出発の前に!
ラフィリアード家の双子の七歳の誕生日は、国を挙げての祝日となり朝から祝砲があがり、夜には花火も上がったが、この歳の誕生日は屋敷の中、家族だけで過ごすことにした。
翌日には留学の為、タイターナ公国へと向かう予定だからである。
ごくごく身内だけという事で、ラフィリアード家の曾お婆様と父母、母の実家のアークフィル公爵家のおじい様、おばあ様、そしてリミアの許嫁のティムンが招かれた。
「ジーン、リミア、学園への入学おめでとう!」
オレンジ色の髪と蜂蜜色の瞳のその美しい青年は双子達に満面の笑みで抱きつく。
「「ありがとうございます!」」
二人は、しゃがんでハグをするティムンに頬を紅潮させて返事をする。
本当に仲良しなのである。
「兄様、兄様お願いがありますの」リミアがティムンに上目遣いのすがるような目でお願いと声をかける。
「かっ…かわ…いや、何だい?リミア」思わずそのかわゆさに、口元を抑えてティムンが聞き返す。
「兄様、リミアは頑張って早く大人になりますわ!だから、社交界に出ても恋人とか作らないでほしいのです!婚約解消とかしないでほしいのです」
「ぐはっ…もう何言って…」
はわわ…と悶えつつ、うれ恥ずかしがるティムンに、リミアは真剣に訴える。
「真面目なお話ですの!」
「ははっ、わかったよ。大丈夫。僕はリミアの許嫁だからね?君が誰か他に好きな人が出来ない限りは、そんなに急がなくてもちゃんと待っている自信があるからね?」と穏やかに笑った。
その場限りの口約束…。
それでも今のリミアにとっては希望となった。
「「ほぉ(まぁ)」」と両親も微笑ましいものを見るようにリミアとティムンの様子を見ていた。
小さな女の子にも優しいティムンの対応は素晴らしく、周りの皆はにこやかに頷き合いながら、その可愛らしいやり取りに微笑む。
「リミアは、本当にティムンが大好きなのねぇ?」とルミアーナが笑った。
「うんうん、ほんとにティムンが相手なら安心なんだけどな」と父ダルタスも軽く笑いながら受け応える。
そんな両親の軽い言い様にリミアは少しばかりむっとしながらも
「お母様、私、ティムン兄様以外のところにお嫁にはいきませんからっ!」と言い切った。
そんなリミアのきっぱりとした言い様に『孫命!』のアークフィル家のおじいさまは大喜びである。
「よくぞ、言った!リミア!卒業したらそのまま我が家へ嫁入りしてきなさい!」
「ほんとね」とおばあ様も笑った。
この時は、皆、そうなればいいなぁ~くらいに微笑ましく思って皆が笑っていた。
ティムンもこんな事をいうリミアの事を純粋に可愛いなぁ~としみじみ感激していた。
(まぁ、大きくなって、それこそ学園で好きな男の子とかできちゃうんだろうな~?ちょっと寂しいな~…)などと思いをはせるのだった。
ジーンだけはわずか六歳の初恋の重さを真剣に心配していたが…。
そして翌日、リミアとジーンは旅だった。
供は人がたをとり従者に身をやつした精霊のリンとシンである。