その頃の御影05~ダンジョンの扉を壊せ!01~
「うにゃー、本当にやるのかにゃー」
ニャルコは半目で御影を見上げる。
「とにかくやるぞ」
魔力と気が回復して、問題に不正解し、準備は整った。
ニャルコの装備は小手とナックル、黒いチョーカーと腕足輪が追加され、靴と衣服は新しいものに変わっていた。
「みー、乙女を汚しておいてなんて言い草にゃー」
ニャルコは、体を抱き威嚇する。
「身ぐるみはいでもいいんだぞ」
もちろん御影は、着替えるときは後ろを向いていたし、先ほどまで御影の所有する武具防具魔道具達を装着して、ニャルコは、はしゃぎ回っていた。
「冗談にゃー、ここを出るまで、にゃーのものにゃー」
絶対にはずすものかと、ニャルコの気迫が伝わってくる。現金はものだ。
「もう一回確認する。俺の合図で二ャルコが全力の攻撃を仕掛け、すぐさま退避する。それと同時に、俺が攻撃を仕掛ける。ここまではいいか」
「分かってるにゃー。それにしても驚いたにゃー。てっきり格闘がメインだと思ってたにゃー」
御影が持っているのは二又の槍で御影よりも大きい。
「まあな、俺の得意武器は槍だ。次に得意なのは格闘だけどな。成功したらすぐに移動する。失敗したらそのままだ。どっちにしろ何が起こるか分からんから、警戒は怠るなよ」
「みゃー、今から止めるという選択肢はないかにゃー」
ニャルコはうるうると瞳を潤ませ、しなをつくり、上目遣いで御影を見る。
「ないな。どっちみち手を拱いてるだけならやった方がいい。ニャルコがいったデッドラインまで助けは来るか分からないからな。ニャルコは疲れるのはいやなだけだろ」
ばれたかといった感じでニャルコは舌を出す。
ニャルコも御影も分かっていた。ニャルコが言ったデッドラインまで救出される可能性は低いことを。ただニャルコはじゃれているだけで、気持ちが高ぶっていた。
こんなすごい装備初めてにゃー。
ニャルコは・・・・・・な為、良い装備をみる機会は多かった。
装備はさせてもらえなかったが憧れていた。
銀色の綺麗な装飾が施されている足輪も腕輪も、黒のかわいいチョーカーも、羽のように軽い靴もふんわり柔らかで、ニャルコが殴っても傷つかなかったワンピースタイプの服も、竜が掘ってあるナックルと小手も全てが良い装備だと装着して実感した。
にゃー、これは私のものにゃー。
ニャルコは返す気はない。
こんなの知ってしまったら戻れないにゃー。
それになんだかんだいって、御影ならくれる気がした。
マーキングするかにゃー。
その瞬間、くれる気がしなくなったのでやめた。
二人は所定の位置にたった。ニャルコは前衛で、御影は後衛の位置だ。
ニャルコは獣化して、気と魔力を貯めていた。
ぐんぐんと金色のオーラは勢いを増す。
腕輪と足輪は気力増幅、チョーカーと服は魔力上昇、靴は身体能力と速度の上昇で、ナックルは攻撃力上昇。
全部が全部この世界では一級品の扱いだが、御影からすれば、鍛冶で作れるし、もっと上の物も持っているため取られても惜しくはない。
御影もあれ以上の装備を装着させる気は無いし、たとえ見せてもあげる気もない。
あの様子じゃ返してくれないだろうな。
ニャルコの顔が私の物だと主張していた。
これは私の物にゃー・・・・・・と。
まあ、いいけどな。
御影は槍を見る。
この槍で貫けないものを御影は想像できない。
正真正銘、御影が全力を持ってしても作れず、異世界の伝説の槍。
この槍と出会ったのはSSSダンジョン『床闇のアダム』。
向こうの世界のダンジョンは、タイプ別などなく八段階評価で、EX,SSS、SS、S、A、B、C,Dの順で評価されており、Eランク以下は入れず、自分のランク以上のダンジョンは入れない。
異世界でも上位になるにつれ人数は少なくなり、SSダンジョンをクリアした人さえ御影が召還される前の十年間は居なかった。
SSダンジョン以上は呼び名がつけられ、EXダンジョンは一つ、SSSダンジョンは五つ、SSダンジョンは十存在する。御影が召還される前までで、クリアしたものはSSダンジョン六つにSSSダンジョン二つ。
なぜ分かるのかというと、クリアしたらこの世界と同じで、転送できるようになるからだ。
そして、未クリアの『床闇のアダム』のクリア報酬がこの槍だ。
この槍で斬れないものは、御影は知らない。
しかし、戦闘中や敵が近くにいる場所では使えない。
理由はこの槍の燃費が悪いからだ。
全快の状態でも二発が限界で、チャージが長く、完了しないと真価は発揮されず効果時間は数十秒ほどで亜空庫に入れるとリセットされる。今もばかすかと魔力と気を食らっており、錆色の槍が全体まで赤く染まるとチャージ完了だ。
「みぃにぃぁぁぁぁぁぁ、まだかにゃー、理性がげんかいだにゃ~~~」
調子に乗って限界以上の力を注ぎ、三分もたってないが、すでにニャルコの理性は限界だった。
この阿呆猫が。所定の位置にたつ前、御影は忠告した。いつも通りやれ、限界以上は注ぐなと。
ニャルコは楽しくなってしまってやってしまった。
ニャルコの周りは眩しいほどの金色の気で包まれており、今のニャルコの姿は雷獣そのものだった。
後もう少し。
「いけ」
御影の合図で、弾くようにニャルコは飛び上がる。
目標はダンジョンの扉。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁ」
ニャルコ・ザ・アルマゲドン・オーバーリミット。
先ほどより倍近くの熱量。隕石というより衛星が衝突するような幻視させるぐらいの威力でニャルコは殴り・・・・・・弾き返された。
「ふみゃ~、やっぱりにゃー」
御影にとっては、ニャルコが待避する時間が減って好都合だった。
既にチャージは完了していた。
「いけ!ロンギヌスの槍」
御影は全力で扉めがけ投げた。