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72 お怒りモードは仕様です

キ「ちょっと、そんな話聞いてないわよ」

美「舞ちゃん、今まで黙っていたなんて酷い」

高「親戚って何だよ。じゃあ、前に宇津木が池上を連れて帰ったのって、お持ち帰りじゃなくて、本当に送って行っただけか」


ん? いつの話だ? それは? 思い当たるものがなくて首を捻る。


キ「えっ? 何よ、それ。私知らないんだけど」

高「ああ。あの時は大川(キャンの旧姓)が来れなかった時だったな。1件目の店を出て2件目に行く間に二人が消えたんだよ。次の日に池上からお詫びメールが届いて、具合が悪くなって送ってもらったときたけど、てっきり二人で」


と言いかけて私のジト目に気がついたのか、言葉を止めた。


舞「そ・れ・も、なんで今言うの? 次に会った時に訊けよ、バーロー」

キ「舞子、言葉つかいが・・・」


私はキッとキャンのことを睨んだ。


舞「今はそんなことどうでもいいでしょうが~! 一体いつからそんなふうに疑っていたのさ、高幸! あの時は私もう結婚していたんだけど! じゃあ何? 不倫しておきながら堂々と皆の前に顔出していたとでも思っていたわけ? というか、私がそんなこと出来る性格か考えろ!」


高幸だけでなく、キャン以外の皆が気まずげにしているから、あのあと私達がいないことに気がついて2件目の店でその話をしていたのだろう。


あの時、本当はそれどころじゃない話だったのさ。1件目を出る少し前に珪の所に電話があった。当時元気だった珪のお母さんからで、秀勝おじさんが病院に運ばれたというものだった。腹部に怪我をして緊急手術するとか。珪は顔に出さないようにしていたけど、動揺しているのがすごくわかった。私に先に帰ることを言付けて、珪は行ってしまおうとしたから、私も強引にタクシーに乗り込んだ。少し言い合いになったけど、私の祖母が甥(秀勝おじさん)のことを心配すると言ったら、ついていくことを許してくれたのよ。


病院についておばさんたちと合流して、何があったのか聞いた。酒に酔った男とぶつかり、軽く謝って素通りしようとしたら、相手が絡んできたそうだ。相手を宥めようとおじさんはしたようだけど相手は聞き入れず、最後にはその男が怒りだして掴みかかってきたとか。それをよけたらますます怒り、つかまれた手を払いのけようとして、もつれて倒れ込んでしまったらしい。そこにあった何かで怪我をしたと聞いた。


言葉を濁されたから分からないけど、もしかしたら相手の人はナイフを持ち出したのかもと考えたのよね。あの時は。結局、秀勝おじさんは病院に運ばれるまで意識はしっかりしていたし、手術後もすぐに目を覚ましておばさん達を安心させていたのよ。一応私は父にも連絡したからすぐに駆け付けてきて、目を覚ましたおじさんと話して安心して私と家に帰ったのよね。


そんなことを皆に言えるわけなかったから、私が具合が悪くなって珪に送ってもらって帰ったと、メールをしたんだよね。実際にいつもの風邪からの咳が抜けない状態だったから、皆は信じてくれたと思ったのに・・・。


不倫疑惑かよ。ケッ!


キ「ねえ、舞子。皆も悪気があったわけじゃないのよ。ちょっとした勘違いを拗らせただけで、ね」

舞「いーや、赦せない。確かにさ、私と珪が親戚なのを黙っていたのは悪かったけど、言おうとした時に聞いてくれなかったのは、皆だからね」

キ「それっていつのことなの?」

舞「えーと、私の結婚報告の前の飲み会の時」

キ「ええっ? 待って、意味がわからない。親戚ってそこまで分からなかったの?」

舞「そこら辺に事情があって面白い話だから話そうとしたのに、話し出したらいろいろ混ぜっ返されて話せなくなったの!」


またまたバツが悪そうに視線をさ迷わせる皆。


英「でもな、あの時に宇津木と二人で聞いて欲しいことがあるなんて言われたら、交際宣言かと思うだろ」

舞「もう一度言わせて貰うけど、ちゃんと話を聞けよ、このバカども! もし交際宣言だったとしても、聞いてから反対するなり祝福するなりしろ!」


そう言ったら、皆して俯いてしまった。・・・そういえば、さっきからこの場所に他の人が入ってこない。多分、私達の様子に入って来られないのだろう。なので、もういいだろう。


舞「という訳で、もう帰って」

皆「「えっ」」

舞「しばらくは飲み会や集まるのは無しで」

皆「「そんな~」」

舞「他の人の邪魔になっているから帰ってね」


私はそう言うと立ち上がって病室に向かって歩き出した。


美「舞ちゃん・・・」


美那ちゃんが呼びかけてきたけど、私は振り返らずに病室に戻ったのでした。


ベッドのカーテンを閉めてすぐに私は闘病日誌のノートを取り出すと、談話室での会話を書きだした。早くしないと忘れそうだった。


ざっと書いて「ホッ」と息を吐き出した。


うん。この会話は闘病記には書けないから別の会話を入れることにしよう。


もう一度内容を確認してノートを片付けると、私は水分を取ろうとしてハタッと気がついた。


「あ~、置いてきちゃった」


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