そして今、御影はⅪの背後にいる。
「百影透勝」
御影の百連突き、しかも透明な槍を使っているかのように全く見えない。
御影は勝負を決めにいった。攻撃した隙をねらって。
「空蝉」
Ⅺはふっと消える。回避用の技で、忍者の変わり身の術が如く突然消える。
大きな隙と見たⅪは、第八席の元に向かう。
「逃がすか」
第八席のところに向かっているⅪの目の前に立つ、凄まじい早さ、まさに光のような。
ひつこい。
さっき見せたのも、ぎりぎりだ。これ以上の情報漏洩はまずい。自分で公開している馬鹿は除いて、舞先生がいる時点で国で共有される。
この時、Ⅺは選択を迫られていたが、確実制か、制限制か。
確実制をとるなら、全力で攻撃し確実にこの場にいる全員を殺す必要がある。
制限制はこのまま、取れる手段内で、何とか活路を見いだす。
時間はない。
もし、全力で攻撃して防がれた場合、幹部からの降格の可能性もある。かなり低いが。
それはないにしても、なにかしらの罰は与えられる。
責任をもって、殺すまで帰ってくるなとか。そうなった場合は、Ⅺの直属部隊全員が連帯責任で、事を終わらせなければ、本部や支部から締め出しにあい、帰れない。
過去に二回、そんなことがあったと聞く。
三例目にはなりたくない。
時間にして数秒、Ⅺは決断する。