お茶とガイとイケメソと
授業終了のチャイムと同時に、俺は拳を握る。
力が溢れて小刻みに揺れる拳を、抑えることはできない。
50分、そう50分もの間踏ん張ったのだから。
そして、高らかに宣言する。
「飯だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
心の中で。
小さい頃から独り言は多かった。
しかし、中学に入ってから独り言はどこかへ行った。
だって、独り言が漏れた時すげー目で見られるし。
現実は小説より奇なりと言うなら、自分は奇妙でも仕方ないよね。
クラス替えで、数少ない友人と区分けされて早くも一ヶ月。
立派に1人弁当食べれるようになりました。
最初はもちろん恥ずかしいというか、情けなかったけど今は1人で良かったとまで思うようになった。
女体盛りで昼めし食ってみてぇ。
考えるだけでめちゃくちゃ興奮してきた。
「あぁっ!」
聞きなれない男子の声を認識したと同時に、足元が幼児用プールみたいになった。
幼児...幼女...全く最高だぜ!
「あー!ごめんごめん!」
いや、いいんだ。
幼女が悪いんじゃない。
幼女を"使用"した俺が悪いんだ。
「すぐ拭くから、ね!ごめんごめん!」
大丈夫だ。問題ない。ティッシュなら常に装備している。
てか出てねーよ。
そんな俺に構わず、足元のお茶を雑巾で男子が拭く。
床にこぼしたお茶を何のためらいもなく、せっせとせっks...違う、そうじゃない。
床に這いつくばって、ためらいなく俺の足元を拭くなんて...。
傍からみるとやらしいだろう。
角度によっては気持ちよさそうにも見えるだろう(意味深)。
それにしても男の拭きっぷりには感心する。
奉仕心を感じる。メイドの素質あるのでは?
ここで俺が「君、ウチで奉仕してくれないか」なんて言ったら「DK(男子高校生)メイド」なんて話が始まりそうだ。
きっと、男の固い(本格的)友情アニメになるだろう。
いかんいかん、俺はゲイじゃねぇ...俺はゲイじゃない...俺はゲイデハナイ...俺はゲィ...?
「ガイー?何やってんだー?」
この声は...
学年でも上位キャラとして位置付けられてる「村上優希」殿ではないですか。ちなみに話したことない。レベル差ありすぎ。
そんなイケメソ・理系トップ10・競歩3位が何故、昨日のイベントでギリギリボーダーライン越えなくて推しキャラのGカード3枚取りできなかった俺に向かって呼びかけてんだ?ちなみに微課金。
「ちょっとお茶がねー」
足元の男子が殿に向かって返事をした。頭が高...!くないか。
「お前っ!こんなとこで失禁するなんて...どんなプレイしてたんだ?お父さん怒らないから言ってみなさい」
なん...だと...。
殿はイケメソな上に、お下の話の話もできるのか!
ちなみに今「上に」と「お下」をかけてるんだからね?
山田君もっと座布団くれていいのよ?
「お茶って言ったじゃん!なんでそーなるの!?」
「あのさ、なんでガイって呼ばれてるん?ハッ...!」
しまった!俺としたことが!何故話しかけたんだ!言え!
「え、ええーっとぉー...」
こまるガイ。
「実はこいつ☆ゲイ☆なんだよ!(爆笑)」
!?
じっちゃんの名にかけて俺の頭に衝撃が走った。
「でもそれと"ガイ"に何の関係が?」
「こいつ、小学生の時にゲイってことを告白して来てな。その時こい【僕、実はガイなんだ...】って言ったワケ。"GAY"を"ガイ"って読んだんだ。それが面白くって...。」
小学生でGAYを自覚って...
歪みねぇな。
「それ聞いてビビんなかったのか?」
「まぁビビったけど、俺は射程距離外だったらしくな。安心した。」
俺なら不安持ち続けるけどな...
「もう、それくらいにしてよ!」
ガイ君カリカリしてるお。
「あ、あの...ガイの本名は...?」
「よ、吉田、い、樹です」
「俺はいいのか?」と村上。
「いや、知ってるのでいいよ」と俺。
村上が下ネタかました時から、雰囲気軽く見えてきたからこんな感じでいいか...。
「あ、お前は何て名前なんだよ」と上乗せ村上。
「俺...俺か...」
俺の名は..
「俺は里見真一【さとみしんいち】。」
探偵さ。
もちろん嘘。