明日こそは
読み流しても、深読みしても大丈夫です。
みんなが五時間目の算数を受ける頃、家で冷やし中華を食べる少年。すだれの向こうは蝉の声で騒がしい。
電話越し頭を下げる母。子は今日も具合が悪い。「お昼ご飯は冷やし中華を食べてね。」お大事には言わない。疲れ切った笑顔でドアを開け、会社へ向かう。閉まったドア。しばらく見つめて立ち尽くす。
朝シャンしながらの言い訳。明日学校に行く時をシミュレーション。チャレンジの、少ない課題を終わらせたら、パソコンのゲーム実況をBGMにソファで眠る。少しでも安心したい。どこへ行っても付きまとう背徳感など消し去ってしまいたい。そんな、一種の防衛本能が彼を自堕落な生活に閉じ込める。
寝違えた首を持ち上げて、白く濁った窓に近づく。彼は、窓の外から目を離そうとしない。まだ空は青い。木々の向こう。サッカーで遊ぶ一年生の姿が、いつか見た夢のようで。
今日も来た。空にやっと朱が差し、道にも同級生が現れ始める。彼はカーテンに隠れて今日もそれを観察する。
家の門に近づく女子が一人。身体中が熱くなる。彼は、被っていた毛布を直ぐに剥ぐ。心臓が高鳴る。来る。
身構える彼だったが、インターホンが鳴る事は無く、女子はそのまま帰っていった。彼は一人、天井の線模様を数える。
部屋はすっかり暗くなって、模様も見えなくなってしまう。父が帰ってきて電気を付ける。一気に部屋が明るくなった。彼は机の上に、見慣れない、カラフルで歪な紙を見つける。少し期待をしていた。クラスのみんなが自分の心配していることを。中身は期待通りの「はやくがっこうにきてね」
気になっていたあの娘の優しい言葉。嫌な奴の厳しい批判。名前じゃ顔もわからないクラスメートの心配。
嬉しかったはずが、読めば読むほどそれはプレッシャーへと変わっていく。ずっとクラスに居なかった異物というレッテルを貼られたくない。学校を避けていた理由を聞かれるのはもういやだ。彼には、与えられた言葉の全てが、建前にしか見えない。裏しか見えない。そして見つけた、仲が良かったあいつの応援。疑いようが無かった。文章を通しても聞こえてくるあいつの元気な声。その瞬間、たった数文字程度の気持ちで、彼は心が軽くなった。一回だけ信じてみてもいいと思った。
その晩は、久々に父と食事をとった。一緒に笑いながらテレビもみた。今日二回目のお風呂に入り、新しいパジャマに着替えて布団に入る。
「明日こそは」そう何度も繰り返した決意を、再び胸にし、眠る夜九時。
学校の課題で作ったので、せっかくだし程度に投稿してみました。きちんとした小説は初めて書いたので、まだ覚束無いところはあると思いますがお許しください。
最後まで読んでくれた方は、本当にありがとうございます。




