ダンジョンでの戦い04
連は自分の容姿が嫌いだった。中学生ぐらいのちっこい身長に中性的な顔立ち。なにより自分の名前でいじられるのは我慢ならなかった。
それを言った者達は、軒並み制裁を加えている。
何も雫達の命を取るまではしない。隼人達にもきつく言われている。『半殺しは良いが殺すな』と。
一斉攻撃の指示は出したが、致死性のものは避けるようにと言ってある。
ボロボロにした後、産まれてきたのを後悔させてやる。
余裕で見ていられるのはここまでだった
「Gaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
一斉に放たれた魔法。それを防いだのはボルの巨大化だった。
大きい巨人族がさらに大きくなる。横目で上にいた魔法使い達を見れるぐらいに。
昔々、巨人族はもっと大きかった。成長したドラゴンやサイクロプス等大型モンスターに引けを取らないほど。
他の種族からモンスターと認定されそうになり、弱った巨人族は試行錯誤を繰り返し、魔法で今のサイズになるよう成功した。
時が経ち、魔法を使わなくても、今の身長に落ち着いたが、稀に先祖返りでもの凄く大きな巨人族が誕生する。
それがボルだ。
ボルはこの姿になるのは怖かった。
この姿になると、他の種族からやたらと恐がれるし、言葉が話せなくなる。
何よりも嫌なのは戦闘を強要される事だ。
やれ、農家になどならず戦士として戦えだの、獣森国に行って出世しろだとか、お前に必要なのは農業の知識じゃなく戦う技術だとか。
頼んでもないのに、歴戦の巨人族を呼び、戦うことを強要された。
一つボルにとって良かったのは、師匠の巨人族は人格者だったことだ。身長が縮む魔法を教えてもらい、ボルの夢を笑わずに聞いてくれて、後押ししてくれた。
それが村人達にとっておもしろくなかった。
まず師匠が村から追放され、獣森国から使者が来ると分かり、ボルは逃げ出した。
獣森国に行けば農業はできなく、やりたくない戦闘を強制されるのは分かっていたからだ。
しかし、ボルは解放した。仲間を守るめに。忌まわしきこの力を。
「GRYAAAAAAAA!!!!」
ボルは上にいる魔法使い達の足場に向けて拳を振りぬく。
「あああああああ」
足場は破壊され落ちていく魔法使い達。
桃香ほど身体能力もなく、並以下。
骨の壊れるメロディーが大音量で鳴る。
しかし、誰もそれに注目し構っている暇はなかった。
「愚者之紅蓮歌」
シェルターの中にいた時から、カティナはキリングバーサーカーを使い、ためにためた気を解放する。
しかし相手は格上の先輩学園生。
声と同時に飛び出したカティナに対し、迎え撃つ体制はできていた。
これはカティナのオリジナル技。
クラブで切磋琢磨しあい、その中でカティナが考えた技。
大剣を突き刺す。
紅蓮の気が歌声の様に広く放射される。
それは、敵の前衛の盾に防がれた。
しかしまだカティナの技は終わっていない。
「炎爆!!!」
蓮達の失敗は、周囲に魔法障壁を使ったり盾でも『完全』に防がなかったことだ。
体に付いた火種の後から爆破する。
まだ、カティナの気ではそれほど大きな爆発はできない、せいぜい、付着して爆破した部分が火傷するぐらいだ。
しかし、相手をよろめかせることには成功した。
負けてられませんわね
次は雫の番だ。
「鳳凰閻熱仙」
御影と出会い、進化した技。
前はどこか機械的だった鳳凰。
それが生き生きとして、ほのほのしく生まれ変わり。
「きゅぃぃぃぃ」
扇が心臓部分。炎の羽を纏い、まるで本物みたいに羽ばたき、雄叫びをあげ、蓮に向かって降下する。
蓮は落ち着いていた。
何故ならその技は知っていたからだ。
その対処方法も。
多少進化したところで、無駄です。
「セイントシールド」
カテゴリー5の聖魔法、第六級の魔法で、蓮が使える最強の防御魔法。
蓮自身は攻撃魔法の適正がほしかったが、あまり才能がなく、かわりに防御魔法にはあった。
突き破ろうと鳳凰の圧力はますが、びくともしない、まるで難攻不落の要塞の様だ。
「きゅああああ」
やがて、壊せないまま、鳳凰は無念そうに鳴き消えた。
「もう終わりですか」
蓮は不蔑の視線を雫に向ける。ちょっと前衛を慌てさせたぐらいで、いってみればそれだけだ。
何も変わらない。ボルの巨大化、上にいた魔法使い達の重傷は痛いが、自身のパーティーメンバーは無傷だ。
「あらあら、まだ気づかないのですか『私達』の勝ちですわ」
蓮の視界がぶれる。首の後ろに、何かモンスターが張り付いているのを感じながら。