トップ会談01
このダンジョンはよく国家間の交渉事に使われている。
理由としては、ダンジョンレベルが低いこと、セーフティエリアが近くて広いこと、見通しがいいところ。
そうやって選出された中の一つ。
安全のため年に一度変わる。
たくさんの警備の人物に囲まれながら、六人の大物が会談に出席している。
「本日は、お越しいただきありがとうございます。商砂国第一皇女、現桜花学園勤務癒杉舞です」
舞先生は立ち上がり一礼する。
「桜国の獣国駐在大使フォルスだ」
虎の様に鋭い刃と眼。右目に眼帯は付け、顔には無数の傷がある。
歴戦の戦死のような顔つきで、厳格に一礼する。
「獣森国国王アルバーン。久しぶりだな舞よぉ~。んっ、ようやく俺の妾になる気になったか」
年は三十半ば、五年ほど前王になった男で、猫族の美男子。しなやかな毛並みに、魅了の魔法がついているかのごとくの流し目。毛は毎日専用の人がトリートメントしており、本人も政務より自身の美に力を入れている節がある。
舞先生曰く、年中盛っている堕猫。国内に子供が百人以上いると言われている。
舞先生はアルバーンの顔を見るたびに虫唾がはしり、会いたくはない人物だが、今回ばかりは仕方がない。
舞先生は無視を決め込む。
「桜花国総合官僚藤島縁です」
玲奈にちらりと一別して、無難に一礼する。
身体的にあまり特徴は見られなく、さしていうなら、血の通ってないような顔だ。
普通の人よりも白い。
「桜花国総理大臣水田純一です。皆様お久しぶりです」
人の良い顔立ちの六十代男性。中肉中背、スーツがやけに似合い、人畜無害そうな印象。
心の内を見せない笑顔で一礼する。
そして、招いていない来客。
「四王連合国商会長のサーシャいうもんや。よろしゅうな。舞ちゃんいけずやわー。こんなおもろいことにうちをさそわんなんて」
一礼した後、扇子で口元を隠す。金髪のストレートに、狐目、スタイルは抜群で舞先生がアスリート体型なら、サーシャはグラビア体型。
現に、アルバーンは鼻を膨らませており、フォルスはコメカミをヒクヒクさせていた。
そして、会議場の中心には、機理国の撮影魔道具があり、実質六カ国の内、五カ国が出席していることになる。
この女狐が。
おそらく、情報が漏れたのであろう。四国連合は情報に長けており、機理国にも声をかけて、巻き込む形で来たのであろう。
「機理国大統領、マルーンです。サーシャさんのお誘いで参加したいと思います。本日はそちらに行けなくて申し訳ありません」
中央に出現しているホログラフィがペコリとお辞儀する。
機理国は機械と魔法の融合する魔道具の技術が優れており、通信型魔道具も機理国で作られている。
思った以上に、大物が出そろったと舞先生の顔に汗がにじみ出る。
実質トップ会談だ。
全員が全員、年に何回か会ったことはある。そして、油断のならない相手。
今の段階で御影の存在は知られたくない。
「実は、キューブに獣森国第十三王女『ニャルコ』様が入ったという情報がありまして、私たちの学園の人物も入ったという情報もあり、私がキューブに行き救出したく思います。その事で本日お声をかけさせていただきました。どうか許可をよろしくお願いいたします」
言える範囲で舞先生は、助力を請う。
「ニャルコ、ニャルコねぇ~、おいフォルス、どんな人物だ」
「獣王学園に在学している第三妃の三番目のご息女です」
「あ~いたなそんなの。別にいなくなったらいなくなったで困らないけどな。お前がどぉーしてもっていうなら考えてやってもいいぜ」
色欲に染まった眼で、舞先生を見る。
元々、建前だけで呼んだだけだ、端から獣森国に期待していない。
「我が学園の生徒が不慮の事故で巻き込まれたと聞きました。しかし入って四日たっていると聞きます。そこでお聞きしたいのですが、その生徒さんはまだ生きておられるのですか」
もっともらしい意見で、純一は質問する。
「それも含めての調査です。ニャルコ様と学園の生徒の生存確認も重要なことだと思います。もし存命なら、早期の救出が必要です」
この問いかけはくると思っていた。
舞先生は淀みなくすらすらと答える。肝心なのは一つの国の許可を貰うことだ。
第三段階は、六国の内一つの国以上のトップの許可書を貰うことだ。