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橋での戦い02


 舞先生が消えた。


 絶対的安心感、舞先生がいるから、例え格上だとしても向かっていけた。


 しかし、今はもういない。


 残るのは不安感。


 相手は同等か格上四十人。とてもじゃないが勝てない。


 どうすればいい。


 風花は迷っている。


 一旦撤退するか、玉砕覚悟で突っ込むか。


 後ろを見る。


 さっきは飛べた五メートルがやけに遠く感じた。






 川辺にいた四十人は、風花達の方へ向かっていた。


 一様に安堵の表情。


 うまくかかってくれたと、玲奈や風花ではなく、舞先生がいなくなったことに対する表情。


 明らかにほっとしていた。


 後は出来レースだと、二人を無効化するなんてわけないと。


 七月の事件の再現。


 風花と玲奈は人質としての『価値』があり、捕まえれはもうけものだ。


 他のルートよりもおいしい思いができる。


 犠牲になった十人には悪いが、このルートになって良かったと冒険者達は思っていた。



 弱気になったらだめだ、呑まれたら駄目だ。


 風花は己の心を叱咤する。


 風花は隣の玲奈を見る。


 やけに涼しげな表情に見えた。


 玲奈は別のことを考えていた。


 敵をどう倒すかだ。


 相手はこっちを舐め腐っている。


 幸い橋の上だ。

 

 一斉にくるのではなく、横幅は四人が精一杯。戦闘を考えると二人が限界。


 なのに四人一列できている。連携もバラバラだ。


 故に勝機はある。


「風花、相手を良く見てください。戦闘できる状態じゃありません。どのくらい任せられますか」


 玲奈の声に、風花は現実に引き戻される。


 風花は相手を良く見た。次第に、弱気になっていた思考が冷静になる。


 薄暗闇から光が射し込んできたかのように。


「縦一列ならいけます」


 風花は自分の事を過大評価しない。


 構えも、防御もしていない、油断している状態の同等ぐらいの敵なら、ファーストアタックが肝心。


 それを鑑みて、縦一列、十人なら全力で攻撃すればいけると。


 となると、玲奈の担当は三十人、はっきり言ってかなりきつい条件だ。


 初撃で最低でも二十人、後は風花と協力して十人を倒すとしても、警戒した状態の十人はかなり厳しい条件だ。


 やれるだけはやります。


「五秒後に攻撃をします。大丈夫ですか」


「はい、頑張ります」


 小声で話し合う。


 相変わらずの舐めきった態度。


 隣の人と談笑したり、怠そうにしていたり、二人の体を見て、だらしなく鼻を伸ばしたり、下劣な表情をしている。


 捕まったら『無事』ではすまない。


 暗にそう言っている


 だから気付かなかった。二人がなにをしようとしているのかを。


 五秒後、ばれないよう溜めていた気と魔力を一気に解放する。


「藤島流槍術・奥義・天竜千」


「縦の二・剣臥」


 天竜千は玲奈の奥の手で、唯一使用できる奥義。


 藤島流槍術の奥義は十二あり、十二使えて一つの完成形えと到達する。


 しかし玲奈はまだ初歩の初歩しか使えない。


 それでもこの技を選んだ。


 それは風花も同じだ。


 二階堂家の技にはないもの。


 御影が一から教え、風花が必死になって体得したもの。


 縦の型は全部で十五、まだ縦の三までしか教えてもらえず、縦の一も修得率は六割ほどだ。


 しかし、風花はこの技にかけた。


 自分の未来を。


 天竜千、それは天に昇る竜が如く、敵を跳ね上がる技で、巻き込まれれば、天まで昇り、そのまま昇天するといわれている。


 玲奈は低い体勢で敵の前方で、体全体で跳ね上がる。


 竜が通ったかの如く、前中方にいた冒険者達は高々と宙に舞う。


 その前、風花が放った剣我。


 縦の一剣突が針なら縦の二剣我は餓狼。


 餓狼が飛び出すような迫力から、そうな名付けられた。


 風花はこの技を使って出てきたのはせいぜい子猫がいいところだ。


 足りないなら命を燃やせ!


「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 刀を突き投げる。


 出せるものすべて出せ、声も動作も気も魔力も血の一滴すらも。


 自分でも驚いた。


 子猫がいつの間にか成長して、餓狼になっていた。


 形事態はできていた。


 御影が言うには風花には自信が足りない。自分を過小評価していると。





 餓えた狼が、食い散らかす。


 はね飛ばされた冒険者は川に落ち顔を上げることなく浮かび上がらなかった。


 餓狼にやられた者は肉塊になり、生命自体が消滅した。


 風花は膝をつく。


 心臓が酸素をほしがっているかの様に荒い呼吸だ。


 玲奈も、膝はつかないまでも、かなり消耗している。


 そのかいあってか、当初の予定よりも冒険者を倒し、残り五人。


「やべぇぞ」


「こんなの聞いてねーよ」


「ずらかるぜ」


 最初の攻撃で、冒険者達は逃げだし・・・・・・殺された。


「何逃げてんだ。ほんと使えねーな」


 橋を渡り都市部に入る門。


 うっすらと見える程度の距離。


 そこから何らかの方法で冒険者達を倒した。


 見えているのは一人。


 二人は全身に寒気がした。



 そう、その男はレベル七十台を主戦場としている冒険者。玲奈達より遙か格上の相手だ。







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