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――今という時代に目を背け続けたその代償で、生まれてくる子供達が苦しむような事があってはいけない。
今日という豊かな日々が無限に続くなんて、そう思うのはただのまやかしだろう。
永遠に続くものなどありはしない。
けれど、世界の流れは少々手を加えるだけでは変える事などできない。
例えば、終わりへと着実に歩みゆく世界の姿を、貴方が目にできたとして、個人である貴方にいったい何ができるだろうか。
大した事はできやしない。
人間一人の力など、たかが知れているのだから。
そうして世界が終わってしまって、苦しむのが自分達だけならばまだ自業自得で済む話なのだろうけれど、その苦しみを新しく生まれてくる者達にも味わわせてしまうのは、さすがに心苦しい。
例えその消滅が、人間とて全ての生命の一部であって、弱肉強食の理が支配する自然界の掟通りなのだと、そう言われたとしても。
私達が、私達の手で引き起こした流れの結末で、私達の次の世代の子供たちが苦しむ。そんな未来を知ったとしたら、私達は許容できるだろうか。
変える事の出来ない流れにある世界だとしても、せめて子供達の生きる未来の世界だけはどうにかしたい。
と、そう思うのはおかしい事だろうか。
私達が行きついた先の世界で子供達が苦しみ、
なぜこんな世界にしたのか、
なぜこんな世界を残したのか、
そう言って、彼等は過去の人間を恨みながら日々を過ごす。
私は、そんな生を与えたくはない。
だから、私はここから祈ったのだ。
どうか、最後の大人である私が、生まれて来た子供達に安らかな世界を残せない様な、そんな終わった世界にはしないでほしい。
百年前の貴方達へ。
私の祈りは、届くかな。