御影救出作戦:最終決戦02
まず男が探したのは逃走経路だ。
『破滅の一二人』ナンバーⅪ直属部隊第八席。それが男の肩書き。
直属部隊は各十人づつおり、総合的にそこの部隊の八番目に強い実力の持ち主。
男は匂いである程度の強さがわかる。
今日子と翼とニナはそこそこ強い部類。後は雑魚。
雑魚を一人殺して、動揺したところを、さくさくっと二、三人立て続けに殺して、後は雑魚から順に一人ずつ殺っていく予定だった。
何の事はない。いつも通りの作業。淡々と遂行するはずだった。
初撃を防がれたのは仕方ない。気付いた者がいたことは予想外だったが、すぐに割り切る。
こんな事態はよくあることだ、慌てる事態ではない、一人一人確実に殺していくだけだ。
しかし、予想外の事態になった。
資料には目を通し、対象の人物情報も頭にたたき込んでいる。
故に、エスケープを使える人間がいないと油断していた。
そして現在に至る。
男は捕まるわけにはいかなかった。
目の前にいた人物。
癒杉舞、御影友道。
癒杉舞からは、危険な匂いがした。こういう匂いの時は格上の時で、逃げ切れはするが、戦えば勝てない場合が多い。
そして御影友道、匂いが全くしなかった。こういう場合は、全くの雑魚か、計りきれないほどの強さか。
前者のはずはなかった。情報からある程度の強さがあると。ある程度どころの話ではなかったが。
この情報をなんとしてでもトップに伝えなければならなかった。
ナンバーⅪがやっている計画の変更か中止を考えてもらわなければならない。必ず、障害になる。
『破滅の十二人』の幹部級と直属部隊が捕まらないのはそういったリスクを回避してきたからだ。
危ないと思えばさっと消えていき、どうしてもというときは援軍を呼ぶ。それが徹底されていたからだ。
直属部隊より強いものは、それなりにいる。だから、このルールのおかげで未だに捕まっていない。
動けば捕まる。
構えてないようでいて、どの手段をとっても無効化される。
情報は伝えたかったが、男は最後の手段を使うことにした。
奥歯に仕込まれている猛毒カプセル。
強く噛めば数秒で絶命する。
今日使うとは思っていなかったが、いつでも使う心構えはしている。仕方がない。運が悪かった。
男は異変に気づく、体が全く動かない。
そして気付く、ここに転移したときから勝負は決まっていたと。
相手を無効化した御影は、周りを見渡す。
知らない人物もおり、ここにいない人物もいたが御影は頭を下げる。
「俺の軽率な行動で、皆には迷惑をかけた、すまない。埋め合わせは今度する・・・・・・」
突然御影が視界から消えた。
音だけが聞こえる。
あちこちで転々として。
「ただちに隅によるぞ、邪魔になる」
舞先生は警戒しながら全員を一カ所、隅に寄せる。
きたぞ。舞先生は内心凄く興奮している。文字通り、本当の黒幕候補。舞先生には見えていた、漆黒の死神の仮面にオリハルコンで塗られたナンバーⅪの文字。
正真正銘、『破滅の十二人』幹部、ナンバーⅪ、その人だった。
男か女か分からない、顔を隠し、体型が分からない、服装をしているからだ
御影は槍であわせるような攻撃、相手の出方を窺っている。
一方相手も同じような感じだ。
Ⅺは短刀二つを自在に操り、御影の攻撃を防いでいたり、隙をみて攻撃していたり。
スタイル的には、美夜に近いが、まだ底が見えない。
二人にとっては挨拶がわりでも、周りは違っていた。
「すげぇな、嬢ちゃんの師匠は、目で追うのもやっとだ」
「せんとせせせんだけ見えるんるん」
「私もその様に見えます」
「悔しいですけど、見えないです」
「わっちもじゃ」
「・・・・・・同」
皆、緊張した面持ちだが、思い思いに感想を述べる。
呑気なものだなと舞先生は思う。
矛先が変われば、命などすぐに無くなる。
隙を見せればやられる可能性があるので、相手はやらないと舞先生はふんでいるが、なにがあるか分からない。
だから、舞先生は、戦闘は御影に任せ、捕虜を奪われたり、殺されないようにと、仲間達の守りを担っている。
本音を言えば、舞先生自身も戦いたかったが、この状況下で自分の役割を分からないほど子供ではない。
ニナも敵も舞先生の後方、仲間達の反対側の位置で、既に拘束しており、自殺しないよう、今日子が毒を仕込んだ奥歯を抜き、口をタオルで固定している。動けない状態にしているが、念のためだ。
そして、局面は動いた。