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誰にも言えない【3】


「せめて部屋に飾られた絵画には細工をしておくべきだったな。

 ルーメル・モーディ・リアン。画家の名はモーディ・リアン。ルーメルを頭に付けるのは貴族に絵の提供を許されている専属画家だけだ。

 同じサインのされた絵画が五番街の幽霊屋敷にも飾られていた。

 五番街の幽霊屋敷には俺も用事があってな。大魔女から『傀儡を引き取れ』と呼び出しを受けたんだ。つい最近の話だ。何の偶然かは知らんが、俺はそこで霧の魔女を目撃している。

 五番街の幽霊屋敷といえば持ち主はラーグ伯爵。ラーグ伯爵は絵画コレクションとしても知られている。その伯爵を魅了させたのが、この街の絵画コンクールで満場一致という異例を叩き出したある一人の無名の画家モーディ・リアンだ。

 モーディ・リアンは幼少をスラム街で過ごし、養子として裕福な庶民の家庭に引き取られた青年だ。本来ならそういう経歴だけで貴族から嫌われるというのに、ラーグ伯爵は彼の類稀なるその才能に惚れこんで、彼にルーメルとしての職を与えた。

 だが二年前、ラーグ伯爵はなぜか突然彼を罪人として裁判にかけた。結果は目に見えて明らか。たとえモーディ・リアンに一切の非がなく事実無根の罪であったとしてもスラム街出身という偏見だけで処刑は確定。モーディ・リアンの無念と恨みはそのまま体に残った。それがお前の正体ってわけだ」


 ぱちぱちぱちと。

 道化が心無い拍手を送る。


「すごい。素晴らしいよ、裁判者。名推理だね。これで僕の舞台は滅茶苦茶だ。このままじゃ僕は主に怒られてしまうよ」

「俺はいつでもお前を狩れる。俺と本気で遊びたいならお前の主を舞台に連れて来い」

 道化は拍手を止め、口角を吊り上げ不気味に笑う。

「さすがだね、裁判者。やはり君は僕のライバルだ。それでこそ君だ。やっとワクワクしてきたよ。これなら用意していた裏舞台が無駄にならずに済む」

 クルドは怪訝に顔をしかめた。

「裏舞台だと?」

「たしかに舞台は滅茶苦茶だよ。表舞台・・・はね」

 道化がニヤリと笑った。その瞬間、


 ────!


 張り詰めた空気がクルドを襲った。

 急いで視線を街へと向ける。

 目に見えて変わったことはないが強い殺気をどこからか察する。

 クルドは道化を睨みつけて歯軋りに呻いた。

「てめぇ……! なぜ暗黒魔法が使える!?」

「僕を狩るにはもう少し推理力が必要だ、裁判者。たしかに昼間は僕も君も力はない。

 そう、僕と君・・・はね」

 クルドは舌打ちすると、すぐにその場から立ち上がった。

 その一瞬に見せたクルドの異常。

 いきなり無理をしたことで不完全だった右足に鋭く痛みが走ったのだ。

 なるべく平常を装いながらも、クルドは急いで跳ね扉から家の中へと入り、階下へ下りていった。


 一人、屋根に残された道化。

 くつくつと込み上げてくる笑いに肩を揺らす。ニヤリと笑みを浮かべて、

「やっぱりアイツ、足を怪我していたんだ……」




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