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第二段階の交渉


 ~学園最上階~


 今まさに、とある契約がされようとしていた。


 空気はまさに一触即発だ。


 椅子は3つ用意されていて、一つは学園長、もう一つはクラブ派の首領、そして最後の一つは舞先生。その後ろに学園長派は天音、クラブ派は雫と風花の姉が立っていた。そして、立会人として執行部隊の人間が一人、系六人。


 話し合いは予想外というか意外な展開から始まった。


 まず、舞先生が二つの派閥に要請し『おみやげ』としてメダル一枚づつ。


 舞先生が出した条件は。


 第二段階、キューブに行くための推薦書のみ。


 見かえりとして、メダル四枚づつを払うというものだった。


 あまり時間がない舞先生としては、掛け値なしの最大級の上限。


 まず契約とは、雇用主は下限から、雇用されている側は上限を良い、それをすり合わせていくものだ。

 しかしそれだと時間がかかる。


 舞先生としては最大限配慮したつもりだった。


 合計五枚は推薦書一枚に対し破格の条件だ。


 普通は金銭か、メダル一枚ほど。


 メダルは金では買えない物だ。大金を積まれるよりも、五大派閥の人間達には、メダルの方がよほど欲しい。


 クラブ派はすぐに了承し推薦書にサインした。


 しかし、ここで渋ったのは、学園長派だ。


 さらに二枚を要求し、玲奈の事件や他のメダルでの取引で学園長派にとって不利な条件で舞先生側にいったものの契約の破棄。


 最後に、舞先生側が確保している専有ダンジョンとダンジョンに行くための、5大派閥それぞれが保有しているプライベート転移魔法陣の譲渡。


 はっきり言って、フェリスの条件を優に越す、度を超した条件だった。


 メダルに換算すると、二十枚以上になる。


 当然舞先生は断った。それなら他の派閥に話をもっていくと。


 しかし、学園長と天音はそれならどうぞと。教会派と貴族派は協力しないだろうと言い、余裕の構えだ。


 学園長も天音も、自分達が出した条件で契約できると思っていない。


 只、より多く譲歩を引き出そうとしていた。


 そして会議は難航し、徐々に険悪な雰囲気となっていく。


 今回に限れば時間は学園長派の味方だった。


 徐々に強くなっていく舞先生の圧を天音は耐えながら思う。


 初めて・・・・・・派に勝ったと。


 散々足下を見られ、虚仮にされてきた舞先生の派閥に勝つ。何とも甘美な響きだ。


 とうとう、学園長と天音、二人で相談し最大級舞先生が折れてくれるだろうというラインまできた。


 ここで了承すれば、後の悲劇も回避できた。


 良い条件で五大派閥でもトップを狙う事ができ、派閥の人間にも胸を張って報告することができた。


 しかし、二人は正常が判断がもはやできなかった。


 嫉妬し嫌悪した存在。自分より上の、適わないと思っていた癒杉舞に敗北の二文字を与えることができる。


 滅多にない千載一遇のチャンス。


 その事が脳裏をよぎり、甘い考えが頭を浮かぶ。


 もう少し条件をあげてもいいのではないかと。


 分かっていても上げよう上げようとするのが人だ。


 強者の弱みを握った弱者ほど抑制が効かないもの。


 そうやって線引きが曖昧になっていく。まるで熱に浮かされたかのように。


 そうなってしまっては、もはやだめだ。


 クラブ派のたしなめる声も聞かず、決定的となる。


 深夜まで激しい話し合いの末。





 そして・・・・・・。









「それでは確認します。癒杉舞先生側は、知レベル四十九、『キューブ』に行くための推薦書二枚。クラブ派はメダル合計五枚。学園長派はメダル合計七枚、癒杉舞先生と交わした契約の破棄、同派閥が所持している占有ダンジョン二つと占有ダンジョン転移魔法陣一つの譲渡でよろしいでしょうか」


 三人が無言で頷き、契約は成立した。


 そして、舞先生は推薦書を手にし、足早に去っていく。


 去っていくとき、歪んだ笑みをこぼしながら。







「お前等、大変なことになったぞ」


 舞先生が去り、喜びを分かち合っていた学園長と甘えに対し、クラブ派の長は忠告にいく。


「どうしててですか。これでかの派閥はメダル三枚、最下位です。どうも出来はしませんよ」


「学園長の言う通りです。期待以上の成果です。クラブ派が上限を引き上げないことが理解できません」


 二人は完全に舞い上がっていた。


「現生徒会長のお前が冷静に事を運ぶべきだったのさ。私の後釜として情けない限りさ。学園長も耄碌したのか。今からでも遅くはないさ、癒杉先生に詫び入れて条件の引き下げをもうしいれな、死にたくないならね。あんた達はあの人の事を甘く見過ぎだよ・・・・・・だってあの人は」


 風花達の姉が助言しようとしてクラブ派の長にとめられ首を振られる。


「長年のライバルとして、友として最後の忠告だ。自派閥の人間の事を少しでも考えているなら、死よりも恐ろしいことになりたくなければ、なにもかもなげ捨てて、この学園を去れ。これより先、待ち受けるのは・・・・・・だ」


 すでに匙は投げられた。


 避けられない最悪な結末に向けて。

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