玲奈と雫とカティナの話し合い
藤島玲奈は決意の眼差しで、放課後クラブの練習場に向かっていた。
ようやく御影に借りを返せます。
そのことを聞いたのは昼休みの時だった。
カティナと雫と玲奈の三人で、飲食街の少しお高い創作系のレストランの個室で昼食を食べている時。
いつも三人で食べることが多く、普段ははカジュアルな店で食べるのが大半だが、カティナが周りに聞かれたくない相談事があるというのでここになった。
「カティナ、俄には信じがたいのですがほんとなんですか」
「あらあら、嘘だったら許しませんわよ」
玲奈と雫は疑いの目でカティナを見る。
御影の実力を一片を知った二人には、俄には信じがたいことだった。
「師匠のことで嘘言わないって、ほんとなんだって。なんか、フェリスのやろーにだまされて、キューブ」
カティナはあまりキューブの事について知らなかったが、二人は顔色を変える。
「まさかあそこに行ったんですか」
「あらあら、会ったこともないですが、フェリスさんを殺したくなりました」
玲奈は信じられないと行った様子で驚嘆し、雫は黒いオーラを漂わせる。
「そっそんなに凄いのかよキューブって」
舞先生や種次なんかは凄くぴりぴりしていたが、カティナは楽観視していた。
師匠ならどんなダンジョンでもクリアできると。
今回、舞先生の指示の元、玲奈や雫に話した。
「いいですか、キューブというのは知ダンジョンレベル四十九、生還率一%、というのは知ってますか」
「なんか種次が言ってたな」
昨日種次が言ったことを思い出しカティナはキューブについて自分が知っていることを話す。
「そこまで知っているなら、なぜ事の重大さがわからないのですか。御影さんは学力の低さで0クラスに決定しました。それなのにどうして数々の学者クラス、知ダンジョンを得意としているものしか入らないダンジョンでクリアできると思えるのでしょうか」
「そうそう、補足いたしますが、レベル四十のダンジョンにはパーティー制限がありまして、キューブの場合は月一パーティーとなっております」
ようやく分かってきたのか、カティナの顔色が青くなり、焦り出す。
「って事は絶体絶命じゃんか、どーすればいーんだよ」
「本来なら諦めるべきでしょう。ですが私は御影さんに大きな借りがあります。できることなら最大限協力します」
「あらあら、同じく私も借りがありますし、風ちゃんもお世話になっていますので協力します」
「ありがとう! 玲奈と雫が協力してくれたら百人力だぜ!」
カティナは、もう成功したかのように顔を輝かせにかっと笑った。
カティナはパーティーメンバーのムードメーカー的存在で、単細胞だが、憎めない性格だ。
絶望的だが、こういうメンツがいると重くなった空気が和む。
正義感が強く優等生の玲奈と、冷静で理論派の雫、勘と熱血のカティナ、かれこれ十年来の親友だ。
カティナは信頼し信用していた。クラブメンバーや舞先生よりも。
二人なら、クラブや派閥は違うけど、昔みたいにきっと力になってくれると。
「御影さんを救う上でハードルになるのは三つです。一つは契約者の依頼解除と救助要請。これがなければ話になりません。癒杉教諭はなんていってましたか」
「それなら覚えてるぜぇ、確かフェリスの事を任せろっていってたな」
「あらあら、それなら第一段階は大丈夫ですわね」
雫はほっとするように頷き、玲奈も胸をなで下ろす。
舞先生はできないことは口にはしない。舞先生が任せろといったのなら何とかするだろうと。
「それでは第二段階です。キューブに行くために、最速でいける方法は五大派閥のうち三つの派閥の許可をもらう事です。一つは癒杉教諭の派閥からでると思いますので、私と雫で、学園長派とクラブ派に何とか掛け合ってみます。おそらく癒杉教諭との会談のセッチィングくらいになるかと思いますが放課後アポを取ります」
「私も今日、姉に掛け合ってみますね」
「ありがとう皆! これなら師匠を二、三日中に助けることができるなぁ」
明るい声で話すカティナに対し、二人は浮かない表情だ。
舞先生も玲奈も雫も種次も、『ここまで』なら代償を支払うができると思っている。
しかし最後の関門が日数的に厳しい。
「問題は第三段階です。それは・・・・・・」