ダンジョンでの戦い05
それは少し遡る。
蓮がセイントシールドを展開する前、守の召還モンスター、トゲトゲネズミのウーちゃんがばれないよう、人と人との隙間をかいくぐり、蓮の首後ろに張り付き、スキル『麻酔棘』でチクリと刺し、蓮が昏倒したのだ。
しかしまだ終わってはいない。
蓮を倒しただけで、まだ二十人以上敵が残っていて、桃子もいる。
雫達は桃子の次の行動を注視していた。
「はぁ、あーしは蓮に居てくれっていわれただけなんだよね~。あーしに言われてもー、みたいなー」
髪を指でくるくる回し、桃子は気怠げに言う。
桃子的には、どーでも良かった。クラブ派にいるが、仕方なく入っているだけで、クラブ派が対立したときも『指示』でこっちに入っただけだ。
だから、一文にもならない戦闘に付き合う気もないし、さっさと終わってほしかった。
しかし、ここで『解散』、ハイさよならというわけにはいかない。
はぁ~、怠いわ~。
「まぁ、しゃーないか、あんたたちぃ~、蓮や上の人には私から言っとくからさ~、負傷者連れてどっか行ってくれない~、ちょ~うざったいけど、私がけりつけるからさ~」
桃子の実力をわかっているのか、責任をとるのが嫌なのか、パーティー毎に負傷者を連れて帰還石でダンジョンを後にする。
人数が減るのは、好都合なので雫達は、警戒しながら事の成り行きを見守る。
蓮のパーティーメンバーは残ろうとしたが、桃子が手で払ったため、帰って行った。
一対四、形勢逆転だ。
しかし油断はできない。蓮は防御特化の魔法使いに対し桃子は戦闘科二年S組のトップ。このなりで信じられないかもしれないが、実力でトップになった。
四人いても雫達を圧倒できる力はある。
桃子は全員が居なくなったのを確認してから、ほっと溜息をこぼす。
『やっと』居なくなってくれたと。
「お邪魔虫が退散みたいな。ようやく話せるわぁー。一つ言っとくけど、あーしは敵じゃないから」
「俄には信じられませんわね」
どういう意図で桃子がそういったのか分からないが、雫は信じられなかった。
それもそのはず、先ほどまで敵対していたのだ、雫以外の仲間達も、誰一人として信じていない。
「それは、あーしが、新聞部、暁の『スパイ』だってばれちゃいけないからみたいな。今の段階じゃちょっとね~的な。それよりもさ~、今の状況共有した方がよくない。何で情報がばれたとかさ~、他の『ルート』はどうなったとかさ。どうせここで私達は足止めだから時間あっしね。あ~清音さんは『気にしなくて』いいから、あーしが保証する」
何で舞先生の作戦が筒抜けなのか、雫は聞きたかった。何かするにも情報が足りない。
雫が確認するかのように見渡し、全員が頷く。
「聞かせてください」
「そうこなきゃね~、まずは現状把握から、正規ルートは全滅ね~、舞せんは他ダンジョンの強制転移からの、つばっさんに、玲奈と風花は負けてしまったーみたいなー。あー安心して、つばっさんが、二人と勝負して負けたとかで、二人を守ってるから~。スラムルートは、今日子っちやギーゼルさんのおかげで、『今』は大丈夫。後は正門ルートは誰も行ってないからいいとして~、このルートが一番肝なんだよね~、ほんと人使いが荒くてないわ~」
桃子の口振りからすると、まだ何かあるみたいだ。
「まだ気づかない~。つーか、気付いていない。戦闘していたときに二人下の階に行ったことを、ねぇ」
雫達は初耳で驚いた。と同時に雫は安堵する。清音姉さんはこれで助かると。
そんな雫の様子を桃子を鼻で笑う。
「つーか頭おめでた~みたいな。あーし達がわざと通したか、分からない~。『何故』隼人さんは清音さんだけを通したか、共通する人物は~、何故、味方だと認識しているのかなぁ~、久しぶりにあったのにぃ~、おかしい的な的な」
雫は動揺しカティナ達は困惑する。
それじゃあまるで。
「はい正解ぃ~、裏切り者の答えは清音さんでしたぁ~」
そして、話の本題。桃子が知っている『真実』が明かされる。