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待ち望んだ者達

「どうだった」


 舞先生の問いかけに、レータは淀みなく答える。


「はい、先方とは連絡がつきまして、一時間後に例のダンジョンに来てくれます。もうすでに岬さんに連絡し、手筈はすでに整えてあります」






 あれからレータは、自分の本物の契約主、フェリスの父と連絡を取るべく、専用の通信魔道具でいつも通り、ひとまず大使館とコンタクトをとった。


「すいません、いつもお世話になっております、レータと申します。火急の用件がありますのでフォルス様に取り次いでもらえないでしょうか」


 電話に出たのは、ラビの父親。


「それは穏やかじゃない、すぐに取り次ぐよ」


 レータとは知らない仲ではない。レータの人となりを知っているため、無駄な話はせず、フォルスに取り次ぐ


「どうした。またフェリスが何かやったのか」


「実は・・・・・・」


 それからすぐ、この情報は獣森国にも伝えられ、会談が決まった。







「そうか」


 これも、御影が持つ特有の因果によるものだと舞先生は思う。


 本来、キューブで他国の者と会うのは天文学的確率だ。大抵の者は高確率で三時間以内に亡くなる。


 問題に不正解の答えを出せば、死ぬ確率が高いからだ。


 次に場所。キューブでは千以上も部屋があり、『ランダム』で転移する。正解しなければ当然次の部屋に進めない。そして、日本にある六つの国は『キューブ』への挑戦は一月一パーティーと条約で決めている。


 しかし、何事にも特例がある。そのための会談だ。


 こっちからは、舞先生とレータが参加し、あちらからは、フォルスと獣森国の重鎮が来る予定だ。


 焚きつけたが、仕方ないか。


 御影を助けるために重要なピースが、後一つ欠けている。


 二つの国でやってもいいが、それだと角が立つ。この学園だと尚更だ。


 もうそろそろ行く時間だ。


 会談三十分前。設置や排除は、派閥の人間がやってくれているが、ホストとして早く行かなければない。


 結局間に合わなかったか。


 舞先生が腰を上げたとき、誰かがきた。


 息は荒い、全速力で走ってきたみたいだ。


 髪の毛はばっさりと切っていてショートカット。汗で髪が顔に張り付いていた。


 でも、目は前と違う。すごく意志が籠もっている。


 待ち人は来た。


 舞先生は口元に笑みを浮かべる。


「どうした玲奈。答えはでたか」


 目は口ほどにものを言う。言わなくても分かっている。しかし舞先生は聞きたかった。玲奈が出した答えを。


「私は」


 玲奈は息を整え、話出した。






 玲奈は、初めて授業をさぼり、事務科に来ていた。


「虹野岬さんをお願いします」


 事務課の受付に学生証を渡し、怜奈は待つ。


 程なく会議室の案内され、岬は座って待っていた。


「すいません、虹野さん達がお忙しい中、時間を割いてもらって」


「本当にそうね、だから手短に教えてると嬉しい」


 御影救出作戦が大詰めを迎え、いろいろな調整役の岬は本当に忙しい。


 本当は断りたかったが、授業中に来た玲奈に驚き、舞先生の命令があったため、会うことにした。


 玲奈と会って、岬は思う。眼が違った。別人かと思えるほどに。


「私にも何かやることはありませんか」


 昨日言えなかった言葉。今日は言えた、一日たったけど、自分の口でしっかりと。


「貴女にしかできないことが確かにあります。そのためには」


 玲奈を追い返した後、三人で話し合った。しかしどうしても、最後の一押しが埋まらない。


 舞先生が動けば、・・・・・・国が貸しができてしまう。レータや岬では、コネがなく、下の者と話して門前払いが関の山。


 その現状を打破する手があるが、あのままの状態なら、失敗するのは目に見えたため玲奈を返した。


 もし、玲奈がきて少しはましな顔できたら話していいぞ・・・・・・と舞先生は言った。


「貴女の父親の力が必要です。夜の九時に獣森国と癒杉様との間で・・・・・・ダンジョンを使った会談があります。それまでに父親と上の者をつれてくることはできますか」


「今来て良かった。私にもできる事があるのですね。必ず約束を取り付けてきます」


 そう言って玲奈は立ち去った・・・・・・二つのことをするために。









「私は、御影さんを助けたら、一度初めからやり直すつもりです。学園長派を辞めS級クラブも辞め、志を共にする人たちと一から。父親と約束は取り付けました」


 小学生の頃一度だけ父親に褒めてもらったことがある。髪が母親譲りで綺麗だと。


 それが嬉しくて玲奈は髪を伸ばしていた。


 だから今回、けじめのために髪を切った。

 

 今までの自分と決別するために。


 父親は、連絡したとき、最初は不機嫌そうにしていたが、一生懸命話せば理解してくれて、最後は約束してくれた。

 

 通信をきるとき、玲奈に言った。


『さすが俺の娘だ』・・・・・・と。涙が出そうになった。


 玲奈が言ってほしかった言葉。望んでも望んでも、貰えなかった言葉。


 簡単なことだったんだと今の玲奈なら分かる。


 父に言われ癇癪を起こすのではなく、もっと、ちゃんと父親と話せばよかったと。


 そして、長年止まっていた時が動き出したかのように、これからゆっくりと『家族』と向き合おうと。

 

 ぎりぎりになったけど、父親から連絡があった。うまくいったと。



 舞先生は、ようやく全てが揃ったと気合を入れる。


 一段階、二段階と進み、ようやく・・・・・・。前段階が成功し、本番はこれからだ。


「行くぞ。準備はいいな」


 二人は頷き、舞先生達は転移魔法陣に入った。



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