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覚悟の有るものと無いもの~舞先生から見たことの顛末02~

「元々、『キューブ』での殺人は、学園派、天音を殺すための一の作戦だったと聞く。元々目垣一家は、予測の異能を持っている。兄の一は自分の選択で起こる分岐する未来を予測し、弟の種次は五分以内の完全予測。一はこの予測の元に、種次が入学したと同時に動き出した。実際運もあったのだろう。元々一の予測でも分が悪く、どう足掻いても天音が死んだ未来が見えてこない。そんな折、一の元にとある人物がやってきた。龍心眼の巫女、龍我村の唯一の生き残りプゥが。

 龍心眼は元々龍我村に代々一人に継承される特殊な眼でな、今代はプゥが継承した。

 その眼は万物を見通し、人の心を縛り、感情さえも意のままにできる。

 強力な手駒を持った一はようやく天音が死ぬ未来を見る事ができた。そして裏で動き出した。プゥを使い、各派閥の人間を密かに手駒にし、見ることによって情報を入手し、着々と準備が進んでいく。一の予測は、情報や明確な行動基準によって分岐する未来は減り、より鮮明に確率が上がる。

 そして、ユズリアが協力者になり、御影が入学してきたことで、一の計画は予定よりも成果が上がり短縮された。元々一の目標は、天音を殺し生徒会長になることと、在学中に五大派閥になることだ。しかしここで欲が出てきた。天音を殺し学園長派を潰すことは私の派閥に任せて、自分達は五大派閥になる事を優先しようと。

 その策はもう出来上がっていた。今回の件、キューブに御影を入れることだ。

 そこが私が見誤った点だぞ。天音の殺害と思って見逃してたのだがな」


 舞先生は区切りとばかりに、煙草を吸い灰皿に押しつける。


 思ってた以上の事実に玲奈の心に重くのしかかる。


「天音さんは気付いていたのですか」


「どうだがな、その件だけは巧妙に隠していたから、今気付いているんじゃないかと思うぞ。一達は上を見すぎた。この前の事件も見逃された部分も多い。私達だって情報はある、一生徒に右往左往されるほど五大派閥は弱くはないぞ。いつでも潰せるから放置しているだけだ。そして代償は高い」


「種次やプゥさんはどうなるのですか」


 今度は岬が質問する。二人は御影のクラブチームに所属しているためどうなるか、どういう方針でいくのか知りたかった。


「それは御影しだいだ。少なくても無理矢理やらされていたプゥは助けると思うぞ。玲奈の元許嫁は微妙なラインだな。御影は敵と定めた者には容赦しない。私もだがな」


「でも、御影さんは誰も殺していません。いつも誰かを救って、私も救われました。それにあんなに酷い対応をとっているフェリスさんにも未だに従っています。すいませんレータさん、言い過ぎました」


 ヒートアップして、フェリスの派閥のレータの前で非難した事を詫びる。


 それほど御影の事をいつの間にか信頼していたのだ。御影なら、皆を救ってくれる、学園長派や敵対している者達でさえ。


「いえ、本当のことですから、お気になさらずに。そうねぇ、私には知らなかったことばかりですけど、これから御影さんの派閥にはいるために必要な事だと思います。私は御影さんがする事なら協力します。表向きはフェリス様の配下は変わらないですけれど」


 舞先生が話した意図を理解し、これがレータの決意。


 フェリスの事は今でも妹のように思っている。お館様には雇ってくれた恩はある。しかし、仕えたい人はレータの中で決まっていた。


「私は舞先生の部下です。でも御影にも協力したいと思います」


 続いて、岬は自分の決意をいう。


 二人は暗に言っているのだ。御影が潰すと判断したら協力すると。


「御影という人物はおそらく四段階で判断している。一つ目は味方、二つ目は中立、三つ目は敵、四つ目は潰す対象。ボブさんも、お前も、今日子も輝義も雫もお前の幼なじみも、この学園にいる者全員が四つ目の対象に入っていない。それはまだ判断材料がないからだ。敵と判断してもどういう背景で、仕方なくやっているのか、理由があるのか積極的にやっているのかすらな。ボブさんは小屋に執着したため、雫は妹のため、輝義は教会派のため、お前の幼なじみは操られていただけで、お前は正義の為と言っておこうか。その理由が御影が納得する物だったからこそ助けた。四つ目になったとき、御影はためらわないと思うぞ。ああ、一つだけ言うが、フェリスは『特別』だ。たとえ何度裏切られても守るだろう。だから厄介なのだけどな」


 話は終わりだと、舞先生は視線で玲奈の退室を促す。


「どうして、私に話したのですか」


 玲奈は最後にこれだけは聞きたかった。本来なら敵対派閥の人間に話すべき内容ではない。


 天音や他の派閥でも知らない情報もあった。


「さてな、覚悟もない甘ったれたお前がどういう選択をするのか見たかったのかも知れないぞ」


 なにも言わず今度こそ玲奈は退出する。









 玲奈が退出した後、岬はおもむろに言う。


「今日の朝まで、私達は不正アクセスにをして、舞さんを送ろうと思いました。だけど駄目なんだと気付きました。舞さんは御影を助けるためになにか策はあるのですか」


 そう、岬達が考えた作戦は、事務科の転送システムをハッキングして、舞先生をキューブに送る方法だ。


 これなら第三段階を待たずに御影を助けられる。


 キューブをクリアできる人間は舞先生以外にいないと岬は思っている。だからこその自分達を犠牲にした作戦。

 だけどそれじゃ駄目だと院長先生が教えてくれた。


 だから、舞先生の考えを聞いた。


「ああ、裏付けは取れたぞ。三日以内に第三段階をクリアする目処がな・・・・・・」


 十分ほど舞先生は計画内容を話し。


「やってくれるな、レータ」


 今回、舞先生の計画のキーポイントはレータ。


「はい、お任せください。それで御影さんを救えるのなら。御影さんを救った後、どうなさいますか」


 レータは即了承し、御影を助けた後について聞いた。


 舞先生が今後どう考えているのかを知りたかった。


「一達は後回しだぞ。一番の大本がわかってないからな。だから、御影を救った後は、学園長派を潰す」


 そう、舞先生が玲奈に言ったのは、どうせ学園長派は潰す事になるので、たとえ玲奈が学園長派に留まると言ったところで大差がないからだ。


 私を虚仮にしたこと後悔するといいぞ。

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