32 見舞客、襲来?
今話からまた、ボケ会話に突入しま~す。
・・・ボケているよね?
私の治療の方針は変更なしということになりました。
先生方とのりちゃんが病室を後にして、私はノートを出してまた今の出来事を箇条書きに記していった。点滴のおかげなのか、はたまたひと眠りしたからなのか、頭は朝よりクリアーだ。起きているのも苦じゃない。
書き終わって本を取り出した。リ・・・の続きの8巻目。いつもの癖の斜め読み。おっと、ここは飛ばしちゃマズイ。かなりのハイペースで読み終わった。9巻目を取り出そうか迷ったけど、少し疲れたかな?時計を見たらもうすぐお昼だ。トイレに行くためにベッドから降りてスリッパを履いて立ち上がった。
・・・よし。ふらつかずに立てた。まだ点滴中だからコロコロと動かしながら、部屋を出ようとしたら、看護師さんと目が合った。
「・・・何をしているんですか、池上さん」
「えーと、トイレに行こうかと」
「呼んでください!」
速攻でそばに来た若い看護師さんに怒られました。彼女に付き添われてトイレに・・・。
部屋に戻るまで一緒にいてくれました。すまんです。
お昼は・・・おかゆに・・・えーとペースト?ですか。白身の焼き魚のはずがミキサーにでも掛けられたのかな?ドロッとしてます。野菜・・・これもミキサーの処理済み。スープ・・・具は?どこに消えたのでしょう?・・・というか、相変わらず味薄っす~!
スプーンですくってチョイチョイと食べました。四分の一食べていればいいところかな?
ん?点滴が終わっていたではな~いですか~。看護師さ~ん。
って、あの~、自分で片付けますから~。食器は!ついでって・・・泣いていいですか。
そんな感じで昼食後の問診?熱は・・・あれ?37度超えてる?
・・・気のせい、気のせい。37・3度なら微熱よ。うん。
そういえば朝は歯をみがいてなかったと思い出し、歯ブラシを持って洗面スペースへ。・・・口の中がスッキリしました~。
うふふっ。よっしゃー、調子が出てきた~。これなら誰が来てもちゃんと対応出来るだろう。
うん。弱気な私は私じゃない!
ベッドに戻りテレビをつけて横になる。ワイドショーを聞きながら、相変わらず事件は起こっているんだな~と思いながら目を閉じた。
「・・・する。寝ているよね」
「そうだね。起こさないように帰る?」
「あー、でも、みんなから預かったこれが・・・」
「私がまた来るよ」
ん?誰の話し声?
目を開けたら、女性が2人立っていた。・・・って、由紀さん!
ガバッと起き上がる。・・・というか寝てたんかい、私。
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
「違う。起こされたんじゃなくて、寝るつもりがなかったの」
「なぁ~にを言っているのよ、池上さんは~」
柔らかく笑う由紀さんと梅さん。・・・ん?梅さん!
「えー、なんで梅さんが~?」
「何でってお見舞いに決まっているでしょう。連絡もらってびっくりしたのよ。駄目じゃない。身体は大事にしないと」
「・・・なんかさ、それってさ、無理した事、前提よね」
「実際無理したんでしょ」
断定されたけど今回は違うのに~。この梅さん。息子と同い年の娘さんがいるママさん。小6の時に同じクラスになって、由紀さんを介して仲良くなった。だけど、娘さんが中学は別のところに行ったから、少し疎遠になっていたの。
「だって顔色が白い」
まだ、顔色が悪かったのね、私。・・・じゃなくて!
「あー、それねぇ~、夕べ眠れなかったのよ」
「眠れなかったって、枕が変わるとダメな人だっけ?」
「うんにゃ、眠れるよ。なんかさ夢見が悪くてさ、一度目が覚めたらその後眠れなくなっただけなのよ」
「本当に~」
そんな疑わしそうに見ないでください!
「まあまあ、梅ちゃん。それじゃあ、長居しない方がいいでしょ」
「そうだね。退院したらランチに行こうね、池上さん。中華粥のおいしい店に行こうよ」
「もしかして、クーファン?私、あそこに言ったことないの~」
「そうよ。じゃあ約束ね~」
「うん」
「あと、これ」
差し出されたのは・・・紙袋。その袋は・・・。
「えっ?もしかしてルピシアの?」
「そうよ。池上さん紅茶好きでしょ」
受け取って中を覗いて・・・おい。いったい何人に話が回っているのさ。
「一応、名前はそこに書いてあるけど、一人300円しか徴収してないから、お返しは要らないからね」
「ねえ、私さぁ~、お見舞い金もお見舞い品も要らないって言ったよね」
「聞いたけど・・・諦めようね、池上さん。それより退院したらそれを使ってお茶会しようよ。もちろん池上さんのお菓子つきでね」
有り難いけど・・・有り難いけどさ。そんなにいっぱい家に入れな・・・くはないか。
「うん。了解。シフォンケーキ祭りでもする?」
「あっ、じゃあ、私はキャラメルがいいな」
「私は抹茶ね~」
楽しそうにいう2人と、退院後の約束をしたのさ。そしてすぐに2人は帰って行ったのね。ちょうど、入れ違うようにまた2人連れの女性が現れたのよ。
「来ちゃった」
軽く首を傾げながらそう言ったのは、高校で一緒に役員をしている彩未さんと友利さんだった。




