その頃の御影07~極寒地獄01~
少し時間は巻き戻る。
「もうそろそろ起きろ」
そろそろ時間なので御影はニャルコを起こす。
「うにゃー、御飯の時間かにゃー」
ニャルコはよだれを垂らしながら寝ぼけている。
御影は無言でニャルコの頭に拳骨を落とす。
「うぎゃー、にゃ影は乱暴だにゃー」
頭をさすりながら、ニャルコは抗議する。
「寝ぼけた頭は醒めたか。そろそろ時間だ」
「にゃ!?もう夕方かにゃ」
ニャルコは、飛び起きて、意識レベルが覚醒する。
「違うが、あれを見ろ」
御影は問題の方を指指す。
まさかと、嫌な予感がした、ニャルコは飛び跳ね、数秒で問題があるところまでたどり着く。
「にゃにゃにゃーー、にゃ影、なにやったにゃー」
そこにはこう書かれていた。
『ペナルティにより三十分後、六日目の罰が発生する」
ふしゃーと、ニャルコは興奮しながら飛び降りる。
ニャルコにとっては死活問題だ。起きた途端にこれじゃあ心臓に悪いし、心の準備はできていない。
御影の指輪があるとはいえ、数時間後の開始か、数分後の開始かでわ、生き残れる確率も違う。
一体全体何をやったら、又ペナルティをもらったのか疑問に思う。
また門に攻撃してないとは思うが、ニャルコの頭では皆目見当もつかない。
御影が規格外の存在であるため、なにをやらかしたにゃ。
ニャルコが分かるのは、何かをやらかしたのは確かだということだ。
御影の口が重い。
きっと何か馬鹿をやったのだろうとニャルコは思う。
ニャルコから見た御影は、両極端だ。知っているようで知ってない。常識な事を知っていないと思えば、誰も知らない高度なことを知っている。自分よりも強いが、誰もが考えつかないような、考えてもやらかさないような、大馬鹿をやらかす。
まるで、ビックリ箱、山から下りてきた仙人みたいだと。
でも心強い。御影といると、いいようもない安心感がある。
絶対に守ってくれると、例え今、日本が沈没しても、ダンジョンが崩落しても守ってくれるような、そんな不思議な感覚。
こんな事は、ニャルコは初めてだ。
一人だと、心細く、一日で死んでいた。
こんなに誰かと一緒にいたのは初めてだ。
大抵は、ニャルコの性格を知ると離れ、友達も、一日一緒にいると疲れた表情を見せ、部下はこっちが息苦しくなる。
親友と呼べる人達は遠い国にいる。故に心の中はいつも一人だ。
「時間がないにゃ、早く言うにゃ」
ここで終わりにしても、助かるにしても、今日で離ればなれになる。
まだ一緒にいたかった。
ばれているかな・・・・・・とニャルコは思う。
不機嫌そうな顔をしているが、耳はピコピコ、尻尾はゆらゆら揺れていた。
「それはな・・・・・・」
気まずそうに御影は話し始めた。
「にゃんだって~。魔法玉に封印した『エスケープ』を使おうとしたのかにゃ、馬鹿だにゃ、あほだにゃ、うんこったれだにゃ、そんなの常識だにゃ、『キューブ』を初め、転移禁止ダンジョンでは、『エスケープ』は使えないのだにゃ。それよりもどうやって、使おうとしたのかにゃ」
魔法玉は解除ワードを答えなければ発動しない。
言葉に魔力を乗せなければならず、ここでは使えないはずだった。
「いや、時間があったから、考えたんだ。どうやって脱出できるかとな。そして一番実現するはずだった血で解除魔法陣を書いて、その上に魔法玉を置くという方法をとったんだが、すまんな上手くいかなかった」
ニャルコは地面を見ると、血で書かれた魔法陣と使われた未使用の魔法玉があった。
おそらく発動前にキャンセルされて、ペナルティになったのだろう。
確かに、血には魔力がある。
だからといって、やる馬鹿はいない。
エスケープの魔法は特殊系、『脱出魔法』に位置され、相当高度で、使えれば国囲われるレベルだ。
それはまだいいにゃ、良くなくてもいいにゃ、やっぱりにゃ影は奇想天外な大大大馬鹿野郎だにゃ。
解除魔法陣は研究はされているが実用化はされていない。解除コードは使用者によって違い、国で統一されているものもあれば、完全なオリジナルワードだったり、解除魔法陣は実用的ではないとされていた。
これは世紀の大発見だ。
もし、全ての魔法玉に使えるとしたら、国に称賛される。
にゃーは別に興味がにゃいんだけどにゃー。
一つ言えることは、御影といると退屈しないってことだ。
「すまないついでにもう一つ、実は魔道具が使えなくなった」
「先に早く言えにゃ~~~~」
こっちの方がニャルコにとって大問題だった。
どうするにゃどうするにゃ、五分も生きられないにゃ。
右往左往するニャルコに、御影はいう。これまた予想を斜めいく作戦だが、考えれば当たり前の作戦。
そして、極寒地獄が始まった。