46 悪友襲来!・・・ではなくて呼び出しよん
おー、次の山場が近づいてきたかな~。
息子がまだ言い募った。
「いや、だって変態クソ親父がすることだろ。それくらいはするんじゃないかと思ったんだけど」
「いや、だから、なんで尚人の認識はそうなの?あなたのお父さんはアブノーマルな趣味は持っていないから」
「じゃあ、なんでお仕置きなんていうんだよ」
「いや・・・それは・・・」
ごめんよ、尚人。お母さんが不用意な一言を言ったせいだよね。
「ねえ、前にもなんかやらかしてるの?それで親父にお仕置きされたんだ」
「あー・・・だから、夫婦の問題なんで。その・・・気にしない方向でよろ!」
ニッコリ笑顔で言ったら、尚人に睨まれた。
「気になるっつーの!」
うん。ダメか~。
「もういいよ。言いたくないなら。その代わり今回は庇ってやらないからな」
諦めたのかそっぽを向いて不貞腐れたように言われました。・・・ん?不貞腐れた?珍しいのぉ~。ポーカーフェイスが得意な尚人が。こんな子供っぽい態度をするなんて。
・・・だけどね、すまんね尚人。さすがにお前には言えんよ。
「それじゃあ、俺も帰るよ」
「あー、来てくれてありがとう」
「・・・親父に泣かされても知らないからな」
「大丈夫。泣かされはしないから」
もう一度尚人は私のことを睨むように見て帰って行ったのさ。
その後は、今日は誰も来なかった。旦那が顔ぐらい見せるかと思ったけど、逆に私の不安を煽る気なのか来ないようにしたようだ。
なので私は心おきなく、闘病記の続きを書いたり本を読んだりして、大変満足して眠ったのだった。
翌2月3日金曜日。今日もいつものように5時半に目が覚めた。入院してから21時消灯で眠るという規則正しい生活。おかげでいつもより睡眠時間がとれている。
とれているのだけど、入院前は眠るのはいつも23時を過ぎていた。いや、体調が良かったときはかな。だから、寝過ぎで今朝の気分はなんか変に思ったの。7時間寝ただけでこれってどんだけ~、睡眠が少ない生活に慣れているのさ。
・・・アウッチ。いつもは4時間半から5時間半の睡眠時間だと~。計算するんじゃなかった。
また、枕元の灯りをつけて闘病記の続きを・・・書き書き・・・。気がついたら6時20分。朝食の時間まで、いつものことをしてテレビを聞き流していたよ。
朝食を食べ終わって、歯を磨いた。看護師さんから、今日はMRIと視力検査と野村先生の診察がありますと言われたよ。だから、それまでもう少し元の方を書き書き・・・。
検査が終わってから内科の外来の方に行ったの。孝一先生と顔を合わせたら、一瞬顔を引き攣らせたのは見逃さないぞ。・・・誰に何を言われたのやら?
孝一先生からは変更(薬の事)が出来た関係で、来週の金曜、つまり10日退院の予定だったのが8日水曜日になりましたと、言われたの。
よっしゃー。と小さくガッツポーズをしたら、それを見られて、微妙な表情をされたのさ。
心軽く病室に戻り、元帳に今のことを書いておく。昼食も美味しく全部食べたよ~。今日は中華調。八宝菜とゴマ油の香りのワカメスープ。春雨サラダも出るのね。・・・でも相変わらず薄味ね。残さず食べれたから、体調もかなり良くなったとみた。
食器を片付けて、歯磨きをした。今日は約束したあいつが見舞いに来るはずだから、ソワソワと待ちきれない。この病院の面会時間は午後の1時から。あいつのことだから、きっかりにくるだろう。洗面スペースの鏡で髪が跳ねていることに気がついた。ベッドに戻ってブラシで髪を梳かし、ゴムで邪魔にならないように縛っておく。ブラシを片付けてノートを3冊広げて少し見直した。
「舞~、来たよ」
その声に顔を上げた。
「待ってたよ~。座って、座って~」
私の言葉になぜか苦笑いを浮かべて椅子に座ったの。
「はい。一応お見舞い」
差し出されたのはカード。 ?となりながら受け取った。それはテレビカードだった。病室のテレビや冷蔵庫はそれで動いているんだね。そのカードを差し込むと数字が出るの。テレビを見たり冷蔵庫を使うと数字が減っていくのよ。確かにそろそろ欲しかったからちょうどよかった。
「ありがとね」
「いえいえ。でもさ、本当に入院しているんだね。携帯も持ち込まないって聞いてたけど本当?」
「モチロン!」
「ところでさ、なにで入院しているの?」
相変わらずの台詞に私の口元にも苦笑いが浮かんだ。
「もしかして私、言わなかった?」
「メールに書いてたけど、出来れば舞の口からちゃんと聞きたい」
真面目な顔で行ってきたけど・・・おい。目が裏切ってるぞ。相変わらず演技が下手だな。
「で、真意は?」
「なんか面白いことになってそうだから、どうなったのかと思ってさ」
「じゃあ、メールちゃんと届いてたんだ」
「というか、あんなこと言い逃げして入院するなよ」
「いいじゃん、レイ君と私の仲じゃん」
ニヤリと笑ってやったら、途端に嫌そうな顔をした。
「・・・そのレイ君って呼ぶのやめてよ」
「え~、じゃあ玲君でいい?」
「・・・それもやめて」
「いいじゃん。かっこいいから、その呼び方にしようよ~。私とリエの仲じゃん」
「だから、それを公言されると、うるさいのがいるでしょう!」
心底嫌そうに悪友のリエは言ったのだった。




