その頃の御影07~熱温との戦い01~
「にゃー、焼けるように暑いにゃー、このままじゃ自慢の毛もがんぐろになるにゃー」
寒いより熱いのが得意といったニャルコだったが、一時間もかからないうちに垂れ猫になった。
四日目、ペナルティにより五日目の条件になった。
つまり室内温度四十℃、うだるような暑さが御影達をおそっていた。
御影は普段通りだ。御影はこのぐらいの暑さなら 暑いとは思わない。
しかし・・・・・・とニャルコを見る。ちょっと失望した感じの目で。
ニャルコは違った。普段北海道はすごしやすい環境だ。ニャルコは四十℃を体感したことがない。
せいぜいが三十℃ほどで、ニャルコは大したことがないだろうと高をくくっていた。
それが今の現状だ。
「うみゃー、使っていいかにゃー」
「駄目だ、まだ我慢しろ」
ダンジョンの扉を破壊しようとする前、失敗した時のために色々と策を練っていた。
しかし、使うにはまだ早すぎる。
指輪には魔力が貯蓄してあって、だいたい一個につき生活魔法なら一時間程度使え、装備品に廻すと三十分程。いつ助けにくるかわからないので、後に残しておきたい。
ニャルコはゴロゴロした後、床に突っ伏しぐてぇーとなる。そしてブツクサ何か文句を言っていた。
ニャルコも分かっているのか使っていない。
じりじりと灼ける。まるで低温サウナに入っているみたいだ。
さっき少し指輪の魔力を使ってみたが、魔法は発生せず、装備品や魔道具には魔力は通せた。
指輪はニャルコに渡したのと合わせて二十個。時間にすれば十時間。
全てニャルコに使用するにしても、足りなくなる。
そしてもう一つ問題がある。
「にゃにゃー、喉乾いたにゃー、お腹すいたにゃー」
御影達は半日程何も食べてないし飲んでもいない。
喉の渇きも問題の一つ。明日ならある程度問題ないが、今日は深刻な問題だ。
こうやって騒いでいる内はまだいい。喋らなくなってふらついてきたら、かなり危ない。
三時間から四時間程度が。
御影はそう予測する。
「とりあえず出そうか」
ニャルコが元気な今の内に聞かなければならない事。
御影のデリカシーのない言葉に、ニャルコは顔が真っ赤になり。
「にゃっ~~~!!乙女になんて事聞くにゃー」
ニャルコは御影に背をむけ、股を隠し、信じられないと言った表情で眉間をしかめ、ビタンビタンと尻尾が床を鳴らし主張する。
ニャルコも避けてはならない問題だと分かっているが、言い方があるだろうと。
「二人しかいないから羞恥心もなにもないだろう。羞恥心があれば解決するなら話は別だが」
御影は、こう言う時は、羞恥心もなにもないと思っている。
羞恥心やプライドでは、喉は潤わないし、腹は満腹にはならない。
こう言う時は遠慮せず言う。それが冒険者の鉄則だと。
「・・・・・・ない・・・・・・にゃー」
ニャルコは凄く恥ずかしそうにぼそぼそっと小声で言う。
「ん? 何て言った」
聞こえなかったので、御影は聞き返す。
「にゃ~~~~!!、御影のあほたればかたれう○こったれにゃにゃ~~、にゃーは聖水なんてでないにゃ~~。御影はご褒美かもしれにゃいが、出ないったら、でないにゃ~~~~!!!」
ニャルコは御影に詰め寄り半ばヤケクソ気味に言う。全身が真っ赤で、湯気が出てきそうだ。
誰も飲みたくねーよ、と御影は思っているが口には出さない。これ以上興奮させるとニャルコの限界時間が短くなるからだ。
この様子ならおそらく○のも飲まないだろう。
一部のもの以外、誰も好き好んで飲みたくない。
一番簡単でメジャーな方法はモンスターを食う事。多くの冒険者が手段として使っている。
この場所はモンスターがいないので使えない。
時点としてさっき言った方法だが、その方法がとれないとなると、とれる選択肢は限られてくる。
しゃあないか。
御影は溜息をこぼす。
あんな事を言われれば、ニャルコを見捨てるという選択肢はない。
昨日、無邪気な笑顔で言ったニャルコの言葉を思い出す。
最初から見捨てない方向だったが、より強い気持ちになった。
「本当にやばくなったら、使ってもいい。喉が乾いたら、別の方法を使う。一つ確認するが、ニャルコは・・・・・・」