橋での戦い07
最初に気付いたのは翼だった。
「あまり見るなよ。気付かれっからな、あれは嬢ちゃんの友達じゃねーのか」
ちらりと見ると、確かに他のルートに行った美夜達だった。
何故ここに来たのか分からなかったが、これはチャンスだった。
風花は頷く。
「何かやるみてーだから、あっちの作戦と同時に動くぞ」
「はい、分かりました」
「いつでも大丈夫です」
二人は頷く。
そして、ニナがいた物見台が攻撃された瞬間に動き出す。
さながら戦争の砲弾のように、火炎弾が無数に翼達に向かって降り注ぐ。
ニナは只待っていたわけではない。ストック魔法を準備して待っていた。
物見台が壊れたと同時に、解除した。
「突っきれ!円の5『失落』」
風花達の前にいた翼が、あたりそうな魔法を消す。
しかも速度は落ちていない。
失落は、円に入った物を消す技で、魔法もその対象だ。
しかし、この技を使うと翼に反動がある。
「立ち止まるな!死ぬぞ、前を見ろ、作戦通りやりやがれ!」
ぼろぼろになっていく翼だが、魔法をかけようとした風花に向かって怒鳴る。
歯を食いしばって、風花と玲奈は走る。
物見台は崩れ落ちたがニナは生きている。事実、崩れ落ちた物見台が燃えており、美夜達は一カ所に固まり逃げていた。
残り20メートル。
橋を渡り終えたとき、物見台は消失しニナだけが残っていた。
そしてニナは、第一級魔法の発動体制に入っていた。
もうなにも関係ない。ぶっ殺す。
痛がるのを見るのは好きだが、自分が傷つけられるのは心底嫌いだ。
そして、格下に虚仮にされることも。
「死ねぇぇぇぇ、『アポカリプス・ジエンド・オブ・ザ・ワールド』」
そして第一級魔法は放たれる。
最新版魔法大事典:第一級炎魔法第九十六位『アポカリブス・ジエンド・オブ・ザ・ワールド』
魔法大事典には各魔法の種別毎に第一級魔法が百個登録されている。
総合で高いものから順位付けされる。年に一回魔法大事典は更新され、一回でも辞典に載れば第一級魔法使いと名乗れる。
大きな図書館に行けば、歴代の魔法大事典が見られ、この学園にも置いてある。
この魔法の最大の特徴は破壊力だ。
触れた瞬間焼失する。
天使の羽のように、神々しい無数の羽が上空にとまっており、今か今かと飛落ちそうだ。
魔法を放った後、タイムラグがあり、発動するのに十秒ほどかかる
罪人達に最後の発言の許しを与えるかのように。
後少しで射程距離だった。
もう遅い。ニナの第一級魔法が放たれた時点で、作戦は失敗だ。
とれる手段、全力で攻撃しても無駄だ。
防御魔法、気を使っても。
サクチュアリ位の魔法なら足止めにもならない。
止められるとしたら、同じ第一級防御魔法か、第一級魔法をうち破れる手段があるものだけだ。
残念ながら誰も持ち合わせていない。
「すまねぇな嬢ちゃん達、約束は守れそうにねぇ」
「私は諦めたくないです。こんなところで死んでられません」
「そうです。やる前から諦めるなんてしたくないですよ」
「そうだなぁ、冒険者らしく足掻いてみるかぁ」
例え結末が分かりきっているとしても、年下の少女達が啖呵を切ったのだ、これでなにもしなかったら、死んでもしにきれない。
いつの間にか美夜達四人が合流していた。
人数は七人。コンマの確率だが、生存率があがった・・・・・・
かのように思われた。
「仕方ないっすね、『御影』さんからもしもの時に渡された手段があるっすから、安心するっす」
今日子が深い溜息をはいた後そういう。
御影がダンジョンに行く前に渡された非常用手段。もし、このまま何もなければもらってもいいことになっていた。
こうなってしまったいじょうは、背に腹は代えられない。非常に不本意だが。
悲壮な空気が弛緩する。あからさまにほっとしているみたいで、翼は目を白黒する。
いったいどうなっちまったんだ。
御影という存在は知っていた。今回の事件のきっかけで、隼人も警戒していた人物。
しかし、現状を打破する手段は渡したとは、翼は思えなかった。
しかしその名前を聞いた後、空気が変わった。風花達が絶大に信頼しているのが翼にもわかる。
「その御影ってーのは、そんなに凄いのか」
「はい、私の師匠です」
「わっちもじゃ」
「・・・・・・同文」
「私は一番弟子」
「私の命の恩人です」
「わたたしは、被害者ででんす」
口々に皆が言う。翼が分かったことは一つ。
すげぇーやつなんだな、御影ってやろぉーは。
そして時間が経過し、天使の羽が地上に注がれる。
今日子はボールぐらいの球を投げ、叫ぶ。
「リリース!!」
孤児脱字報告ありがとうございました。
すごく助かります。
ブックマーク百人突破ありがとうございます。
すごく嬉しいです。
第四章もラストスパートに入ってきました。
おそらく10話程度で四章のエピローグになります。
今後ともよろしくお願いいたします