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 リーデハルトは人でなしの自覚がある人でなしであり、同胞にはとことん甘い災厄であった。その上で楽しさに負け面白さに負け自分に負けるのだから厄介な存在である。自重して。


「雪禍の嘆き」は全20階層からなる比較的浅めのダンジョンである。

 以前第一王子と使用人が日帰りで五階層まで潜るつもりだったダンジョン「魔草の応え」はレベル5でありながら全52階層まである代物だった。

 各ダンジョンごとに地形や配置が異なり、中には構造そのものが不定期的に変化するダンジョンもある。

 そのため難易度レベルが低いからといって下階層まで早く進めるわけではなく、一部のダンジョンには下階層へ進むために一定の条件をクリアしなければならないものもあった。


 その中で「雪禍の嘆き」は裏技を使えば三日もかからず最下層まで進める稀有なダンジョンである。

 その裏技というのがわざと薄氷の道を踏み砕き下階層へ落ちること。数十メートルの下階層へ着地するのにそのまま落ちれば大惨事は免れないが、飛行補助や空気圧縮を使い落下速度を遅くすることにより、無事着地出来るようになる。しかし着地した先も薄氷なので失敗すればまた落下することになり、最終地点はダンジョンボスの目の前。

 上階層に昇るためには階層を区切る階段を使わねばならず、裏技を使用してきた場合階段の場所を一から探さねばならない。

 うっかりするとダンジョンに入ってすぐにダンジョンボスとご対面である。そういった運の悪い冒険者の遺体はやがて凍りつき、粒子と砕けて消えていく。


「雪禍の嘆き」15階層。タンバとニワは息も絶え絶えで震えていた。おこした火で暖まりながら持ってきた食料にかじりつく二人へホットチョコレートを渡してやりながら、リーデハルトは持ってきていた冊子に情報を書き込んでいく。


 てっきり裏技を使って進んでいたのだと思っていたリーデハルト。階段を降りてからは延々薄氷を砕きながら進む二人の速度がえげつなかったので声をかけてみたところ、叫びながら否定の言葉が帰ってきたのだ。

 彼の目的はダンジョンボスのためそのままご対面しても構わなかったのだが、二人の精神衛生上良くないと判断し魔法を使った。道を厚くするための氷結魔法。速度を抑えるための飛行補助魔法。落下の衝撃を吸収するための空間緩衝。

 とりあえずそんなところでいいかと判断したが、タンバとニワの混乱は想定以上だった。現在状態異常治癒の薬草を混ぜた飲み物をちびちび飲んでいるようだが、今日はここで休んだ方が懸命だろう。


「すみませんハルトさん……全然役に立てなくて……」

「ただ叫ぶだけでしたし……モンスターとも合わなかったからほんと今日一日落ちただけ……」

 意気消沈する二人に何も気にしていないリーデハルトは殊更優しげな顔をしてみせた。

「全然大丈夫だよ。私の目的はダンジョンボスと宝物殿だからね。むしろ他のモンスターと戦わずに済んだから魔力も温存できたしね」

 二人のお陰だよ、ありがとうと微笑むリーデハルトにまた涙を浮かべ必死に頷くタンバとニワ。彼は本当に気にしていなかった。早めに帰りたいから。たった一日で残すところ五階。もはやボス目前である。


 裏技を使うにしても毎回上手く薄氷を砕けるとは限らない。運悪く氷が厚い箇所へ、落下した速度のままぶつかれば最悪赤い花と散るだろう。

 リーデハルトは無理矢理氷を割って落ちる方法を考えていたが、二人の運の良さか着地先は全て極々薄い氷の膜だったのだ。そのおかげでここまで驚異的な速さで簡単に辿り着き、リーデハルトは超ご機嫌である。

 グロッキーなBランク冒険者二人を尻目に、彼は職員の仕事を遂行すべくダンジョン内の情報を報告書へまとめていった。

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