ワンピース
その日は風が吹いていた。
二階に住んでいた私は窓辺の風鈴が 静かになったので、風が吹かなくなったのかなと思った。風が心地よかったのに…。
そんな私が窓の外に目をやると 白に可愛い花柄のワンピースを着た半透明な女の子が 風に飛ばされないようにと帽子を手で押さえながら 隣のベランダへと スタスタと歩いて行っているのをまじまじと見てしまった。
隣は 行き止まりなのに。
少女は私には気づいていないようだ。
私は目が点になっていた。
それほどはっきりと見たことはなかったので見間違いかと思ったのだが、どうも違うようだ。
少女は壁に吸い込まれるように消えて行った。正直驚いた。
こんな体験をするなんて思っても見なかったからだ。その体験はその時だけ起きたことでそれ以降不思議なことは起きてない。
一体なんだったのだろうと今でも思う。