45 子供扱いを嫌がる子供たち
会話の方向性がおかしい気がするのは、これ如何に?
私は娘の頭に手を乗せて撫ぜようとしたら、娘に立ち上がられてしまった。
「お母さん、私は子供じゃないのよ」
イヤイヤ。十分子供ですがな。
「母さん、それを言っちゃだめだろ」
息子がコンビニの袋を持って顔をだした。ミネラルウォーターとお茶と紅茶の無糖が2本づつ。
「でもさ、尚人も夏葉も私のかわいい子供よ」
「母さん・・・真顔で言うなよ」
あら、珍しい。尚人が照れてるわ。夏葉も照れているけど、素知らぬ振りで持ってきたパジャマやタオルを仕舞っていたの。
「ところでキャンはどこに?」
「1階のスターにいるよ」
「あー、気を使わせたか」
「ううん。稀莎ちゃんたちも付いて来たから、下でおやつを食べているのよ」
ほう、ほう。ちゃんと母親しているじゃん、キャンってば。でも甘やかしすぎてないよね?
「だから長居は出来ないのよ、お母さん」
「うん。わかった。家で困ったことない?」
「えーとね、昨日由紀さんが鶏の照り焼きを差し入れてくれたの。今日は亜矢子さんがとんかつをお裾分けしてくれて、夕飯は困らないのね」
・・・って、困ったような顔で言わないでよ、娘~。・・・でも、本当に差し入れしてくれているんだ。
「ちなみに明日はワカサギの南蛮漬けが来るそうだ」
「えっ?もう決まっているの?」
「らしいぞ。それで月曜は鮭のムニエルで、火曜は豚肉のなんかで、水曜は鳥肉のなんかって言われた」
「え~。もう来週まで決まっているんだ。何してんのよ、由紀さんってば」
「まあ、母さんの人徳ということで」
「他はどうしてるの」
「そこは適当にしているから、気にしないでよ母さん」
「そうよ。私だってお味噌汁くらい作れるし」
「うん。そこは心配してない」
だからさ、嬉しそうな顔はいいけど、なんで視線を逸らすのよ尚人。夏葉も顔を赤くして喜ぶって何?
「おにいちゃ~ん」
「うん、夏葉。この親の元に生まれたんだ。仕方ないよな」
「私、変な事言った?」
そう言ったら二人してがっくりと肩を落とされた。
「だからさ、母さん。信頼しているのかおちょくっているのか、分からない態度はやめてくれよ」
「あのね、尚人。子供を信頼しない親はいないのよ。二人とも私には勿体ないくらいデキた子供だと思うもの」
真顔で言ってやったら、二人して顔を赤くしていた。
フッフッフッ。いいもん見たな~。息子が赤い顔をするなんて何年ぶりのことやら?
「話は変わるけど、この本を持っていってくれる。読み終わったから」
リ・・・を2冊渡した。
「あー、じゃあ、明日持ってくるよ。次の奴」
「うん、よろ~」
時計を見て娘がなごり惜しそうにしながらも、キャンたちを待たせているので渋々腰を上げたのだった。まあね、幼稚園児までいたんじゃ長居しようって気にはなれないか。
「連れてきてくれてありがとうって、キャンに伝えてね」
「うん。次は土曜にくるね」
「待っているよ、夏葉」
嬉しそうに笑って夏葉は病室を後にしたのであった。
「それで、なんで尚人はいるの?」
「いいだろ、別に。もう少しいたって」
椅子に座って私から視線を逸らしているけど、照れが見えるぞ。
「ほっとけよ。・・・じゃなくてさ、昨日クソ親父が来ただろ」
「・・・来たよ」
「なんか言ってた?」
「・・・言われたけど、夫婦の問題?・・・かな?」
「やっぱりか~」
と、息子が溜め息を吐いた。
「ごめん、母さん。あいつに余計なことまで話したよな。てっきりすべて知っていると思っていたからさ」
「あ~・・・そこは気にしないように。話さなかった母も悪いから。というか父親の事あいつはないでしょう」
「クソ親父はいいの」
「親父が入っているからいい」
「母さんのその感覚が判らない」
フッ。私の感覚について来れたら上級の変人になれるぞ。
「だから母さん。そこでおちゃらけるなよ!」
「尚人くんや、真面目に話すと重くなるんだけど」
「もうやだ。というかなんで話してなかったんだよ。一昨日の、先生方の会話を親父に話したら、親父怒ったあと落ち込んでたんだから」
はあ~?・・・ということは、あれはその反動の脅しですか・・・。
「ねえ、退院したくないって言ってもいい?」
「そこは自業自得ということで」
「じゃあ、夏葉としばらく一緒の部屋で寝る方向で!」
「何の解決にもならないだろ。それよりなんで黙ってたの。やっぱりいいずらかったの」
「いや、単純にいう気がなかっただけ」
「・・・それ、親父に言うの」
「言うわけなかろう。お仕置きが怖いもん」
「・・・お仕置き?どんな?」
「・・・黙秘します」
「母さん、想像煽るようなこというなよ」
「・・・ちょっと、何を想像したのさ」
「いや・・・さすがに口に出すのは憚られるというか・・・」
微かに頬を赤くして言い淀んだけど。・・・息子よ、お前が想像したことと、実際はずいぶんかけ離れているからな。
「尚人くん。その考えたこと90度はズレているからね」
「えっ?まさかロープで縛るの」
「ちょい、待て~い。なんでロープが出てくる!」
息子よ。健全に育ったと思ったのに、何でアブノーマルな知識が出てくるのさ。お母さんは君の友人関係が心配になったんだけど、どうしてくれるのさ!




