09
百年前の私達へ。
未来を変える事が出来ただろうか。
貴方達が飛ばしたあの機械の様に、私も貴方達の世界からはじき出されてしまったよ。
今はどこともしれない時の中をさまよい続けるだけの存在。
正直に言おう。
妬ましさもあったが、私は尊敬の念も抱いている。
貴方達が発展させてきた科学技術はすばらしかった。
なぜなら、とっくに寿命がつきていてもおかしくはない私を、百年以上も生きながらえさせてきたくらいなのだから。
それだけ貴方達は本気だったのだろう。
本気で、心の底から、幸せになろうとした。
けれど、その努力の方向がそれと知らずにねじまがってしまった。
未来の不幸を、悲しみを生み出してしまった。
だが、だからといって
幸せになろうと力を尽くす事は罪ではない。
幸せを追い求める事も、それと同じ。
ただしょうがない出来事だったのだ。
それは、誰かを責める事でも、責められる事でもない。
ただ悲しいまでに、私達の動かす歯車が、知らない場所で、知らない所でかみ合わずにいただけの事。
私は消えかかっている。
歴史介入という禁忌を侵した私が帰る場所が、元の世界なのか新しい世界なのか分からないけれども、それがどちらの世界であっても私は受け入れよう。
私にできる事はすべてやった。
選択の結果を、見届けるだけである。