御影救出作戦決行!!
「むにゃー、もう食べれないにゃー」
ニャルコは、牙を立てたまま眠っている。
呑気なものだと御影は思うが、起きると騒がしくなるため、そのままにしている。
何回か強制罠が発動したが、ニャルコが起きる気配はない。
よっぽど深い眠りなのだろう。
ニャルコは幸せそうな顔をしていた。
守ってやらないとな。
御影はニャルコが話していた事を思い出す。
「にゃーというか、猫族は寒いところは苦手にゃー、北海道は寒いところにゃけど、冬は厚着にゃー、にゃーは特に寒がりだから多分一時間もたたず凍死する自信があるにゃー」
ニャルコは自慢するように言っていた。
残りの指輪は十三本、時間にして六時間半、タイムリミットは今日の夜だ。
頼むぞ舞先生、皆。
御影は運を天に任せるほかなかった。
「行くぞ」
結局、皆練習場で一夜を明かした。
時刻は朝八時、既に全員が起きている。
みんな徹夜して、作戦について話し合いたかったが、きりがいい所で舞先生が強制的に寝かした。
舞先生に同行するのは玲奈と風花。
後は各地に散っていった。
舞先生達は学園を出て、外界にでる門の手前で気配を感じる。
数は十、全員が学園の者ではない。
門の外側には都市のギルドに所属している冒険者達。
「外出したいのだが、何をしている」
人相は悪い。どこぞの三流冒険者みたいだ。
門の所に立ち塞がってとおせんぼしている。
「あぁーん!今日は修理のため通行止めだ」
「帰った帰った」
「怪我したくなければな」
「よく見れば、かわいーこばっかじゃないか」
「俺らといーことしないか」
「「「ぎゃっっはははは」」」
末端の人物はここにいる三人の顔を知らない。ゆえに、こういうことをいえる。
「ゲスですね。そこをどきなさい」
玲奈が軽蔑の眼差しで、そこをどくよう言うが、爆笑するだけで聞き入れられない。
風花は萎縮しており、玲奈の後ろに隠れている。
それが冒険者たちを増長させる一端だ。
こう言う時は、舐められれば相手が勢いづき、いらぬ争いになる。
舞先生にしてみれば、どっちでもよかったが、とりあえず生徒達に任せた。
「私は藤島家の娘、藤島玲奈です。三度目はいいません、そこを退きなさい」
高く響くような声。凛とした表情で臆していない。眼光は鋭い。
その表情に冒険者達はたじろぐ。
しかし、冒険者達も舞先生達も足止めしなければいけない『理由』があった。
「俺たちゃぁ崖っぷちなんだ。ここで足止めしないと冒険者を首になる。俺達には、妻や息子、娘がいる。だから三時間だけ待ってくれ・・・・・・頼む」
形勢が不利とわかると、冒険者達は泣き落としにかかる。
藤島玲奈の資料はもらっていた。甘ちゃんで、弱い者の味方。こう言えばきっとこちらの言うことを聞いてくれるだろうと。
冒険者達は、玲奈の前と違う点に気付いてなかった。
有無を言わさず、一番前にいた冒険者を槍の横腹で殴り昏倒させる。
「私はもう迷いません。そこをどかないというのなら、倒して通るまでです」
「野郎どもやるぞ」
泣き落としが通用しないとみるや、一斉に攻撃に転じた。
玲奈に六人、風花に三人。
玲奈の方は足止めで、舞先生は初めから狙っていない。
冒険者達の本命は風花。風花の事を下だと見ており、人質に取ろうとしていた。
あんなにビビっているんだ、取るに足らないと。
後1メートル。
冒険者達は、風花を捕まえようと手を伸ばすが、何をされたか分からぬまま、昏倒する。
「私だって、強くなってます」
風花は抜刀術で、素早く三人に一太刀いれる。
三人が、刀が動いたのか分からないほどの早さで。
動揺した残りの冒険者達は、玲奈を囲み、同時にに攻撃を仕掛ける。
「藤島流・周の一・回旋」
円を描くように槍を回す。
闘気を槍に付与し、風圧で吹っ飛ばす。
扉や壁まで吹っ飛び、その衝撃で気絶する。
本当にとるに足らない相手だ。しかしこれはまだ序の口だと三人は思っている。
門を抜けると、橋があり、それを渡ると都市に入る。
しかし・・・・・・。
「ここまでやるとは思わなかったぞ」
さしもの、舞先生も『ここまで』やるとは予想もつかなかった。
橋の中央付近が5メートルほど壊されており、向こう側には五十人ほどの人物が待ち構えていた。