集まりし者達
八人はまだ帰らなかった。
明日休日だということもあるが、一人でいると不安だった。
「なぁ、ほんとに大丈夫だよな」
「お姉ちゃんが言うには、明日にも戻ってくるって言ってたのですけど」
カティナが口火を切り、風花が安心させるように言うが弱い。
本人も不安に思っているのに、周りを納得させるのは難しい。
話題は、御影の帰還だ。
「わっちは心配じゃ、もう戻ってこないかもと思うと不安なのじゃ」
「・・・・・・不安。炎魔法が成長しない」
「でじ子は信じてるでじ」
「おらも信じてるだ」
「僕も、あの他のみなさんは?」
最近、種次とプゥと三下を見ていないので、守が疑問に思った。
「三下さんは、今日来て『へっへっ~ん、御影のいないクラブなんて辞めるぜぇ~、あ・ば・よぉ~』、と言って去ってきました」
「三下、死ねばいいのに」
「三下野郎、最低だよ全く」
風花が三下の真似をして、美夜とカティナが悪態をつく。
三下の退部はこれで三回目。そして毎回調子よく戻ってくる。
毎月あるので、初期組は馴れている。
三下への感情はストップ安だが。
「わっちはプゥの事が心配なのじゃ。眼鏡は別にいいのじゃが」
「私もプゥちゃんのことが心配です。同じGクラスですけど、何だが塞ぎ込んでいる感じで。私が話しかけても大丈夫の一点張りで、種次さんがフォローすると言ってましたので、大丈夫だとは思うのですが」
風花もプゥのことは心配していた。Gクラスは出席確認などなく、任意の出席。
Fクラスから、きっちりと出席確認、学力、戦力等の総合成績順でクラス替え試験に挑むメンバーが決まる。
三下は相変わらずのさぼりで、種次は普段と変わらず、プゥは浮かない顔で、思い詰めた表情に見えた。
みんな気落ちしているが、プゥの塞ぎ込みようは、少し異常だ。
まるでこの件について何か知っているかの様に。
御影のことも心配だが、プゥの事も心配だった。
風花は力になりたかった。プゥにいつもの明るさを取り戻してほしい。
それはクラブのメンバーも同じ思いだ。
このクラブにとって、マスコットキャラであり、ムードメーカーであり、クラブにとってなくてはならない存在だ。
でもきっと私達の言葉じゃ届かないだろうと風花は思う。
プゥは天真爛漫に振る舞っているが、どこか一歩引いている。
それはクラブのメンバー達も同じだ。
皆何処かに心の傷をもっている。
トラウマ、呪縛、差別、偏見、罪悪感。
御影という宿り木に集まって、傷を癒している。
風花の時と同じように、きっと御影じゃないと治せないだろう。
私もプゥちゃんのこと助けたいのに、なんだか妬けちゃいますね。
御影ならさらっと解決してくれる。そんな確信が風花にはあった。自分と同じ様に。
「まだ、いるのか、とっくの昔に閉校時刻だぞ」
様子を見に来た舞先生が呆れた様子でやってきた。後ろに続くようにして玲奈の姿も。
「あれっ、玲奈、髪」
カティナが驚きの声を上げる。
玲奈が自分の髪を誇りに思っており、大事にしていたのは知っていた。
だから、玲奈がこんなに髪を切ったのを見るのがカティナは初めて、心境の変化でもあったんだろうかと思う。
「ケジメとして切ったの。御影さんの救出に協力するために」
そう言って、恥ずかしそうに玲奈は髪を触る。
表情的にはスッキリしており、後ろめたさもない。
なにかしらの心の葛藤に整理がついたのだろうとカティナは思う。
後で聞こうとも。
舞先生は、クラブの面々を見つめる。
三下はいてもいなくてもどっちでもいいが、種次とプゥがいないのは好都合だった。
「第三段階の契約は成立したぞ。後は明日、ギルドに提出して、許可を貰うだけだ」
皆が一様に喜ぶ。
御影救出作戦の終わりが見えてきた。
この四日間は本当に長い長い一日だった。
体感的に、一日が一週間近くに感じた。
それももう、明日で終わる。
「しかし、『誰かが』妨害してくる可能性は高い。そこで、皆に協力して貰いたい。やってくれるな」
半ば、確信に近い形で舞先生は問う。
思い思いに皆が頷く。
「明日の作戦は・・・・・・」
運命の五日目。
御影救出のための、最後の作戦が始まる。