かぜっぴき
「けほっ」
「……まこ、薬」
「やだのーっ、けほっ」
真琴が風邪を引いた。
丸みのあるいつもピンク色の頬は一層赤くて、小さな身体は咳の度に跳ね上がる。
ずっと頭を撫でてやってたがこんなに咳の出る状態では眠る事も出来ないらしく、苦しそうで見てられない。
「怖くねえから、尻出せよ」
「いたいのやあー…」
シロップ混じりの薬を飲ませた今、あとは座薬しかなくて。
「咳、苦しいだろ?」
「うん…ぽんぽんつかれたぁ」
ぽんぽん=お腹、らしい。
これだけ身体を跳ねさせて咳をしていれば腹筋も疲れるだろう。
「尻出せ。これしたら治るから」
「……うぅ…っこほ」
頭まで布団を被って拒否を示したかと思えば、中でまた身体が跳ねた。
気休めにもならないだろうけど、とりあえず頭を撫でてやる。
俺の手に甘えるようにぐりぐりと頭が動いて、シーツから目元を出してくれた。
「なおったら、けーき」
「ああ。買ってやる」
「みっつたべたいよー」
「いいよ」
真琴は咳をしながら漸くシーツを捲って身体を見せた。
パジャマも捲れ上がって腹が出てる。丸みのある身体は腹も同様で、丸々としてる。
柔らかそうで撫でくりまわしたくなったけど今は我慢だ。
「下向いて尻上げれるか?」
「ふい…」
頼りない返事だったけどごろんと横に転がって手を着いたから俺は座薬の準備。
処方薬から取り出してパックを開けると煙草よりも細い、先端が尖った小さな蝋燭みたいなものが出てきた。
「……すぐ入りそうだな」
「う? いたいのなぁい?」
座薬を手にベッドサイドから真琴へと向きなおせば、パジャマのゴムを引っ張って膝まで下げた姿で不安げに俺を見上げてた。
「……」
蒙古斑がある。
ほぼ無意識に手を伸ばしていた。
柔らかくてすべすべでぷにぷにで、何時までも触っていたい。
「ふ……こしょばゆーっ、けほっ」
つついたり撫でたりを繰り返してると笑いと咳が混じって真琴が可哀想な事になってきた。
背中を擦りながらなるべく尻を意識させないようにして窄みへと先端を宛がう。
「うえぇ…」
少し力を入れれば簡単に薬を飲み込んでいくけど、これどこまで入れれば いいんだ?
「にゅるにゅるや、ぁー」
つぷんと飲み込まれた所で窄みを数回撫でる。
……さすがに押し出したりはしないだろう。
「終わったぞ。ズボン自分で穿けるか?」
「んん、うん、はくよ」
尻を叩いて終わりを示せば、真琴は芋虫のように身体をくねらせてうつ伏せたままズボンを穿いた。
「もーなおる?」
「ああ。いっぱい寝ればな」
額を濡れタオルで拭って肩まで布団を被せる。
布越しに腹をリズム良く叩いてると目元がとろんとしてきた。
「れちゃんも、ねる……」
小さな呟きは呂律が一層危うくて、間を置いて理解出来た時にキスしてやると安心したように真琴は眠りについた。
明日は朝一で真琴が俺の腹の上で跳び跳ねてる所が見たい。そう思いながら熱っぽい身体を抱き締めて俺も瞼を閉じた。
≫―――END.