エピローグ【1】
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──気付けば朝を迎えていた。
エミリアはネグリジェ姿で自室の化粧台のところに座って、呆然と鏡を見つめていた。
さきほど使用人が着替えに来てくれたのだけど、一人になりたくて部屋から追い出してしまったのだ。
しばらくして、部屋をノックする音が聞こえてくる。
そしてドアの向こうから母親の心配してくる声。
エミリアは答えを返す。
「お願い、もう少しだけ一人で居させて」
頭の中を整理したかった。
気付けば朝、そしてベッドの上でネグリジェ姿。
昨日の夜、たしかに自分は見知らぬ屋敷に居た。
でもあの屋敷で着ていたはずの服は何事もなかったかのように仕舞われていて。
ティムの血が付いていたはずなのに、その痕跡はどこにもなくて。
いったいどんな不思議かは知らないけども。
それともあの夜は本当に夢の中の出来事だったのだろうか。
そう思えて仕方がなかった。
でもエミリアにとって、もうあの夜は夢の出来事なんかじゃなくなっていた。
化粧台の引き出しを開けて。
エミリアはそこから一つの宝石箱を取り出す。
ゆっくりと、その蓋を開けて。
そこに入っていた宝石類を全部台の上に取り外して、深みのある底の方に。
エミリアはコルセットの合間に入れていた銀盤の懐中時計を取り出し、手に取った。
その懐中時計を宝石箱の中へとそっと入れる。
銀盤に刻まれたヴァンキュリア公家の家紋。
その家紋を、エミリアは指先でそっと撫でる。
(これ、本当に黒猫ちゃんの……だよね?)
きっとそうだ。だって黒猫ちゃんはヴァンキュリア公家で飼われているんだもの。迷子になった時の為の首輪代わりなのだろう。
エミリアは内心でそう自分に言い聞かせ、静かに宝石箱の蓋を閉じた。
(次に黒猫ちゃんに会えるまで大切にしておかないとね)
そして誰にも見つからないように引き出しの奥へと仕舞ったのだった。




