ダンジョンでの戦い8
二階堂清音。到達ダンジョンレベル八十六。ソロでの到達ダンジョンレベル八十。第一線で活躍するこの国のトップランカーで、二階堂流剣術の普通、奥義、秘奥義免許皆伝者。宝塚に出てくるような二枚目の麗人で、女性に絶大な人気がある。
ディーノ。桜花学園都市ギルドのギルド長で到達ダンジョンレベル八十九。ソロでの到達ダンジョンレベル八十二。ギルド長に就任したのは六年前。性格は豪快でバッカス。休みの日は酒場に一日中いるほど酒好きだが、情に熱く、部下で職員からも慕われている。
戦闘スタイルはバトルアックスを使用しての斧術、現役の時は『血染めのバッカス』と二つ名で呼ばれていた。
ディーノは清音の攻撃を受け流し時間を稼ぐ、今の状況は最悪の最悪だ。
仮に清音に殺されたとしても、隼人が清音をこのまま無事で返す訳はない。
隼人はこの都市で三番目だ。到達ダンジョンレベル七十九、ソロでの到達ダンジョンレベル七十六。
レベル八十の壁。
隼人はそれを打ち破れる実力と才能があるが、パーティー的にそろそろ限界が近づいている。
エンドワールドは、学園の頃に結成した六人パーティーで、結成当時から変わっていない。
解除科の速道、魔法科のニナとオーガスト、戦闘科の隼人と翼とガオルド。
当時の学園最強の六人で結成された最強パーティー。指揮科がいないため、様々な妨害があった。その度パーティーで返り討ちにし、破竹の勢いでダンジョンを攻略。卒業時はダンジョンレベル六十九まで到達していた。
俺達ならレベル九十を突破できると思っていた。
現実は余りに無情だ。
卒業してから七年間でたったの十しか進んでいない。
ほとんどが二十代中盤にさしかかり、伸び代も少ない。
断言できる。このパーティーではレベル八十に到達できない。
パーティーの人間を入れ替えるのはどこでもやっている。
上に行くためには、引き抜き除名は当たり前だ。限界になった者を捨て、見込みがありそうな者や格上の人物を引き入れたり、自ら脱退して売り込むのは、上に上がるための通過儀礼だ。
ちょうど隼人は清音のパーティーに誘われている。
つまりはそういうことだ・・・。
ディーノと清音の戦いを見ている。実にくだらない戦いだ。もう少し見るとするか。
これが清音達の最期になるのだから。
「ちゃんとまじめにやれさ」
清音は力に任せ剣を振るう。
ディーノは受け流すか、避けるかするのみで攻撃してこない。
これで勝っても意味はない。
なら本気にさせるまでさ。
「六連風靡」
一撃で六連撃を与える技。
ディーノは難なく受け流す。
「九連風靡」
清音は難易度をあげていく。
ディーノはへらへらと相変わらずのにやけた面で、余裕そうだ。
だったらその面を、驚愕に染めてやるさ。
「百花繚乱」
清音は奥義を繰り出す。
二階堂流剣術奥義百花繚乱。
一撃の振り下ろしで、まるで花が咲いた様に斬り咲くことからつけられた技で、敵は無数に斬り咲かれる。
ディーノは初めて技を出した。
「ディボルグ!」
別名『避なる蛇』。
斧を清音の剣にあわせる。
蛇のように伸びることから付けられた名で、百花繚乱にぶつけて、距離を取る。
まだ清音の攻勢は変わらない。
「風神雷神剣」
二階堂流剣術奥義風神雷神。
風のように速く雷のように鋭いことから名付けられた技で中~遠距離技。
「オーガス」
ディーノは斧を地面に突き刺す。
『守風塊』と呼ばれる、ディーノの防御技で、風圧が風の塊みたいだといわれたことからつけた技で、ディーノのオリジナル技。
ドラゴンのブレスですら守りきる技で、清音の技を完全に防ぎきった。
「どこまで私のことを舐め腐ればきが済むのさ」
「おいおい、俺はお前とは戦いたくねーんだ。お前は利用されているだけだ。悪いことはいわねぇ、もうやめろ、違う場所で、いくらでもやってやる。だから今は」
「黙れぇぇぇぇぇぇ。秘奥義・千之理万之遥彼方」
この時清音は、ディーノを殺すことしか考えてなかった。
この時少しでも冷静になっていたのならば、後の結果は違っていただろう。
この時を待っていた、清音が秘奥義を放つ瞬間を。わざわざ、清音の背後に移動していたことも、この茶番をようやく終わらせることができる。
「ディープ・スカイ」
「ヴァール・エンド」
「ライト・リンゲージ」
三人が一斉に、攻撃を放つ。
目標は清音。
掛け値なしの全力の攻撃を。