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まことりお。おもり編


「りおちゃー、わんわんこっち!」

「あー」


 床にぺたんと座り込む真琴は、股の間で犬のぬいぐるみを揺らして里桜を惹き付けようとしていた。

 まだハイハイさえも覚束ない里桜はこてんと横になって真琴を見つめたまま動かない。



「あー」


 真琴が小さな手を伸ばしてぬいぐるみを差し出し振ってみせると、里桜はそれ以上に小さな手を伸ばして身動いた。



「おいでっ」


 おいでと言っておきながら、里桜のかすかな反応に目を輝かせて自ら近付いていく真琴。



「わんわんだよぉー」

「わぁわー」


 手をいっぱいいっぱいに伸ばしてぬいぐるみを掴み起き上がった里桜は、犬の鼻に噛みついた。



「わあっ! だめだよーっ」

「ん゛ー」


 真琴はぬいぐるみに抱きついてきた里桜から必死にぬいぐるみを放させようとしているのだが。


「りおちゃ、はなしてぇっ」

「う゛ーーー」


 里桜は里桜でぬいぐるみを渡すまいと必死でしがみついていた。目にはたくさんの涙を溜めて今にも泣き出してしまいそうになりながら、ますます強く抱きしめる。



「ふえぇ……あぶないよぉ」


 あぶない…そうだ。

 犬の鼻はボタンを縫い付けてあるから飲み込んでしまっては大変だと、真琴はわかっていた。


 だから早く離して欲しいのに、里桜は言うことを聞いてくれないと。

 真琴の目にも涙が溜まり始める。



「だめっなの!」

「っ……」


 真琴が立ち上がって思いっきりぬいぐるみを引っ張れば、里桜の身体は支えを失って床に倒れてしまった。

 真琴もいきおい余って後ろに倒れ、床に頭を強打した。



 子供二人の異常な泣き声が室内に響き渡る。





「なになになにっ」

「……まこ、おいで」


 泣き声を聞いて慌ててきた翔と零二はそれぞれの相手を抱き上げて宥めにかかった。




 わんわんのおはな、だいじょおぶ。

 まこがんばった!


 喋れない里桜はともかく、真琴のこの言葉も二人に理解される事はなかった。


 解らないながらも小さな真琴の頭を撫でる零二に、泣き晴らした目を擦って真琴は大きくうなずく。



「わぁわー」

「わんわんだよぉ」


 真琴は零二の腕から身をのり出して翔の腕に収まる里桜を覗き込み、涙が残るぽってりとした里桜の頬を撫でた。


 里桜の手も真琴へと伸びるが届かない。


「わぁわぁー」

「わぁわぁあっちだよ、これまこだよっ」


 真琴を指差して犬だーときゃっきゃと嬉しそうに笑う里桜も、自分の顔を指差して人間だと焦って訂正する 真琴の姿を見た二人はーーー。




 (れいたん写メ、写メ!! まこちゃん片手で抱けるでしょ!)

 (携帯どこだ!)

 (早くーっ)



≫―――End.



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