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その頃の御影08~熱温との戦い02~


 一方その頃御影は。


「ギャー、許してにゃー、ほんの出気心にゃー」


 ニャルコの頭を鷲掴みしていた。


「俺は言ったよな。節約してくれと」


 冷たい目だ。暑いはずなのに、体の芯まで冷たくなる。


 灼熱地獄から五時間経過した。内三時間をニャルコは魔道具を使って涼んでいた。


 既に、ニャルコに装備させた十個の指輪中、六個の魔力が空になっていた。


「にー、このワンピースが悪いにゃー、快適すぎて戻れないにゃー」


 ニャルコが着ているワンピースの機能の一つで、魔力を流すと、快適な温度に調整してくれる。


 本来はニャルコが寒さに弱いといっていたので、そのとき用だったのだが、それまでに消費しそうな勢い。


 御影は十個全部残っている。


 多少暑さを感じるが耐えられる。


 それなのにこの脳タリンは。


 御影は手を離し、ニャルコは頭を押さえごろごろ転がる。


「ひん剥いて、残っている指輪もとるぞ」


「ににゃ~、スケベだにゃー、襲われるにゃー」


 ニャルコは顔を背けながら、ちらちらと御影を見て、尻尾がゆらゆら揺れている。


「この色ぼけ猫が」


 心底疲れたように、御影はため息を吐く。


 頭痛がするのか頭に手を置く。


「にゃー、調子が悪いのかにゃー」


 誰のせいだと思っている。


 もう一回お仕置きが必要だと思ったが、堂々巡りになるためやめておいた。


 なくなったものは諦めるとして、御影はこれからのことを考える。


 とりあえず、ニャルコの残りの指輪は回収した。


 にーにー言っていたが、強制的に。


「にゃー、暑いにゃ、のど乾いたにゃ、何か食いたいにゃー」


 ニャルコはだだっ子の様に、寝転がって手足をばたつかせ、主張する。


 煩くて考え事もできず、指輪を一つ投げる。


 静かになった。


 もはや、最初に考えていた案は使えない。このままだと明日ニャルコは死ぬだろう。


「ニャルコはどうしてそんなに欲望に忠実なんだ」


 御影が疑問に思ったことだ。


 本来、死ぬ可能性があるなら我慢するし、道を示し納得してくれたら従うはずだ。


 しかし、ニャルコにそれはない。


 単細胞というか、自由奔放というか、今を楽しくいきようという風に御影は感じた。


 まるで、そうしないと自分の価値がないみたいな。


「うにゃー、にゃーは父親と一回しか会ったことないにゃー。その時、父親に言われたにゃー『欲望に忠実に生きろ。運が良ければ会ってやる』ってにゃー。かあ様は、父親に年に二、三回しか会ってくれなくて、いっつも悲しんでたにゃー。だからにゃーは、言われたことをちゃんとやって父親とかあ様がもっと会ってくれるようにするにゃー。そうしたら、かあ様も姉様も兄様も妹も弟もにゃーの事を見てくれるにゃー。だからにゃーは笑うにゃ、だからにゃーは馬鹿やるにゃ、だからみんなににゃーがいる事を認識してもらうにゃー。そして、いつ死んでもいい様に、今を楽しく生きるにゃー」


 それがニャルコの行動原理。親の愛をもらえず、兄妹間も仲が良くなく、ニャルコは愛に餓えていた。


 だからいつも馬鹿やって人の気を引いていた。


 様は究極のかまってちゃんだ。


「で、どうなったんだ。家族や、学園は」


 御影の問いに、弱ったような、困った様子で、頭を招きかく。


「にゃーは馬鹿だから、その方法しかないと思ったにゃー。だから学園にいた兄姉様達に毛嫌いされてここにいるにゃー。でもにゃーにも親友はいるにゃー」


 その人物を思い浮かべているのか、ニャルコは幸せそうな顔だ。


「俺の事はどう思う」


 御影は興味本位で聞いてみた。


「にゃにゃん、そんなこと聞くなんて恥ずかしいにゃー、さっきのこと誰にでも言ってるわけじゃないにゃー。それにニャルコはまだ・・・・・・」


 うっふんとした表情で、ニャルコは御影に近づく。


 とりあえず御影は鬱陶しそうにニャルコの顔を手で押させた。


「にゃー、良い雰囲気だったのににゃー」


 そんなことだろうと思った。


 しかし、これで、御影は決心する。


「喉乾いてるか」


「ふにゃー、絶賛乾いてるにゃー」


 まさかと、爛々とした目で御影を見る。


 昨日御影が言った確認の言葉。


『人間の血は飲めるか』と。


 ニャルコの答えは『飲めるにゃー』だった。


 模擬戦等の時、返り血を浴びたことが何度かあったが、飲めた。


 『にゃーはグルメにゃから、まずい者から、おいしい者まで多々あったにゃー』と。


 実は、ニャルコはそろそろ限界だった。


 話しているが頭がぼやけてきた。


 もう半日ほど水分を取っていない。


 喉はカラカラだった。


 御影もそのことは分かっていた。しかしなかなか踏ん切りがつかなかった。


 クラブの面々やフェリス、舞先生や仲間と認識している者なら躊躇いはない。


 躊躇なく、実行する。


 しかし、ニャルコがどう行動するのか分からず、実行に移せないでいた。


 最悪の場合、ニャルコを気絶させ、飲ませるつもりだった。


 ニャルコの考えを知り、仕方ないなといった印象だが、そのまま実行する気持ちになった。


「いいぜ」


 御影は胡座になり、噛みやすいよう、首を傾ける。


「にゃるー、いただきますにゃ~」


 ニャルコは抱きつき形で御影に乗り、肩に噛みついた。




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