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ダンジョンでの戦い12


「ぎゃぁぁぁ、痛い痛いぃぃぃぃ、僕の顔がつぶれるぃぃぃ」


 顔を押さえのたうち回る、健二先生をほっておき、タイガー先生は清音を見る。


 今すぐにでも死にたそうな顔をしていたからだ。それこそ初めて会ったときに戻ったかのように。


 初めて清音にあったときは、魚の濁ったような感じだった。


 気をはなすとふらっとどこかに行ってしまいそうな、世界の不幸を一心に背負っているような、そんな感じだ。


 清音はそんなに心は強くない。


 名前のように清らかな心を持った、どこにでもいる普通の女性の様にタイガー先生は感じる。


 冒険者になどならなく、それこそお嬢様学校に行った方がいい様に感じる。


 冒険者になるにはあまりにも真っ直ぐすぎる。


 冒険者なんてものは、まず自分第一だ。相手を蹴落としてでも自分を優先しピンチの時は使えるものは何でも使う。ダンジョンレベルが高くなれば、ダンジョンに何日も寝泊まりする時がある。ある程度のがさつさと、自分の意見をはっきり言わないと、いいようにされる。


 そしてなにより、心の鈍感力が必要だ。


 最前線になれば、パーティーが欠けることなどしょっちゅうある。


 レベル九十以上に挑めば、全滅は必死、パーティーが全員生きていることなど奇跡に近い。


 転移石で帰れるにしても、モンスターの初撃、罠等で、犠牲になる。


 大抵は一回で心が折れ、安全圏のダンジョンに挑むか、引退する。


 しかしタイガー先生は現役の時、何度も潜った。


 パーティーはタイガー先生を残して全滅。レベル九十以上に挑むパーティーの情報が入れば、そこに参加し、時に自分から募集を募った。


 そしてついたあだ名は『亡霊』だ。


 それから、自分の実力が落ちてきたことを感じ引退した。



 しかし何の因果か、武術の名門二階堂家の長女にに生まれ、才能もあり、真面目で努力家だ。


 周りの期待に押しつぶされそうになるが、それを救い、バランスを保っていたのは仲間だ。


 それを無くした清音は危うかった。


 十七の少女になにを期待してるんだろうなぁ。


 心細さを必死に隠し、立ち止まったら最後、迷い子になりそうな、そんな少女に。


 だから、タイガー先生はそんな清音を特に気にかけていた。


 そして、もう一つ目的があった。


「おっお前、殺されたはずじゃないのか」


「あー、あのなまくら達は蹴散らしたぜぇ、それよりも随分とまぁやってくれたな。表の顔は良い人で、裏は極悪人かぁ、もう言い逃れできないぜぇ」


 健二は嫌みったらしく笑う。


「何の事を言っているのかな。証拠でもあるのかな。ちなみに言うが、彼女から証言をとっても無駄だよ。婚約破棄してから、つきまとわれて迷惑していたんだよ。だからこちらにふりなことを言うかもしれない。まさか言葉だけで捕まえる訳じゃないだろう」


 健二の事を悪く言うものはいない。外面だけはいいので、裁判になっても勝てると踏んでいた。


 清音がかりに証言したとしても、しょせんは小娘、戯れ言として扱われる


『そういうこと』をした相手は、財津家の力を使って、口止めしているか、話せなる精神状態になってないか、死んでいる。


「見下げた男だな。これをみろ」


 タイガー先生は、座り、晴れた頬を抑えながら勝ち誇っている健二先生に投げ渡す。


「それはコピーだ破っても意味派ねぇ」


 それは裏の人間に依頼した依頼書だ。それも十枚以上ある。


 くしゃくしゃに丸める健二先生に釘を差す。


「僕は財津家の人間だ。金の力でどうにでもなる」


 健二が最後まで縋っているのは、財津家。


 タイガー先生は哀れに思った。


 家の力でしか自分を表現できないのは。


「財津家に確認した所、『健二』という人間はいないそうだぁ。よかったじゃないか。めでたく罪人の仲間だ」


「嘘だぁぁぁぁぁ」


 健二先生は奇声を発し、その場から逃げる。


 ほっといても時期捕まる。今は清音のことが心配だった。


「俺がここに赴任してきたのは、あるデータの証拠を元に財津健二をつかまえるためだ。おまえの仲間は、最後までおまえを思っていた。その証拠は死ぬ間際、清音の仲間の一人が服に忍ばせていた、音声データだ。なかなかできる事じゃない。良い仲間だ」


「私生きてちゃいけないのかな。私と関わるとみんな不幸になる。みんなの所にいきたいよぉ」


 清音は顔をくしゃくしゃにしてタイガー先生の肩にしがみつく。


「神様っていうのは残酷だ。良い奴から死んじまう。心配するな。今は安らかに眠れ」


 タイガー先生は、首後に気を当て眠らせる。


「背負うのは俺だけで良い」


 清音はそんな声が聞こえた気がした。





























 次の朝、起きた時、ディーノは清音の『敵』となっていた。

















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