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事の重大さと孤児院の奇跡01


 岬は自分がやったことへの重さに愕然とする。


 元締めと会った人物が岬の思っている人物なら、おそらく今情報がいっているだろう。


 そして、どうなるか分からない。


 でも、・・・・・・のはずなのにおかしいですね。


 元締めと御影に接点はないと思っていた。


 元締めなら学園の内部にスパイもいるし、秘密裏に学園の外に抜け出すのも入るのも可能だ。


 しかし、七月の段階で敵同士のはずだ。


 あの事件でも御影を殺そうとしていた。

 あれからまあ一ヶ月もがたっていない。院長先生が言った日付だと尚更だ。そんな契約をしているとは到底思えないが、岬の脳裏に思い描いているのわ一人しかいない。


 私一人の命ですめばいいですけど。


 岬は、すでに自分の命はあきらめている。しかしスラムの元締めの逆鱗に触れ、周りに迷惑をかけるのだけは防ぎたかった。


 そして岬は御影のことを思う。ほんとのことを言うとずるいと思う。私が頑張ってつくってきた物をあっさりと越え、子供達に満足な食事を与えることができ、スラムをよりよい方向に変えてくれる。私が夢に思っていたことが、一瞬にして現実になった。つらいとか愚痴とか自慢とか岬には一切言ってない。


 でも私の願いを叶えてくれた。


 孤児院はじめ、スラムの子供達が幸せになれる未来を。


 どうして・・・・・・こんなに・・・・・・。


「岬さん」


 レータが沈痛な面持ちで、すっと岬にハンカチを差し出す。


 岬は自分が泣いているのに気付かなかった。


 どうして・・・・・・私は。


 岬が落ち着くのに三十分ほどかかり、レータの番になった。


「私も同罪ですよ。フェリス様の凶行を止められませんでした。なんとしてでも止めるべきでした。私も覚悟はできていますよ。その前に聞いてください。私達に起こった奇跡を」





 レータには一人の息子がいる。五年前病気で寝たきりとなってしまった息子。


 学園に来る前のレータの仕事はフェリスのお世話係。所謂メイドという物だ。






 レータはフェリスが生まれる前からフェリスの父親にメイドとして使えていた。


 生まれた頃のフェリス様はあんなに可愛く、誰にでも優しい性格でした。


 変わってしまったのは、お館様の教育。


 お館様は、獣森国からやってきた親善大使で、この国の上位貴族として扱われています。


 お館様の教育方針は絶対強者。つまり強い者が正義だ、という方針。


 子供はフェリス様を含め、六人いますが、学園期間中か卒業してから三年後までに一番目立った成績をとった者を跡取りとすると言っております。


 学園に行くとき、必ず子供達は腕輪をつけるよう義務づけられています。


 通称『奴隷の腕輪』。


 つけると、装着させたもの以外はずすことは不可能で、魔法と気力が制限される。制限の基準は着けた者の任意で、今の段階のフェリス様の場合は九十九パーセント制限されてます。



 そして、徐々にフェリス様は変わっていかれました。


 五年前息子が病気になって、フェリス様をあまり見てなかったのが原因かもしれませんが、今のフェリス様が誕生しました。


 お金に執着し、簡単に人を裏切り、極一部しか心を許さない。


 ここ五年で、レータは弾かれてしまった。


 お館様から、監視と報告をするよう言われていたのもあるのかもしれません。


 本来受け取るはずだった当面の生活費も大半はとられ、就職先は学園の事務課に決まっていましたが、住む場所がなく、なけなしのお金で息子を宿屋において、スラム街をふらふらと歩いていた所を救ってくれたのが院長先生でした。


 満足できる食事とはいえませんが、こんな私達を受け入れてくれて感謝しかありません。


 私はフェリス様を恨んでいません。最初に裏切ったのは私ですから。


 でも最近、御影さんが来てから変化が見られました。


 学園でのフェリス様は、最初の試験が終わるまで親しい者との接触は禁止され、失敗続きで後がなくなり荒れていました。


 ですが、御影さんが来てから今までのことが嘘のように成功し、本来ならありえないはずの取引までできるようになりました。


 御影さんには悪いですけど、機嫌がいいフェリス様を見ると嬉しくなります。


 今は人をくったような天の邪鬼な笑みですが、いつか昔のように戻るのじゃないかと。






 寝床で苦しそうに息をする息子の髪を撫でながら、レータはこの間の事を思い浮かべる。


 レータが同席したフェリス様が怪しげな人物と取引している様を。

 

 そして今日の御影への強制以来とレータに課せられた命令。


 レータは思う。


 何か決定的な事が起こるんじゃないかと。


 そんな時、合図が鳴り、誰かが孤児院に訪問してきた。


 それは噂をしていた人物だった。


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