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正義の見方【11】


 ◆


 この屋敷全体を異空間へ隔離する必要があった。


 一階の、月明かりで薄暗い部屋の中で。

 クルドはランタンを片手に暖炉の前に立つと、その暖炉の中に真二つに割れたマスケラを放り捨てた。

 人差し指を口元に当て、唱える。

封陣パディフィールド

 暖炉の上に飾られていた置時計が十二時でぴたりと針を止める。

 同時に鳴り響く、耳をつんざくような甲高い音。

 音は遠く小さくなり、やがて消えていった。

 暗い暖炉に火が灯る。

 青白く、それでいて暖かさも感じない命なき炎。

 放り込まれていたマスケラを喰らうようにして、青い炎はマスケラを灰へと変えた。

(これで舞台が一つ消えたか)

 クルドは思い返す。

 マスケラをつけたティムの姿を。

(ティムのマスケラは断った。残るはモーディ・リアンの仮面か)

 だとすれば次に狙われるのはラーグ伯爵。

 ならば道化が向こうのターゲットへ移る前にこの屋敷に閉じ込めてしまえばいい。


 屋敷全体が異空間の中へと入った。


 部屋や廊下のあちこちに明かりが灯っていく。

 確認し、クルドは虚空から短剣を出現させた。

 それを手に掴み、大鎌へと進化させる。

(道化の舞台では必ず一人が死ぬ)

 だったらそのターゲットをこちらに向けさせれば済む話だ。

(問題は、あの道化がこちらの誘導に上手く乗ってくれるかどうかだが……)

 罠を仕掛ければいとも簡単に引っかかる。それが道化だ。手の上で踊ってくれているように見えて、いつの間にかこっちが踊らされていたりする。魔女と違って仕掛けは作れない。作ればそれに自爆させられるだけだ。フィナーレの前ならば遊びで済んだことも、フィナーレとなれば道化は本気で命を取りに来る。

(隙を見せれば殺される、か)


 その時だった。

 どこかで争うような物音が聞こえてきて、クルドはハッとする。

(まさかエミリアが円陣の外に──)

反射的に、クルドは音のする方へと駆け出した。



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