ダンジョンでの戦い9
すいません<(_ _)>
予約投稿忘れてました。
こうなることは分かっていた。
隼人が何かを狙っていることも、いざとなったら、身を呈してでも清音を守ることも。
隼人に見透かされた時点で、清音が止まらない限り、ディーノは負ける。
「どうして・・・・・・さ」
ディーノに抱きしめられ、清音は震えている。
清音も何か裏があると思っていた。
所属しているパーティーが自分を排除したがっていることも、胡散臭い隼人の思惑のことも。
秘奥技は技を発動するとキャンセルできなく、終わった後、大きな隙ができる。
それを見越しての三人の攻撃。
死んだ・・・と清音は思った。
ならせめて、ディーノを道連れにしようとして・・・・・・。
手応えはあった。ディーノを貫いた感触も、浴びるような暖かな血も。
しかし後ろから来るはずであった、隼人達の攻撃がこない。
数秒経って清音は理解した。ディーノが守ってくれたのだと。
「やっと冷静になったかこの馬鹿やろぉが」
ディーノは清音の頭は撫で崩れ落ちる。
隼人はぱちぱちと拍手をする。
全て予想通りに事が進んだと。
ディーノにはエンドワールド全員でかかっても適わない。それほど実力に開きがあった。
八十階の壁、そして八十階層から一レベル毎に無数の壁が存在し、ディーノは八十九レベルをクリアし、九十レベル以上のダンジョンに挑戦したことがある『到達者』だ。
現状、対峙すれば数分で負ける。
現役を退いたとはいえ、まだまだ強い。
そして思いついたのはこの策だ。
無傷で、こちらが手を汚さずに勝てる作戦。
そして、今回の首謀者を清音に押しつける。ギルド長を殺害した天下の大罪人として。
「憎んでいた相手に救われる。随分と面白い展開ですね。いや、ディーノが『真実』を話していないからこそ憎めるのですけどね。知ってしまったら貴女が『後悔』の念で押しつぶされると。仲間思いなかれならでわですね。反吐がでる。私が教えてあげましょう。本当の真実を」
「や・・・・・・めぇ・・・・・・ろぉ」
弱々しくディーノは制止する。
愉絶の表情を浮かべ、隼人は話始めた。
今から五年前の六月、当時桜花学園三年の清音はダンジョン攻略に励んでいた。
卒業基準、レベル五十はクリアしているが、空いた時間はソロでダンジョンに潜っている。
三月は抜け殻のようだった。
皆死んだ・・・。
残ったのは私一人。
何で私は生き残っているのだろうか。
藤島京の様に、全て犠牲にすれば良かったのだろうか。
一昨年、『エンド・ワールド』から仲間を守るために尽力し、去年、度重なる災難から、仲間を守り、ダンジョンにいったのは僅か三回、その他は、魑魅魍魎達と戦い抜いた。
私にはそんなことできなかった。
だから、仲間達が犠牲となった。
中途半端な力、中途半端な頭。
ない方が良かった。そんな力があるから、上を目指したくなるんだ。勘違いしたり、足掻きたくなる。
そんな廃人同然の清音を戻してくれたのは二人の教師だった。
三年Sクラスの担任財津健二先生。三年間同じ担任で色々と相談に乗ってもらっている。爽やかな三枚目で、人柄がにじみ出ている、この学園では珍しくぽっちゃりとしていて『けんちゃん』と呼ばれ、学園生から親しまれている。
もう一人はSクラスの実技授業の先生で、今年から赴任してきた『ワイルドタイガー』先生。豪快で剛胆で破天荒、常時虎柄のマスクをつけていてマッチョマン。先生とも思えないほど言葉遣いがなっていなく、よく学園生達とくだらない事をやって指導教官に怒られている。
タイガー先生には、『なにがあったかしらねーけど顔が暗すぎるぞぉー。学園ならもっと青春しようぜぇ』とか言われ無理矢理休日とか都市のあちこち連れ回された。
最初は迷惑だったが、次第に楽しめるようになってきた。
そして、徐々に回復して今に至る。
もう学生の間はパーティーを作る気はない。
ソロでダンジョンを戦い抜く。
ソロでいけるダンジョンは限られている。
そう、闘ダンジョンだ。
今宵の舞台は闘ダンジョンレベル五十八、最後の一匹を屠ったところだ。
「ふぅ~」
さすがに疲れた。
清音は闘技場に座り、鞄に入っているタオルで返り血を拭い、ドロップ品を回収して休憩した後帰る。
これが清音の・・・・・崩壊する前の日常だった。