公爵令息ジーンの回想
僕はジーン・ラフィリアード
ラフィリアード公爵家の長男だ。
もうすぐ七歳になる!
母は血族の姫で月の石…精霊の宿る聖魔法の源のような石の主と言われている。
血族って言うのはこの世界を創りし七人の魔法使いの血を受け継いだ者の事をいう。
王家は特に代々この血筋を残そうとしてきたから、その直系は、ほぼ血族なんだ。
だけど血族の『姫』は希少だ。
王家には何故か王女が生まれず王子ばかりだ。
国王の跡取りたる王子が沢山いるのはいい事だけど、精霊が仕えるのは血族の姫!それもその魂が最も美しく強い姫だ。
精霊たちが心から従うのは血族の姫の中でもたった一人だけ、そんな母をすごいと思うし尊敬もしている。
そして、そんな母に愛される父も凄いと思う。
ぶっちゃけ父は正直言ってモテるタイプではないと思う。
この国ラフィリルでモテるタイプは華奢で美しい男性だ。
頬に大きな傷があり目つきが鋭く体の大きな父は、この国の上品なご婦人方には恐怖の対象でしかないだろう。
それでも母は父の事が物凄く大好きみたいで父は幸せそうだ。
え?こんな事を淡々と考えている僕がわずか六歳の男の子っぽくないって?
それは、仕方がないかな…。
だって…僕には前世の記憶があるのだから…。
そう僕は、前世、デュローイ・アルデジオバロッサという魔法使いだった。
この国を創りし七人の魔法使いの一人…中でも一番の魔力と知識を誇っていた…って言うと何だか自慢っぽいが、そう言う事だ。
つまりはこの世界を創りし者…というかなんと母親のご先祖様の縁者…というか身内な訳で…。
この記憶は生まれた時に封印されるはずだった。
実際、生まれた時からつい最近までは綺麗さっぱり前世の記憶など忘れ去っていたのである。
この記憶がよみがえったのは、三か月ほど前の事である。
僕とリミアは、他国から忍んできた間者に攫われかけたのである。
僕は自分が生まれ変わるときに、一つだけ自分にかけた魔法があった。
一緒に生まれ変わると約束した姉のメデルエオーサが危機に瀕した場合のみ封印されし記憶が解除されるようにと…。
そう無くしたはずの記憶はよみがえり、僕が自らの魔法で間者たちを倒そうとした、その時だった。
母であるルミアーナが、月の石の精霊の助けを借りて現れ、女神どころか悪鬼のごとき凄まじい闘気を放ちながらあっという間に倒してしまったのだった。
父が駆けつけた時には、悪党どもは退治された後だった。
その気迫と圧倒的な強さに呆気に取られたものである。
いや、まぁそれでこそ生まれ変わる為に待ち続けた健康で健全で強く逞しい血族の姫!な訳なんだけど、いや逞しすぎだろう!と僕は仰天したものだった。
…生まれ変わる前の僕は魔力は膨大だったが、それに耐えうる身体を持っていなかった。
僕らは二十歳まで生きる事が出来なかった。
メデルエオーサが十九歳、僕が十六歳の時に自分の魔力の暴走を抑えきれずに死を迎えたのだった。
そして、体を失った僕と姉のメデルエオーサの意識は次こそ健康で膨大な魔力すら抑え込むことの出来る健康な体で生まれ変わる為の母体を待ち続けた。
魔力をもちそれを抑えるほどに強く逞しい魂と体をもつ我らの母に相応しい聖母を!
そして待ち続けた輪廻の中で見つけたのが血族の姫ルミアーナだった。
そして僕はメデルエオーサの魂を自らの魔法に閉じ込めて共に母ルミアーナのお腹に宿った。
ちなみにリミアの記憶は本当にまっさらだ。
メデルエオーサだった時の記憶はもう無い。
僕が願うのは姉の幸せ。
前世で僕を守る事に必死で、自分の幸せに無頓着だったメデルエオーサ。
僕の最後の時、弱った体は漏れ出る膨大な魔力を抑えきれず暴発し始めた。
それを抑える為にメデルエオーサは僕の命の尽きる時、共にその力を使い果たし生ける身体を手放した。
僕らの体は魔力に飲まれ霧散して形すら残らなかった。
世界を壊さずに済んだだけでも良かった…。
僕の記憶が覚醒したのは僕が生まれ変わるときに僕自身にかけた魔法。
すべては今度こそメデルエオーサを…可哀想な僕の姉の生まれ変わりを守りたいが為に…。
前世ではずっと僕を守り続けたメデルエオーサ…今生では僕が姉さんを守るからね…これは僕の前世からの誓いだから。
前世からの記憶に目覚めた僕は、姉の生まれ変わりであるリミアの幸せを、実の親であるラフィリアード公爵夫妻(父と母)と同じくらいに…いや、それ以上に願う守護者のようになっていた。
彼女の幸せこそが僕の望み。
そう僕は姉の幸せの為に姉が幸せになれるような親を選び、そんな両親の元に姉と共に転生したのだ。
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▼作者からの一言▼
やっと、子供たちのお話にきました。
子供たちの交遊や初恋、色々妄想が貯まってます。
毎日は更新出来ないかもしれませんが、気長にお読み頂けたなら嬉しいです。
※アルファポリスさんでも掲載中です。
あわせて宜しくお願い致します♪