ダンジョンでの戦い03
「スラ太郎、皆を守って、スラ子はスラ太郎の簿序」
ランク三十まで進化したスラ太郎が新しく覚えた特殊能力の一つ、『シェルター』、五分間魔法や打撃からみを守る。格上でも守りきることはでき、強度はランク五十相当。スラ子の新スキル『同族強化』、同族を1.5倍に強化するスキルで、雫達は当面の間は安全を確保することに成功した。
最も、いつでも倒せるとばかりに蓮達はにやにやしながらショーでも見るかの如く、守のモンスター達の技の発動を待ち、ここまで何もしてこなかった。
「ありがとうございます守さん。当面の時間は稼げましたわ」
「でっ、雫どうすればいい、私は戦略がからっきしだしさ」
「おらもだ、頭使うのさ苦手だ」
「僕も、雫さんにすべて任します」
全くそろいもそろってですわね。
死地にいても、御影のクラブメンバー達は変わらない。
このぐらいの試練、何とでもない様に。
普段から御影や舞先生、格上と対戦してきて、カティナ達はこれぐらいで萎縮することはない。
守やボルは積極的に戦闘しないだけで、いざとなれば戦う覚悟はできている。
しかし、三人とも頭を使うタイプでわない。
ボルやカティナは良い意味でいうと、感覚派、悪い意味で言うと、カティナは脳筋、ボル鳥頭で、守は指示を出したことがなく、指示待ち人間。
まともに作戦を考えられるのは雫しかいない。
何だかのほほんとしてきますわね、こんな時に。
場違いだが雫はそんなことを感じていた。
風ちゃんも頑張っているはずです。お姉ちゃんも頑張らないと。
緩んでいた気持ちをしっかりと引き締める。でも肩は軽くなった。
「まず、ここをどうにかしなければいけません。第一に蓮を倒すこと、第二に助けを呼ぶこと、第三に清音姉さんの救出です」
例え、雫達が清音を助けにいったとしても、足手纏いになる。今下では、雫達が及びもつかないほど、次元が違う戦いをしていることだろう。
それよりも今は自分達の事だ。
蓮は魔術師だが、何人者人物に守られている。
正面から行けば上から正面から攻撃を浴び、全力で一点突破しても届かず完敗するだろう。
「守さん、小さくて・・・・・・のある召還獣いませんか」
「それならいるよ」
これで、一つ作戦ができましたわね。
しかし、これだけでは確率が低いと雫は思っている。
「ボルさんは、どういった事ができるのですか」
雫はボルのことをあまり知らなかった。『奇跡の一日』の一人だという事以外。
カティナは長年の親友で同じパーティーメンバーなので、知りすぎるほど知っている。
守は合同練習で何度か会って、戦い方は知っている。
背中を預ける仲間だ、できるだけ知っておきたい。
「おらは、村で一番の怪力だ。おらはやりたくないんだけどおら以外熊や野良モンスターさ討伐できるのいないっぺ、仕方なくやってたんだな。んで、おらは馬鹿だから武器さ使えねえんだな」
そういってボルは己の肉体をアピールする。
鋼のようでいて、岩石のようにごつごつとしている。
雫は巨人族の戦いを文献で知っていた。
昔々、今では使えるものは少ないとされている。
昔の巨人族は武器を使わない。
巨人族は、鎧を着ない。
あっても邪魔になるからだ。
「あの『技』は使えるのですか」
「んだ、その技はおら以外使えないから、農作業さしたいのに駆り出されて、村を守ってたんだな」
何故『奇跡の一日』にボルが入っているのか、雫は分かった気がした。
戦闘科でないのが惜しいとも。
本来なら望んでもできない技だ。
なのに、ボルに授かったのは神様の気紛れかもしれない。
これである程度目途がたった。
成功確率は五分五分といったところか。
悪くはないと雫は思う。
私も御影さんに毒されたかもしれませんわね。
「私にはなにも気かねぇーのかよ」
拗ねたようにカティナは言う。
「あらあら、今更ですわね。カティナ事は信頼してますわ」
「おう、任せろ」
それだけで、カティナはにかっと笑う。
「いいですか、今から作戦を言います」
五分後スラ太郎のシェルターがきれる。
「別れの挨拶はすみましたか」
蓮は余裕の表情だ。
「あらあら、私達は勝ちますわ」
雫の言葉を聞いて、笑い転げたいのを蓮は我慢する。
負ける要素がない。チュートリアルダンジョンよりも簡単だと蓮は思っている。
「どうかされたのですか『れんれん』ちゃん」
「ぶちころせぇ!!」
雫は、挑発するように、蓮の『禁句』ワードをあえて口走り、蓮がぶちきれ、戦いの火蓋がきっておとされた。