40 好きな人の話は本人に聞かれたくない!のに
えーと・・・。
甘い・・・です。
「えーと、舞ちゃん。理想の人がいないってなに?」
「言葉通りなんだけど」
「えっ?だって結婚しているのよね。子供もいたのよね。・・・じゃあ、妥協したって事」
「妥協とは違うよ。旦那といると安心するの。一緒に生活するなら平穏がいいよね」
ウンウンと私は頷きながら言った。
「ついでに言うとこいつの理想、伊集院少尉だから」
「違う。私の理想は・・・あれ?誰だっけ?」
「忘れたのかよ」
「う~ん。オスカル様、じゃないし、ハーロックでもないし、ラインハルト様も違うし。シャアでもないし。光源氏はどちらかというと嫌いだし。ユーティでもないし。ディーンは節操なしで、藤臣君かな?でも無口だし。・・・まあ、とにかく現実にはいないのよ」
「舞ちゃん。舞ちゃんは拗らせ女子なの」
「いや、何も拗らせてないから。ただのアニメ漫画好きなだけだから」
「オタクじゃないの」
「オタクだなんておこがましいもの。そこまで一つの作品に傾倒してないから」
「えーと、えーと。じゃあ、旦那さんのことはどこが気にいったの?」
あ~、それを聞くのか~。素直に答えると誤解を生む気もするけど・・・まあ、いっかぁ~。
「声」
「えっ?声?」
「そう。声のトーン落として耳元で囁かれると、もう~、腰にくるというかね」
のりちゃん。残念な子を見る目で見ないで!
「・・・まさかの声フェチ?」
「ん~?そうなのかな?そうかもしんない」
「おーい、舞。その前に浩輝さんの包容力なんだろ、気に入ったのは。年上の余裕で甘えさせてくれるって惚気たの誰だよ」
「でも、声も好き。だってね、日本人て声が高い人が多いじゃない。私低めの声が好きなんだよね~。声優さんも大塚明夫さんや森山周一郎さんとかが好みなのよ。そこまでとは言わないけどゾクゾクするくらいにはいい声しているよ」
「だけど舞は王子様声も好きなんだよな」
「別に王子様声が好きなんじゃなくて、作品とキャラに声があっていれば文句はなかったけど」
「舞ちゃん、話しがずれてる」
あれ?でも、まあ、いいか。
「えーと、元に戻すと・・・どこになるの?」
「だから、浩輝さんのどこが好きかだろ」
なんか珪が疲れて見えるのはなんで?
「でもさ、珪がいま言ってくれたじゃん。私より大人で包み込んでくれる感じが好きだし、少しトーンを落として囁いてくれる声が萌えるとかよ」
「それはありがとうございます」
はい?この声は・・・!
「えっ?旦那?」
「はい。舞子さん」
ひょっこりと顔を出したのは旦那です。
「なんでいるの?えっ?今日も忙しくて来れないって尚人に聞いたけど!」
「頑張って片付けました」
ニッコリと笑う旦那に、聞かれていたのかと思うと顔に熱が集まってきます。
「えーと、ちなみにどこから」
「聞いていたかですか。旦那さんのどこが気に入ったか、からです」
・・・バッチリ聞かれてたじゃないか~!
「舞ちゃん、顔真っ赤」
言わんといて、のりちゃん。
「浩輝さんも人が悪いですね」
「何がですか、珪一くん。楽しそうに話をしていたので、邪魔をしないようにしただけですが」
澄まして言うなや、旦那。・・・絶対確信犯だ~!珪が悪いけど。珪が悪いけどさあ~。のりちゃんで遊ぶから。でも、ここで威嚇しないでよ。
「えーと、舞子さん。看護師さんとお知りあいですか?」
「う・・・うん。偶然にも幼馴染みなの」
「それはそれは。舞子の夫で池上浩輝といいます。以後お見知りおきを」
「あっ、はい。矢橋乃梨子です。よろしくお願いします」
・・・旦那。のりちゃんも毒気を抜かれたじゃん。
「あの、私、そろそろ帰ります」
「あー、私のことは気になさらずに」
「いえ。面会時間も少ないですし、舞ちゃんと話しがあるでしょう」
「ああ、じゃあ、俺も帰るわ。また来ます、浩輝さん」
「お見舞いに来てくれてありがとう、珪一君。矢橋さんもありがとうございます」
・・・その笑顔がわざとらしいんだけど。
のりちゃんと桂は礼をして帰っていったのさ。
二人になりました。・・・旦那の笑顔が怖いです。
ビクビクしていたら、旦那が私のことを見てきて、溜め息を吐いていいました。
「すみません。まだまだですね。人間が出来てないです」
「そんなことないの。あれはのりちゃんと会えてはしゃいだ珪が悪いの」
そう言ったら、旦那に左手を握られました。・・・というか、私の左手を持って両手で揉んでいるんだけど?
「いいえ。分かっているのに嫉妬してしまいましたから」
・・・ちょっと、旦那。いきなり何言うのよ。それに声のトーン落とさないでよ。もう~、心臓に悪いじゃない!?
そっと旦那の顔を見たら、人の悪い笑顔を浮かべているんだけど・・・。
椅子に座っていたのを立ち上がって、顔を近づけてくるから横を向いたら・・・。
「舞子、愛してますよ」
耳元で囁かれました。それも、私の好きな低めのトーンで。
そっと私の頭を抱え込み、止めの一言を言われました。
「顔が真っ赤ですよ。本当になれない女ですね」
うっさい!解っているわよ!
・・・これも、それも、珪のせいだ~。
バッカやろう~!




