1 始まりは・・・年明けと見せかけて、もっと前!
穴があったら入りたい・・・
ないから、かわりに書いてみました。
事の起こりは新年早々に風邪をひいたこと。
毎年のこととはいえ、今年の風邪は咳がひどくて参りました。
それも1月下旬になれば何とか落ち着いてきた頃のこと・・・。
「今日は24日か~。もう、1月も終わっちゃうわね。年々月日が経つのが早く感じるけど・・・年を取ったからとは思いたくないわね」
そんな独り言をいいながら舞子さんはパソコンを開いていた。旦那と子供が出掛け家事もひと段落し、自分の時間とばかりに小説の続きを書こうとしていたのでした。
「その前にメールと連載のチェックそれから新作と・・・。それにしても、今年はいい誕生日だったな~。クフフ。なろう作家さんとかなりお知り合いになれたし、お祝いの言葉までいただいちゃったし。楽しいからまた歌詞をモチーフの短編を・・・。ん? 痛い?」
頭というよりこめかみの辺りが痛い気がする。だけどいつものことだしと、あまり気にせず作業を進める。メールを一通書いて送り、ホッと息を吐き出して・・・。
「アダッ・・・いだい・・・痛い、いたい、痛い!・・・なんか、やばいかも。・・・痛い!いつもと違う・・・気がする。・・・おっちゃん先生に連絡しよう」
診察券から電話を掛けた。
『はい、こちら野村医院です』
「えー、池上舞子です。お世話になってます」
『池上さん?どうしました。先生に変わりましょうか』
「出来れば・・・お願いします・・・ウ~」
『大丈夫ですか?・・・先生、池上さんが~』
『電話変わりました。どうしたの舞子さん』
「頭が痛いです・・・いだい。・・・先生~、いつもと違う気がします。すぐそちらに行くので見てください」
『舞子さん、こちらに来ないで、すぐに総合病院に行きなさい。こちらから連絡しておくから』
「いや・・・そこまでは・・・」
『舞子さん。頭痛はもう今年2度目ですよ。すぐに行ってくださいね』
「・・・はい」
ということでタクシーを呼んで、急いで総合病院の診察券とお金を余分にもって上着を来て外に出た。
・・・あっ、家の鍵!
慌てて戻り鍵をとってきた。鍵をかけたらちょうどタクシーが来て乗り込んだのだった。
病院から家に戻り一息ついた。大好きなハーブティー・・・ではなくて、めんどくさいからお湯を注ぐだけのインスタントティーのミックスベリーを入れて飲んだ。
はあ~。どうしよう。・・・いや、どうしようではないか。まずは旦那に連絡して、子供達の学校には連絡・・・。あっ、息子のほうは役員しているからその連絡も・・・。それから・・・。
あっ!おっちゃん先生に文句を言わないと!
車の鍵を持ったものの、運転は怖い。目がね、ちょっとまずいよね。
なので歩いて20分の野村医院へとテクテクと歩いて向かった。
医院に着いて受付へ。顔なじみの吉田さんが驚いた顔をしている。
「池上さん、なんでここにいるんですか?すぐにも入院するはずじゃないんですか?」
「吉田さん。なんでそれを?というか、月曜からにして貰いましたけど」
「月曜から~?先生~。池上さんが困ったちゃんしたみたいです~」
なんだ、そのセリフは~!
この言葉に顔を出した、おっちゃん先生に手招きされた。
確かに今は患者さんが切れたみたいだから、話しをするのにちょうどいいだろうけどさ。
奥の診察室に案内をされて、椅子に座って向かいあった。
・・・と、思ったら、もう一人顔を出してきたよ。
まずは先手必勝とばかりに私は口を開いた。
「先生~。月曜から入院してきま~す。出来れば入院しないで、通院の点滴だけですませたかったのに、何してくれるんですか~」
「それはね、舞子さんが無茶ばかりするからだよ。言ったよね、僕。お婆さんやお父さんが血栓出来やすくて、気をつけないと脳梗塞や下手すると心筋梗塞になるよって」
「だからって、川谷先生と結託しなくてもいいでしょ。ついでに眼科の検査ってなんですか!」
「だって舞子さん、症例的には珍しいもの」
グウ~。やはり病気のことでは症状に詳しい先生には勝てないか。
というか何ですか?珍しい症例というのは?
「先生。私が入院したら家が困ります。洗濯も料理も犬の散歩も猫の世話も、すべて私がしているんですよ」
「子供を二人も産んでるでしょ。その子供も高校生と中学生なら何とかなるでしょう。この際家のことは忘れてゆっくりしてきなさい」
穏やかに言うおっちゃん先生。
クウ~、やっぱり口じゃ勝てないか。
「それでも、明日から入院しろって言われたのを月曜まで伸ばしただろう、池上は。飯尾先生ぼやいていたぞ」
「うるさいな~、野村は~!というか何で知っているのよ」
「俺、午前は総合病院にいたんだよ。飯尾先生が親父と話したって俺に連絡がきたのさ。とりあえずは入院まで毎日点滴に通うことで妥協したとか言っていたけどな」
・・・チッ。今日はこいつが当番の日だったのか。診療科が違うからバレないと思ったのに!
「大体いろいろ甘くみてるから右手の中指に、痺れなんてものが残ったんだろ。丁度いいから全身検査して貰えよな」
「・・・」
「返事は?」
「へいへい」
むくれたまま返事をしたら、おっちゃん先生とその息子で同級生の孝一に笑われたのさ。