ダンジョンでの戦い06
何故人は人を無条件で信じられる事があるのだろうか。家族の絆、ここ何年も年に一回ほどしかあってないのに、何を言っているのだろうか。それでその人の人となり、変わったか変わってないのか、思想は、何を考え、どう生きているのか分からない。だって人は上辺を取り繕う生き者だから。
裏切り騙すには家族ほど簡単なものはいない。
家族は口を簡単に滑らせ、秘密の情報すら簡単に手に入ってしまう。
二階堂清音にとって、妹達は確かに大切な存在だ。幼少の頃から目に入れても痛くない存在で、溺愛し、仲は良かった。それもまた彼女の一面。
それ以上に、学園に入ってからの生活の方が、より大事になっただけの話だ。
あの三年間は、私の人生の中で、『全て』といっても過言ではない。
学園に入った時の刺激は、清音の予想以上だった。
私は箱入り娘だったので尚更だ。
自分より上の先輩。自分と同じ実力の同学年。そんな彼ら彼女らとの切磋琢磨しあう日々は、もの凄く楽しかった。
それだけなら良かった。
何時だったのだろうか、最初の挫折は、最初の地獄は。
初めて挑んだレベル五十のダンジョン。そこで仲間を失い、初めてダンジョンをクリアできなかった。
今思えば馬鹿だと思う。
あの時、私達は若かった。
自分達は最強で、どのダンジョンに行ってもクリアできると。周りの忠告も気かずに。
次の失敗はフェイルゲーム。あのゲームの闇の深さを私は見誤っていた。
フェイルゲームは悪質で陰険で、底なし沼だ。やられたからやり返し、奪ったから奪い返す。
まさに復習の連鎖。
昨日の敵は今日の友、互いが疑心暗鬼になり、心が磨耗する。
何とかして変えなければ。
まず学園でトップになり、この学園の方針を変える。
頑張った結果、学園トップになったが、仲間を全て失った。
志を共にしたパーティーメンバー、一緒に頑張りましょうと言ってくれた後輩、清音を後押ししてくれたクラブ派の学園卒業生。
皆、この学園が変わることを願って、満足そうに逝った。
でもなにも変わらなかった。生徒会長になっても、実質『学園』の事を決めるのは、『五大派閥
』、フェイルゲームをやめさせることも、学園の生徒達をフェイルゲームから守ることも。せいぜいがクラブ派での地位が向上したぐらいだった。
そして、『あの人』の後釜に座った現クラブ派トップの人物『ディーノ』、彼の事は一生許さないだろう。
無念さと後悔、無力な自分に打ちひしがれながら、学園を卒業した。
私はどうすればよかったのだろうか。玲奈の兄の様に、『そのためだけ』に全てを犠牲にして学園生活を終えればよかったのだろうか。
学園生活で私に残ったのは憎しみと使命だ。
私がクラブ派のトップになり学園を変える。
そのために、クラブ派のトップに取り入り、機会を待った。
そして今日・・・・・・その機会ははたされる。
「とゆー訳で、クラブ派の対立も~、この日の計画も~清音さんが計画したものでした~みたいな」
爪をいじりながら、桃子は真相を話した。今日の一連の計画は、クラブ派トップ、この都市のギルドマスター『ディーノ』をおびき出す清音主導の作戦。
清音姉さんに聞かないと。
下に行こうとした雫を桃子は止める。
「ちょっとバカでしょあんた。行ったところで足手まとい~からの、犬死にするのが落ちみたいな。あんただけならお好きにどうぞだけど、周りに誰かいるの忘れてるんじゃない。今あんたは大将だろう、大将の命ってのはやすかねーんだよ」
桃子は雫の首元を掴み、ガンをたれる。
普段はギャルで軽い言葉の桃子だったが、妙に説得力があった。
桃子は雫を離し、カティナ達の方に押す。
「あーしの依頼はここで足止めだから~的な。だから、黙って待ってろっつーの。御影は必ず助かっし時期にわかっからさー。この喜劇と悲劇の結末をさ~、的な」