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52 言いなりになんかならないもん

・・・糖分が多いのかな?

モデルの人ならこれぐらいのこと軽くしていると思うけど?

隠すつもりはなかったと言っても信じてくれないかな。

最初はね、話すつもりだったのよ。

だけど、なんて言おうか考えている間に、言いだせなくなったのよ。

脳梗塞のことは言ったのよ。でも、右手の中指に残った痺れのことは言えなかったの。


などと考えていたら、頬を撫ぜていた手が顎の方に移動したのに気がついて、私は慌てて旦那の手を摑まえた。


「何をする気なのさ、旦那」

「言わなくても分かるでしょう」

「ここは病室なんだけど」

「カーテンで仕切られているから見えませんよ」

「少しは自重してください」

「自重しない人に言われても説得力はないですよ」

「意味が違うでしょ、意味が」


旦那が何か言おうとしたら「夕食をお持ちしました」という声が、部屋の入り口から聞こえてきた。「チッ」と舌打ちをすると、旦那は私から手を離してテーブル?を私の前に移動させてくれた。


その様子にホッとして箸を取り出そうと、横を向いたら頬に・・・。


おい! 旦那!


横目で睨んだらニッコリ笑顔を返されたよ。


「私は舞子さんの食事が終わったら帰りますから」

「・・・もう帰っていいけど」

「いえいえ。舞子さんが食事を食べられるということは、熱がない証拠ですよね」


そう言われて、私は頷いた。私は熱を出すとご飯が食べられなくなる。その食べた量で熱の温度の予測がつくくらいだ。ちなみに38.5度を超すとまったく食べられなくなるの。おかゆも駄目で、薬を飲むために葛湯を飲むか、おかゆをミキサーにかけてドロドロにしたものか、おかゆの液体部分を飲むくらいになるのだった。


夕食はちゃんと食べることができた。今日は厚揚げにそぼろあんがかかったものに、いろいろな野菜の和え物?みたいな物と、白菜と春雨と肉団子のスープだった。あとご飯にこんぶの佃煮がついていた。これを全部残さず食べられたことに、旦那は安堵していた。


食器を片付けて、ついでにエレベーターのところまで旦那を送りに行った。そこには誰もいなかった。


「舞子さん、退院したらどこか行きましょうか」

「う~ん。行きたいけど、無理でない?」

「そうですかね」

「だってさ、2月の土日は忙しいって言ってたよね。来週は総会があって、その次が旅行だっけ、部会の。その次は私が用があったはずだし」

「・・・そうでした。温泉に行ってゆっくり体を休めるのもいいかと思ったのですけどね」

「温泉・・・なんて魅惑的な響きなの」

「そうでしょう。・・・そうですね、では、部会の旅行を」

「はい、却下」

「どうしてですか」

「理由は言わなくてもわかるでしょう。それよりも退院したらお刺身食べたい」

「わかりました。ではいつもの大石で買ってきましょう」

「白身の魚が食べたいけど、今って何が旬なんだろう」

「舞子さんは白身をポン酢で食べるのが好きですものね」

「うん。昆布じめならなお良し」

「わかりました。退院した日に買いに行きましょう」


そう約束して旦那は帰っていきました。自分の病室に戻ろうと歩いていたら、待合スペースの所で立ち上がる人がいた。なんか複雑な表情をしているのだけどね、珪さんや。


「いつからいたの?」

「えーと・・・コメントは控えさせていただきます」


私の後を病室までついてきた珪に聞いてみたら、その答えがこれだ。


「ほお~。のぞき見してたのかスケベ」

「見てるわけないだろう。会話を聞いただけだよ」

「じゃあ、なんで目を逸らすのさ」

「いや~、相変わらず浩輝さんは舞のことを可愛がっているな~、と思っただけだよ」

「どこがさ。いじめられたでしょうが! 言葉じゃ勝てないんだから助けてよ」

「それをしたら藪蛇だろ。絶対これ見よがしにキスシーンを見せられるだろう。あんぐらいの脅しで済んで良かっただろう」


そう珪が真顔で言ったけど。


・・・おい! 本当にどこから聞いてたって?


珪は私の方を見て自分の失言に気がついたようだ。それから、わざとらしく咳をした。


「ゴホン、ゴホッ・・・。その、舞。熱を出したって? 大丈夫なのか」


白々しいと思ったけど、珪に八つ当たりしてもしょうがないから、その話に乗ることにした。


「微熱だよ。ひと眠りしたら下がったと思う」

「ほんとか?」


そう言って珪は手を私の額に当ててきた。


「珪君、いくら幼馴染みの親戚でもそれはないと思うな」


その言葉と共にのりちゃんの手が伸びて、珪の手を叩いた。


「のりちゃん!」

「舞ちゃん、先にね、体温を測ってくれるかな」


ニッコリ笑顔ののりちゃんは、今日はまだ白衣姿だった。私は素直に体温計をわきの下に挟んだのさ。


「今日は私は夜勤だからね、舞ちゃん」

「それはお疲れ様です」


のりちゃんに軽く頭を下げておく。


「ううん。それよりも話しができないほうが残念よ。・・・熱は下がっているわね」


体温計がピッと鳴ったので取り出して、のりちゃんに渡したらそう言われた。たしかに36.8度まで下がっていたけど・・・。でも、普段よりまだ少し高いけど・・・。イヤイヤ、これは誤差のうちよ。うん。


「食事は全部食べられましたか」

「はい。全部食べました」


それからいつもの看護師さんとのやり取りをして、のりちゃんは他の人の所に行ったの。


「珪君。用がなければ、早く帰ることを勧めるわ」


という言葉を残してね。



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