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橋での戦い05


 風花はゆっくりと瞼をあける。


 既に玲奈は目を開けていて、警戒するように前をみていた。


 私は・・・・・・そうだ負けたんだ。


 ぼやけた意識がしだいに覚醒する。


「よう、起きたのか」


 風花を守るようにして翼は立っている。


 その姿はぼろぼろだ。


 所々が焼けただれ、着物は服の体をなしていない。


「かの者に癒しを、かの者に祝福を『プレミアムヒール』」


 状況もなにも分かってなかったが、風花は癒魔法を翼に向けて放つ。


 プレミアムヒールは風花が使える最強の癒魔法で、この国の基準に直すと、第五級程度。


 破損部位は再生できないが、重度の火傷や、ひび割れ、骨折、深い傷も治せる。


 もしもの時以外使うなと御影からいわれていたが、風花は使った方がいいと即座に判断する。


「こりゃ驚いたな」


 翼は、治った手や足の感触を確かめる。このままじゃじり貧だったが、これで何とか五分に持ち込める。


「私もさっき起きたばかりですが、わかっている状況を説明しますね。今、エンドワールドの魔法使いニナさんから攻撃を受けています。場所は正門横にあるの物見台。動けば、爆炎魔法で狙われます。私が気を失っていたときも、翼さんが守ってくれて、動かすこともできず、今の状態でした」


 風花が起きたことに気付いた玲奈は、賭け寄り、手短に説明する。


 私たちは負けたはずです。なのに。


「あ~、一歩動いちまった。まぁ約束は約束だからな。にしても、ニナのやろぉ、遊んでやがるな」


 ボリボリと頭をかきながら、照れくさそうに翼は言う。


 格好に似合わず義理堅い。


 戦闘に集中して、風花も玲奈も見ていなかった。


 翼が言わなければ気付かず、また何の契約書も交わしていない口約束。普通なら平気で破る。今はとるかとられるかの戦いをしているから尚更だ。


 そういう意味で、翼の基準は歪んでいる。彼はエゴイストなのだ。他人の思惑にとらわれず、時として自分の判断を優先させる。この大事なときでも同じに。


 しかし、翼のその決断に二人は助けられた形だ


「ありがとうございます。翼さん」


 風花は、素直に感謝を伝える。


「よせよ照れくせぇ、それよりありがとなぁ、これでバンバンよぉ」


「いえ、私の方こそ・・・・・・きゃあ」


 翼の姿は、着物はぼろぼろで、ほぼ褌一枚、男のそんな格好を見たことがない風花は、羞恥心で真っ赤になって顔を背ける。


「ほんとに嬢ちゃんは純真とゆーかウブだよなぁ、そんなんじゃ男とパーティーすら組めないぜ」


「風花さんは、箱入りですから仕方ないです。雫という怖い姉もいますし、男の人とパーティを組ませてもらいませんでしたから。そんなことより、これからどうしますか」


 このままじゃまずいことは、玲奈も分かっている。


 だから、風花が起きてから、真っ先に翼に聞きたかった。


「つってもな、ニナは炎魔法の第一級魔法所持者だ。本気になれば今頃は、あの世行きだ」


 現状は手詰まりだ。


 橋を渡りきるまで後10メートルほど、正門までは数百メートル。


 第一級魔法を使える魔法使いは、そのくくりとして通称『スペシャリテ使い』と言われ、どのカテゴリーでも、魔法大事典に使用者の名前とともに乗る。それほど名誉があり、第一級は厳正に審査される。


 誰にも真似できない、自分だけのオリジナル魔法が第一級魔法に認定される上で必要となり、後は強さ、芸術、使用者の人格等々総合的に判断されて登録される。


 第一級魔法を使えるほとんどの者は呼び名があり、ニナの場合は『火葬姫』と呼ばれており、炎魔法を使わせたら、国内でも有数の魔法使いだ。


 ニナが本気になれば、この橋は簡単に焼け落ち、玲奈達は焼失する。


 跡形もなく最初から居なかったかのように。


 翼が言ったとおり、ニナの慈悲によって生きている。


「現状を覆す何かが起こればな」


「死を握られているなんて、嫌な感じですね」


「きっと何とかなります。全員の力を合わせれば奇跡は起こると思います。私達が翼さんの一歩を引き出せたように」


 悲観的な、二人を風花は励ます。


 気持ち的な問題だが、勝ちを信じているのと信じていないのとでは、勝てる確率が違う。


 どんなに望みがなくても、0と一とじゃ違う。


「若いっていーねー。もうおじさんだなおりゃ、きっかけは必ずくる、こんな可愛い女神がふたりもいるんだ、こない訳ねぇ。何か動きがあったら、俺が先陣をきる。足を止めたり、振り向くんじゃねーぞ。ニナは防御はからっきしだ。近接距離なら勝てるめはある」


 それから、三人は話し合い、時が訪れるのを待つ。


 不思議とニナは攻撃してこなかった。


 返り討ちにしてやるといわんばかりに。


 そしてその時は訪れた。





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